小緑 直樹(こみどり なおき) 株式会社アスタンス 代表取締役社長 大学卒業後、ジョブウェブ(新卒採用支援会社)にて事業部長を歴任。第1子の誕生に伴い、家族との時間を最大化することを目指し2012年6月に退社。株式会社アスタンスを設立し、プロジェクト単位で複数組織に属する働き方をスタートする。東証一部上場企業から設立数年のベンチャー企業まで、合計100社以上の、組織課題、採用課題の支援に携わってきた。また、企業、学生向けへの講演や研修など、毎年約80本程登壇している。2017年7月から、9ヶ月かけて妻と6歳と0歳の子供を連れてキャンピングカーで北海道から九州を巡る
0才児を連れてキャンピングカーで日本一周! 人生を“超楽しむ”ために選んだ働き方
キャンピングカーで日本一周!なんて、まるで映画の中の大冒険のようなシーンが浮かびます。子どもの頃に憧れていたなあ、なんて人も多いかもしれません。だけど、毎日の仕事に追われ、そんな生活は夢のまた夢の話。
そんな風に思っていたある日、衝撃的な話を耳にしました。仕事を休んでキャンピングカーで9ヶ月間の家族旅行、それだけでも驚きなのに、なんと0歳と6歳のお子さんもいっしょに連れて、北海道から九州までを旅してきた人物がいるとのこと。いったいなぜそんなことが実現できるのか!?仕事は?家族は?気になることをたっぷり伺ってきました。
独立も旅行も、家族との時間をつくりたかったから
――たくさん聞きたいことはありますが、まず、キャンピングカーで旅に出た目的はなんだったのですか?
小緑直樹(以下、小緑):独立するのも、旅に出たのも、家族との時間を最大化するのが目的です。毎日のようにできることが増えてく乳児期、幼少期。そんな子供の成長を間近で見たいという欲求が強くて、長男が生まれたタイミングで独立することを決めました。そして、6年間18時に家に帰って、子どもをお風呂に入れる生活を続けてきました。ただ、子供が小さい期間限定のこの時期、もっと子どもとべったりすごす期間があってもいいかもしれない思いました。そんな時、キャンピングカー旅を思いつき、やってみた、という感じです。
――お子さんが生まれてすぐのタイミングで、会社を独立することに不安はなかったですか?
小緑:多くの人から、「このタイミングで!?」ってすごく反対もされました。でも、「なんとかなるでしょ!」っていう根拠のない自信はあったし、独立することに対するわくわくのほうが大きかったです。
――年間の売上目標をたった4ヶ月で達成して、旅行に行く時間をつくったそうですね。
小緑:全ての仕事をプロジェクト単位で行っているため、ある程度、先読みして仕事ができます。そして、旅に行く直前ですべてのプロジェクトが完了するように、半年以上前からからクライアントさん、パートナーさんと調整しました。また、独立してから6年間の実績も溜まってきていたタイミングだったので、短期で年間の目標を達成することができました。
――旅行中は仕事はしてなかったんですか?例えば講演をやったりとかは?
小緑:旅行中に講演はやっていないですね。旅に出たら仕事している暇がないくらい忙しいんです(笑)日々の生活を送ることで精一杯でバタバタしていました。例えば、温泉施設で、0歳児をお風呂に入れるだけでも、夫婦で交代で入って、片方はお風呂、片方は0歳児を受け取り、なんてやってるとあっという間に2,3時間経ってます。
0才児を連れてキャンピングカーで日本一周
――キャンピングカーで家族旅行、お家をどうされたのかなという点がすごく気になります。もしかして、家ごとキャンピングカーに乗り換えたのですか?
小緑:実は僕はキャンピングカーを家にしちゃえばいいと思っていたんですけどね(笑)、さすがに無理でした。というのも、0歳と6歳の子どもがいて、小学校や保育園に入るための役所の手続きをしなければいけないのに、住所不定になってしまう。まったくもって現実的じゃないと、妻に反対されました(笑)
――さすがにそうですよね…
小緑:だから、9ヶ月丸々旅をしていたというよりは、旅と家を行ったり来たりしていたんですよね。息子の保育園も2ヶ月に1回登園すれば、保育園を辞めなくても済みましたし、卒園式も出られました。息子も、久しぶりの登園のときは「わあー!久しぶりだねー!」とみんなに騒がれるのはまんざらじゃない様子でしたよ(笑)
――それでも、旅の提案をOKできる奥様はすごいなって思います。
小緑:楽しむのが上手で、穏やかでユーモアもある素敵な人です。仕事もしていますが、旅行中は産休、育休期間でした。産後半年でのキャンピングカーで旅なので、周囲からは賛否両論色々ありました。0歳児を連れての旅なので、妻はストレスや過労もあったと思います。それでもまた行きたい!と言ってくれています。
――ご夫婦揃って楽しむ気持ちがあるのがとても素敵ですね。旅の一番の思い出は何でしょう?
小緑:旅行で一番良い経験になったのはやはり出会いですね。景色や食べ物もたくさんあります。でも、真っ先に頭に浮かぶ思い出は、「人」です。あそこに泊まった時に出会ったあの人、息子の絵をかいてくれたあの人、一緒に遊んだあの人、とか。もしまた全国を旅するとしたら、「あのときのあの人に会いに行こう!」という目的になるんじゃないかな。何年経ってもまた、あのときの話ができるっていう家族との共通言語を得られたのが一番良かったと思います。
――6歳の息子さんにとってもすごく貴重な経験になりましたね。
小緑:息子の普通の生活の中だと、保育園の保育士さん、ご近所さん、親、といった限られた人間関係の中で生きています。でも世の中には普通には出会えないような面白い人がたくさんいて、そんな人たちに出会って、6歳なりに何か感じることはあったのではないかと思います。
息子が、旅中に出会った大人と、1時間くらいずっと話をしている、そんな場面が何回かありました。大人でも初対面の人とそんなに話せる人多くありません。そんな息子の姿をみて、成長を感じたし、旅に出て良かったなぁと思いましたね。
6歳のうちに色んな人に出会うと、色んな価値観を得られるし、決められたレールにいなくてもいいんだ!って思えるかもしれません。それを提供したかったという思いもありました。
仕事も家族も、自分を楽しませてくれる存在
――小緑さんにとって、働くことはどんなことでしょうか?
小緑:人生を楽しむたくさんのモノのうちのひとつですね。良い人に恵まれて、やりたいようにできていて、今属しているコミュニティもみんな良い人ばっかりです。仕事も楽しむために、自ら今の環境を選んだのだと思っています。プライベートと仕事の境目もあんまりないですね。最初に入った会社も、間違いなく楽しいなって思ったから入りました。実際に、自分で意思決定権を持って働くことができて楽しかったです。もちろん。今も昔も楽しいことばかりじゃなく、つらくてしんどい仕事もたくさんありますが…(笑)
――では家族とはどんな存在ですか?
小緑:僕自身は人生をおもいっきり楽しみたい!って思っているんです。だから、超利己的かもしれませんが、僕にとって家族とは、人生の楽しみのひとつです。楽しみたいっていう思いを一緒に共有してくれ、自分を楽しませてくれる存在です。
――息子さんにはどんな大人になってほしいなどはありますか?
小緑:まずは、息子自身のモノサシで「幸せ」な生き方をしてもらいたいなと思います。その延長にあるのが、「とことん好きなことを熱中してやる」ことだと思います。多様な価値観が認められる時代であり、ネットで一芸に秀でた人は埋もれずに発見されやすく、クラファンなどで個人の熱狂が応援される時代です。つまり、やりたいことをやらなきゃ損だと思います。だからこそ、熱中できる何かをみつけて、すきなだけ取り組んで楽しい人生をすごしてもらいたいなと思います。
そのためには幼少期はとにかく種植えだなと思っていて、これが好きだなって思えるような好奇心の種をたくさん蒔いて、何かどれか一つでも見つけてくれたらいいなって。
――好奇心の種はどうやって蒔いているんですか?
小緑:小さなことでもいっしょに楽しむようにしていますね。カブトムシに興味を持ったら、カブトムシの本を見に行ったり、調べたり飼ってみたり。その他にも、宇宙、動物、西郷隆盛、食べ物、発酵と腐敗、気になったお店、ボードゲーム、キン肉マン(キンケシ集め)などなど、色んなことを一緒に探求してます。旅行も探求活動の一つでもありました。
目標はお金ではなく、時間をつくること
――お仕事に対して、今後の目標は何かありますか?
小緑:実働を週4日にして、3日は今までの組織&採用事業、1日は何か新しいことにチャレンジする時間、3日の休みは、家族の時間とインプットの時間にしたいと思っています。色んな地域を見て、面白い人に出会った今だからこそ、いろいろな発想があり、チャレンジしたい気持ちが強くあります。安定に走らずにいたいので、これからも現状を変えていきたいなとは思っています。
――ご自身の会社を大きくしていこうと考えていますか?
小緑:いえ、僕が独立した目標はお金ではなくて、時間なんですよね。だから、18時に帰れるくらいのプロジェクトしか抱えないですし、そこまでして利益をあげようとは思わないので、組織の拡大もまったく考えていません。
――小緑さんのように、チャレンジをしたいと考えている人たちに何かメッセージはありますか?
小緑:人それぞれ、日々の生活があります。「今すぐ何かをやったらいい」といったことは簡単には言えません。何かを一歩踏み出す時に大切なのは、起業する、移住する、旅にでる、といった、外的な変化ではなく、内的な変化。つまり、自分自身の内なる声に耳を傾けることだと思います。
内なる声がそれほど高まっていないとき、外面だけ変化させようと行動しても、困難に対して、踏ん張りがきかなかったりします。それは、周りの情報や流行に流されていたりするだけかもしれません。内なる声が沸点を超えているようであれば、機が熟してるタイミング、すぐにやったらいいと思います。
僕も、起業も、キャンピングカー旅もワクワクという内なる声が沸点を超えていたからこそ、思い切った決断と行動ができたと思っていますし、多少の困難があっても、やり通せたんだと思います。
取材を終えて
キャンピングカーでの旅中のエピソードやご自身の仕事について、楽しそうにお話してくださった小緑さん。聞いているだけで私も楽しくなっていました。小緑さんの行動の根底には、人生を楽しみたい!という想いがあり、その熱量が伝わってきます。
仕事も家族も、人生を楽しむためにあるもの。忘れかけていた“楽しむ”という心をいつだって持ち続けたい!そう再確認した今回の取材でした。
written by Rina Kawanishi
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