
「働き方改革! 働き方を見直そう!」と世間はうるさいけれど、改革しなきゃいけないのは長時間労働だけ? グローバルスタンダードで見たときに、実は日本の働き方っていろいろおかしいことがあるのでは? そんな疑問を抱いている20’sは多いはず。
どうしてもガラパゴス化しがちな「日本の働き方」をぶった切ってもらうために、IT企業役員と芸人という2つの顔を持つ厚切りジェイソンさんに話を聞いてみた。日本人の「Why!?」な働き方を、改めて見直してみよう!
厚切りジェイソン(あつぎりジェイソン)
1986年アメリカ ミシガン州生まれ。イリノイ大学アーバナシャンペーン校卒業。 11年に来日し、IT企業の役員として働きながら、14年、お笑い芸人としてもデビュー。15・16年、R-1ぐらんぷり決勝進出。お笑いにとどまらず、情報番組や講演など様々な方面で活躍中。何気なく使っている日本語のおかしなところを一刀両断する『かなり気になる日本語』が1月6日に発売
うーん。僕が担当しているのはアメリカ法人だから、一緒に働いている人ほとんどがアメリカ人。だからあくまで日本の一部の人たちを見て思う事という話になるんだけど。まず、すごく不思議なのが、どうして多くの人が“言われた通りのこと”しかやらないの?
もうそんなの時間の無駄。何で使わないものを作るんですか? おかしいと思ったら、上司に言えばいいじゃない?
仕事で大事なのは責任の持ち方じゃないですか。アメリカでは課題を与えられたら、それをどう解決するかは自分次第。自分でやり方を調べて、自分で責任を持って解決しなくちゃいけません。
部下は決して「上司の手先」じゃないんです。もしも自分が「上司の手先」みたいな働き方になっているなと思ったら、まずはそこから変えなきゃいけないんじゃないですか?
ただ断るだけじゃダメ。同じ時間を使って、もっと別のことをやった方が有益であることを、ちゃんと自分の言葉でプレゼンしないと。
会社というのは、よりメリットの大きい方が優先されるんです。ただ「やりたくないです」なんて言っても嫌われるだけ。なぜできないのか。その代わりに何をするのか。上司の指示を引き受けたケースと、そうでないケース。どちらの方がメリットが大きいか、ちゃんと説明できたら怒られることなんてないですよ。
そうやって話し合ってみれば、「やる必要はない」と思っていた業務内容にも、実は意味があることが分かることもありますからね。
何でもかんでも「今までのやり方に従う」なんていうのは、もう古い。パソコンのない時代のマニュアルが、今の時代に通用するわけないんですから。働き方を常に最新版にアップデートする意志を自分自身が持っておくことが大事ですよ!
いいと思いますよ。上司の誘いを断れない風習の方がおかしい。遅くまで働くことで仕事をしたつもりになっている人は良くないと思います。
そこに関しては、日本の大学教育に問題があるように感じます。
だって、日本で大学を卒業して会社に入っても、何もできないでしょう? 入社してから研修で仕事のやり方を教えてもらえるのが当たり前だと思っているので。
そんなのアメリカじゃ絶対に考えられない! そもそもアメリカでは専門の学士をとっていないと、その分野の仕事に就職することすらできません。でも日本はそうじゃないでしょ? 会社に入ったらイチから教えてもらえると思っているから、大学でちゃんと学ぼうとしない。どれだけ大学で頑張って勉強しても、入社したら皆スタートラインは一緒。給料だって同じですしね。それでは何のために頑張るのか意味が分からないですよね。
もっと前です! 僕は中学のタイミングでコンピューターサイエンスの学士を取得すると決めていましたし、高校の段階ですでに大学で取れる単位を取っていました。だから、大学に入ったらもう専門性のある授業しか受けないし、会社に入ったら新卒でも即戦力。初日から開発に関わっていました。それが今から10年以上前の話ですからね。
日本の大学と海外の大学では専門性のレベルが全然違う。今のままの日本の意識では、専門性という観点ではとても海外と勝負できません。だから今後は優秀な人材ほど海外に流出し、国内に残らなくなる。
まずは会社に入ってから教えてもらうという甘い考えは捨てた方がいい。一体自分は何の分野のプロフェッショナルになるのか。自分の専門性についてはもっと真剣に突きつめていかないとマズいですよ!
何でそんなことするの? いいよ、そんなの、時間の無駄だよ!
用もないのにやってくるなんて、相手の時間を奪っているだけ。僕はそっちの方がよっぽど失礼に感じますけどね。
もちろんアメリカでも世間話はしますよ。でも、世間話が目的になるのは不思議。「で? あなたは何しに来たの?」ってなっちゃう。何か有益な情報を持ってくるとか、他に要件がないと。あいさつのためだけのアポイントはお互いにとって時間の無駄です。
そういう肯定的なニュアンスの言葉を言ったら、まだ可能性があるんだって向こうが期待するでしょう!
お互いの時間を無駄にする方がよっぽど失礼ですよ! ビジネスにおいて大切なのは、お互いの時間を尊重すること。もちろん日本には日本の文化があり、それも美徳ではありますが、相手の時間を不当に奪っている慣習に関してはどんどん変わっていった方がいいと思います。
僕は決して日本の考えを否定しているわけじゃないんです。日本のいいところはたくさんあるし、どんなに国際化が進んでも、受け継がれていくべき価値観はあると思います。ただ、日本は風習的に、同じ会社で働く人たちを「家族」だと考えるでしょう。でも、アメリカでは仕事上での関係。それ以上でもそれ以下でもありません。だから何よりも効率を重視する。
投資という点で考えると、効率重視で利益の最大化を目指す海外の企業と、コミュニケーションという曖昧さの占めるウェイトが大きく、将来予測がしづらい日本の企業。どちらの方が投資メリットが高いかと言うと、答えは一目瞭然。そして、投資の集まらない企業はいずれ市場から淘汰されます。そういう危機感はもっと抱いておいた方がいいかもしれないですね。
取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴
厚切りジェイソンが「問題な日本語」を一刀両断!
『かなり気になる日本語』 (SB新書)
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