キャリア Vol.596

【藤原和博の新キャリア戦略】AI時代に稼げる人の絶対条件とは?情報“処理力”より“編集力”を磨き上げろ

人工知能が搭載された家電などが一般家庭にも普及してきたり、当たり前のように私たちの生活に関わるようになったAI。以前からささやかれている「AIに仕事を奪われる」という話も現実的になってきた。

ではそんな時代に、今すぐ備えておきたい‟人ならではの能力”とは具体的に何を指すのか?そのヒントをくれるのが、教育改革実践家の藤原和博さんだ。

2018年9月8日に開講された『ソーシャル・イノベーションフォーラ2018』内の、藤原さんの講演『AI時代を生き抜く』の中から紹介しよう。

さまざまな“脳”をつなげる感覚を持とう

藤原 和博

藤原 和博

1955年東京生まれ。教育改革実践家。東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルートフェロー、杉並区立和田中学校校長、奈良市立一条高等学校校長などを歴任

登壇者の藤原和博さんは、自身の講演会のことを“ライブ”と呼んでいる。実際、講演の中では、藤原さんが一方的に話すのではなく、近くの席の人と3~5人で議論を交わすブレスト(ブレーンストーミング)の時間が頻繁に設けられた。

「ブレストのポイントは、正解を出すのではなく、『納得解』を出すことです。納得解とは、『正解が一つではない』ということが多い、今の時代に求められる答えのこと。自分の知識・技術・経験を紡ぎ、かつ自分以外の人のそれらを組み合わせ、たくさんの脳をつなげて導き出した答えのことを指します」

そして、ブレストで納得解を導き出すことの重要性について、藤原さんは次のように説明する。

「皆さんには、議論を交わすことで生まれる“脳をつなげる感覚”を覚えてもらいたいです。なぜなら、ブレストは自分と他の人の知識・技術・経験などを共有しつなげるだけのものではなくなるから。これからの時代は、議論をするチームの中に、AIが入ってくることになります。“脳をつなげる感覚”を自分でコントロールできる人は、AIをコントロールできるでしょうが、そうではない人はAIに操られるようになっています」

藤原さんによると、今後10年以内に「スマートフォンで世界がつながる」という世の中の大きな変化が起きる。その時にも、脳をつなげるスキルが重要になるという。

「実際、世界中の有識者が『人々はスマートフォンで、どんどんつながっていく』と言っています。スマートフォンは、動画をシェアすることが多いので、まるで自分が実際に体験したもののように、脳が疑似的につながっていくのです。この脳がつながる疑似体験に、AIやロボットが加わってくるのです。そうすると、必然と脳がスマホに支配される人も出てくるでしょう」

技術が進む世の中では、“AIにできないこと”が人の価値を高める

AIが発達していくと、「AIが人間の仕事を奪う」という議論がなされることは少なくない。しかし一方で、なくならない仕事も存在すると藤原さんはいう。

藤原 和博

「人間を構成する能力は、主に3つあります。授業中にガムを噛まないだとか、時間を守るなどの基礎的人間力。目の前のことを正しく処理していくために必要な、知識の蓄積による情報処理力。そして正解が一つではないものや、正解がないものに対して納得できる仮説や解を紡ぐ情報編集力です。

基礎的人間力を必要とする仕事は、指先の繊細な感覚が必要だったり、微笑みが素敵だとか言われたり、人間だからこそできること。だから看護や介護などの基礎的人間力が必要な仕事はなくなりにくいでしょう。また正解が一つではないものや、後からその行動に対して責任をとられるような情報編集力の高い仕事は、AIがその役割を担うことはできないと思います」

情報を「処理」する、「編集」する力とはどういうことか。

「情報処理力とは、受験勉強のような、知識データの蓄積とそれを吐き出す力です。これまで、日本では頭がいい人といえば、情報処理力が高い人のことを指していました。しかしその能力は、AIが得意とするところでしょう。

一方で情報編集力は、頭の柔らかさを高め、情報をつないで構築するということ。これは今いる場所を変えてみたり、例えば留学に行ったりして、親の支配下から逃れ、自分の力で世界を再編集した経験が大切になるのです。ビジネスマンであれば、会社以外のコミュニティに足場をつくることでも力を得ることができます」

さらに藤原さんは、この情報編集力をつかっていかにキャリアメイクをしていくべきか、「キャリアの大三角形」という概念で紹介した。

藤原 和博

「まず20代までに、自分でコミュニティをつくるなどして、軸となるものを一つつくりましょう。そして、30代でもう一つの軸をつくる。さらにその後で、そことはまた違った軸へと大きく踏み出していくという流れが理想的です。一つの軸で希少価値の高い人間になることは難しいですが、3つの異なる軸を持っていれば、『100万人に1人の存在』に誰もがなれるはず。そんな‟レアカード”のような存在になってほしいですね」

取材・文/於ありさ


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