キャリア Vol.676

「会社員時代の何倍も毎日が楽しい。でも、私の人生が正解とは思わない」パラレルワーカー・横塚まよが“副業を勧めない”理由

叶えたい夢や、チャレンジしてみたい仕事はあるけど、なかなか自信は持てないし、タイミングだって分からない。そこで、20代のトップランナーたちが、どうやって“始めの一歩”を踏み出したのかを聞いてみた。今の活躍に到るまで、どんな不安や葛藤があったのか、そして踏み出した先には何があるのか−−。同年代の言葉に耳を傾けてみよう

2018年は、「副業元年」と言われていた。さまざまなメディアで副業や兼業の方法が紹介され、効率良く、楽しく働く人に注目が集まった。自身が代表を務める株式会社Pisces株式会社Spartyで働く27歳の横塚まよさんも、その一人だ。

入社2年目で副業を始め、26歳で起業。持病のバセドウ病が悪化した時期もあった。「私の生き方は正解ではないから、副業も兼業も人には勧められない」と話す横塚さんに、その言葉の真意を聞いた。

横塚まよさん
株式会社Pisces 代表 横塚まよさん(27歳)
2014年、株式会社ウィルゲートに新卒入社。16年に株式会社Candeeと合弁で株式会社COMPLExxxを設立し、17年にウィルゲートを退社。18年に株式会社Piscesを立ち上げた。さらに株式会社Spartyの一員としてマーケティングやイベント運営などにも携わっている。 Twitter:@ykzkmy03

「ゲームに課金してる分、副業で稼いだら?」その一言が転機になった

――大学生の頃、IT企業のインターンシップに参加していたそうですね。学生時代から「働くこと」に対する意識が高かったんですか?

いえ、インターンシップに行ったのは、勉強が嫌いだったからなんです。アニメとゲーム漬けの毎日で、どうしたら勉強せずに生きていけるかを日々考えていました。それで思いついたのが、インターンシップ。参加して、ちゃんと実績や意志を伝えられれば就職できるんじゃないか、という考えもあり、2社のインターンに参加しました。

ウィルゲートというIT企業のインターンシップに参加し、「よっしゃー!これで採用試験を受けなくても就職できる!」って内心思ってました。でも実際は、就職内定するまで1年間かかりましたね、世の中甘くない(笑)

――え、でもさすがにITには興味ありましたよね?

パソコンは大好きでした。パソコンの前なら何時間でも座っていられたんです。IT企業を選んだ理由はそれだけ。そして、パソコンが使えて、勉強が不要で、手に職がつく仕事がしたいと思って、デザイン職を希望しました。すごくいい会社で、すぐに希望を叶えてくれたんですよ。でも、インターン時代含め2年間やったのですが、私にはその仕事が全然合っていなかったんです。

デザイン能力があまりにも低すぎて、バナーを作る以上の仕事は難しくてできませんでした。今の私が当時の自分に会えるなら「辞めてもいいんだよ」って言ってあげたいですね。憧れの仕事に就いたはずなのに苦しくて、毎日トイレで泣いていた自分に、「会社を辞めても生きていけるんだよ」って。

――毎日トイレで……。そこからどうやって抜け出したんですか?

見かねた社長が「広報の仕事をしてみない?」って提案してくれたんです。正直そんなに気乗りしなかったんですけど、社長が言うなら何かあるのかもしれないと思い、部署を異動しました。そうしたら気分が明るくなって、性格まで変わったんです。仕事が楽しくなりました。

横塚まよさん

ただ、広報の仕事は楽しい反面、会社でも初めて立ち上げたポジションだったこともあり、分からないことも多くて。そのストレスをスマホゲームで発散していました。ゲームに課金しまくって、お金がなくなりました(笑)。それを聞いた友達が「だったら好きなゲームをしながら課金した分を稼いだら?」と言ってくれて、友達の会社でゲーム実況の仕事を始めたんです。

――それが最初の副業だったんですね。会社の同僚や先輩、上司はすんなり受け入れてくれましたか?

副業をしている人はまだ少なかったので、「何言ってんだ?」っていう顔をしていた人もいました。でも当時は副業NGという規定もなかったので、最終的には「やってみたら」と背中を押してくれたんです。

――自由な社風だったんですね。

そうなんです。ゲーム実況からタレント事業へと広がり、軌道に乗ってきたときも、独立を応援してくれました。周囲の後押しもあり、私は一緒に実況をしていた女の子たちとタレント事業を軸にした株式会社COMPLExxxを立ち上げたんです。そして半年後にウィルゲートを退職。

COMPLExxxはもうたたんでしまいましたが、現在はパーソナライズシャンプーを手掛ける株式会社Spartyの社員としてマーケティングや、広報、イベント運営を担当したり、自社の株式会社Piscesでイベントの装飾や、インフルエンサーのキャスティングを請け負ったりしています。私にとってPIscesは、楽しく仕事をするための「箱」のような存在。大学を卒業して5年、いろんなことがありましたが、ようやくSpartyとPiscesの両立で、「好きなときに好きなだけ好きな仕事をできる環境」にたどり着けました。

起業のリスクは「借金」と「人に迷惑を掛ける」の2つ

――周囲の人の後押しがあっても、会社を立ち上げるって難しそうに感じます。書類の準備や手続きはどうやって進めたんですか?

専門家に依頼すれば、誰でも会社を設立できますよ。私はビジネス書を1冊読むこともできないくらい勉強が苦手だったので、COMPLExxxを一緒に立ち上げてくれた株式会社Candeeさんに手続きを依頼しました。

過去には騙されたこともありましたけど、そういう経験を積み重ねてきたからこそ、人を巻き込んで少しずつ大きな事業に挑戦するスキルが身に付いたと思うようにしています。今は、自分が組織に属するよりも、自分が専門職に就くよりも、そういう人たちを集めることに長けているという実感を持てるようになりました。憧れのデザイナーにはなれませんでしたが、私は私なりの方法で手に職をつけることができたかな。

――最初から成功する自信はあったんですか?

全くありませんでしたよ。今でも成功したなんて一ミリも思えません。でも、もし事業に失敗したとしても自分が背負うのは「借金」と「人に迷惑をかけてしまう」という2つだけですよね。誰にも迷惑をかけずに生きていける人はいないし、迷惑かけた分感謝を忘れずに生きて、行動で返していけばいい。借金はたとえ1億円あったとしても生きていれば返せると思うんです。

横塚まよさん

実際に、ウィルゲートの社長は22歳のとき、1億円の借金をして倒産の危機にあった会社を立て直したんですよ。調べてみたらそういう起業家が大勢いたので、何とかなると思いました。

それに全然関係ないんですけど、私、昔からクレジットカードの返済に追われまくっていて……。ある意味、借金に慣れていたんです(笑)

自分の人生が正しいなんて1ミリも思わない
理想よりも「楽しい」を追いかけて

――安定した会社員生活から抜け出し、起業をして「よかった」と思いますか?

思います。今思うと、私、そもそも組織に所属すること自体合っていなかったんだと思います。会社って、入社して最初は全員同じ速度で歩き始めるじゃないですか。私はそれが苦手だったんですよ。苦手というか一緒に行動ができないんです、昔から……。学校はテストも課題も自己責任だけど、会社はチームで仕事を進めていくから、自分一人で勝手に動かすわけにはいきませんよね。皆で足並みをそろえて仕事をして、疲れたら飲み会をして、皆で息抜きをして……。

そういうことができないから、無理をしていたんだと思います。どこかで「このままここにいていいのかな?」と不安な気持ちにさいなまれるようになりました。だから起業したら、逆に不安がなくなったんです。

横塚まよさん

――横塚さんは副業を始めたことで道が拓けたわけですが、もし会社に馴染めない人が身近にいたら、副業や兼業を勧めますか?

いや、私の生き方は決して正解ではないので、勧めないですね。私にとってはよかったけど、他の人にとっては違うかもしれない。

それに私、起業して持病のバセドウ病が悪化してしまったんですよ。症状には個人差があるんですが、私の場合は体が疲れやすく、起きていられる時間が人より短くなりました。今では日常生活に問題はないですが、以前は夕方になると耐え難いほどの眠気に襲われていたんです。

でもそのとき、自分の時間は限られているという事実に気付きました。人よりも稼働できる時間が少ないからこそ、自分が楽しいと思えることに全力で取り組んだ方が効率よく仕事もできるし、いいんだと。だから、もし自分のキャリアに迷っている人がいたら、副業や兼業よりも、まずはたくさん行動して、自分が楽しみながら働ける環境や仕事内容を見つけることから始めてみたらどうかな?と声を掛けたいですね。

――ということは、無理に副業を始めたり会社を辞めたりする必要はないのでしょうか?

組織に適応できるなら、会社員としてそのまま働いた方がいいかもしれません。それは本当にすごいことだから。副業はしてもしなくてもいいし、結婚もどっちでもいい。仕事を辞めてバックパッカーになってもいいし、無人島に行って暮らしてもいい。なんだっていいと思うんです。私は組織が苦手だったから副業を始めて独立しただけで、この人生が正しいなんて1ミリも思っていません。

こういった記事を読んで「私も副業をしなきゃいけない」と理想を追いかけたりしてほしいわけではないんです。目標を掲げるのもいいけど、私がデザイナーにならなきゃいけないと思って苦しんだように、間違った道に進んでしまうこともあるし、目標に向かって走り続けて息切れしてしまう人もいるから。

必死になって理想を追いかけるのではなく、「楽しい」と思えることに素直になってほしい。楽しければ自然に物事はついてくるし、結果も出せるはず。起業してつらいこともありましたが、私は今、会社員時代の何倍も毎日が楽しいです。

取材・文/華井由利奈 編集/天野夏海 撮影/大室倫子(編集部) 

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