キャリア Vol.605

「2033年には日本がスラム化する」空き家だらけのこの国で“幸せに生きる”には?

「新築のマイホームを持つこと」や「都心に住むこと」は、かつてのように必ずしも“豊かな暮らしの象徴”だとは言えなくなってきた。そんな時代に生活基盤をつくっていく20’sは、どのように“豊かなライフスタイル”を実現していけばいいのだろうか? そのヒントをくれたのが、ソーシャル・イノベーションフォーラム2018の講演『自由な人生と不自由な暮らし』だ。

この日登壇したのは、サステナブル(持続可能)な生活を目指し経営コンサルティングを行うエクベリ聡子さん、島に移住後の”心豊かな暮らし方”を研究する石田秀輝さん、リノベーション住宅推進協議会の久田カズオさん、積水ハウスでまちづくり事業を推進する佐藤哲さんだ。

島とのデュアルライフや、まちづくり、住宅づくりなど、“暮らし”を専門にするメンバーたちが語る、“豊かな暮らし”とは?

豊かな暮らし

石田秀輝(合同会社地球村研究室 代表社員/東北大学 名誉教授)
INAX(現LIXIL)取締CTOを経て2004年から東北大学大学院教授,2014年より現職.自然に学ぶものつくり”ネイチャー・テクノロジー“を提唱、沖永良部島に移住後”心豊かな暮らし方”の研究を実践中

エクベリ聡子(株式会社 ワンプラネット・カフェ 代表取締役社長)
サステナブル経営・事業開発・人財育成支援等で数多くの実績があり、SDGsを基礎とした経営コンサルティングの他、廃棄バナナ繊維と和紙技術によるエシカル・バナナペーパー事業に注力

久田カズオ(9株式会社 代表取締役/一般社団法人 リノベーション住宅推進協議会関西部会長)
滋賀県出身、ファッション業界から一転、大工の道へ。「パンク・プリミティブ・ピュア」をコンセプトに15年間で300件以上を手がけ、未完成住宅等のコンセプト・運営を行う。

佐藤哲(積水ハウス株式会社 仙台SHM まちづくり事業課(医療介護福祉事業企画)課長)
宮城県出身。ライフレビューの手法(90歳ヒアリング)を実践し、地域に本来あった暮らしを生かした、あたらしい組み合わせによる場づくりを提案している。
写真は公式Twitterより

「サステナビリティー」「シェアリング」
日本人は“英語の概念”に惑わされすぎている

石田秀輝(以下、石田): 昨今、広まりつつある「持続可能な社会」だとか「サステナビリティー」という言葉って、もともとは暮らし方についてのものなんですよね。それをあらゆる概念に当てはめているのが日本。

エクベリ聡子(以下、エクベリ):そうですね。日本では「サステナビリティー」(持続可能)に広い意味を持ちますし、持続可能なものごと=“昔のもの”、と扱われることも多いですよね。日本の昔からの娯楽、例えばけん玉や相撲、着物などは、現在海外ではブームになっていますが、それを私たちは「昔のもの=目新しくないもの」と決めつけてしまっているんではないかと感じます。

石田: そもそもサステナブルって、言ってしまえば「もったいない」なんですよね。何も目新しいことではないのですが、「サステナビリティー」という概念だけを輸入してしまっているので、“いきなりでてきた新たな概念”に感じるだけで。

エクベリ:そう感じている人も多いのかもしれませんね。

石田:今、シェアとか、コミュニティーという言葉も話題になっていますが、これも結局英語を使うから全く新しいものに聞こえるだけなんだと思います。でも実は、日本には古来から「縁」だとか「結い」という考え方はありました。そう考えると、サステナビリティーとかシェアって何も新しくないので、それらを特別なものと捉えなくてもいいのではないかと思います。

2033年に日本は「スラム化」する!?

エクベリ:石田さんは今、沖永良部島に移住して暮らしているそうですが、家を建てる際にはサステナビリティーを意識していましたか?

石田:きっと住んでいくうちに「住みたい家」は変わっていくだろうと思っていたので、手の加えやすさは意識しましたね。

エクベリ:それって島の皆さんもそうなのでしょうか?

石田:いいえ。特に手の加えやすさを意識している方はいない気がします。島にはすごく古い家がたくさんあって、もう少し手を加えれば良いのにと思うくらいです。極論を言うと、沖永良部島って道で寝てても死なないくらいの気候や安全性があるので、もしかしたら島の人たちは家というものにそこまで固執していないのかもしれません。古くなったら空き家として放置されていますし。

エクベリ:昔から漆塗りの技術などを用いて、「1つの建物で長く住む」という概念はあったように思いますが、今のお話だと「手を加えず空き家になったら放置する」って考えになったんですね。

久田カズオ(以下、久田):空き家というと、今日本には800万個の空き家があるんですよ。一般的には、住宅地の30%以上が空き家になるとスラム化すると言われているのですが、日本では2033年に30%を超えると予想されている。

石田:スラム化する世界は、すぐそこまで来ていると。

久田:そうです。沖永良部島も他人事ではないように思います。空き家が増えているから建物も土地も、どんどん価値が下がっていて、最近は無料で買える空き家まで登場しているんです。ですから、僕個人としてはそういう物件を利用して、海外から来た人や旅行者とシェアする場をつくりたいんですよね。

佐藤哲(以下、佐藤):私は、これからは空間だけではなく、人間関係についてもシェアが進んでいくと思います。家族だからって近くにいたら、何か解決するかといったらそうでもないですからね。私自身も、困ったら支え合えるだろうと考えて実家の近くに住んだのですが、今や母は認知症になって施設に入居していて、父は一人で家にいる。私たちも近くには住んでいるけど、四六時中一緒にいれるわけではないので、例えば私の父が体調を崩した時に誰が病院に連れていくか、依存先や頼れる人を家族以外でも増やしたほうがいいと思っています。そういった、人間関係のシェアはこれからより大事になってくるはずです。

欧米のマネしても暮らしは豊かにならない。
日本の良さを再確認してみて

エクベリ:日本が持っていた文化は、海外の考え方と掛け合わせた時に、新たな視点が生まれるのかなと思っています。「コミュニティー」って島ではもともとある文化ですが、改めて海外の言葉で説明されると、都心の人たちにも影響を与えるような。

石田:日本では、文化は過去、文明は未来という話になりがちで、とにかく欧米から新しいものを取り入れようとします。かといって欧米を否定してやみくもに過去に戻るのではなく、自分のライフスタイルを豊かに変えるための価値観は何か、考えることが必要なのかと思います。

佐藤:きっと海外の事例が良いとか、悪いとかの議論ではないんですよね。何か良いと思
ったら、難しく考えすぎず一度やってみることが必要なのかなと思います。

エクベリ:サステナビリティーには正解がありません。ただ、どうやって暮らすのが居心地が良いのか、一人ひとりが考えて挑戦していいのではと思います。

取材・文/於ありさ


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