キャリア Vol.705

「特別に好きなことはなかった」のに人気YouTuberに! 無駄づくり・藤原麻里菜に学ぶ“自分だけの何か”の見つけ方

20’s type1周年記念特集
好きなことで生きていこう。最近よく聞くフレーズだけれど、「そんなこと言われたって、仕事にできるほど好きなものなんてないよ……」と焦る20代は多いのでは? そこで、20’s type1周年を記念して、各界の識者に聞いてみた。「20代で“好きなこと”って必要ですか?」

好きなことで生きていく」--その言葉を聞いて、真っ先に「YouTuber」が思い浮かぶ人も多いのでは?

しかし現在YouTuberとして人気を集める25歳の藤原麻里菜さんは、「私は特別好きなものはないんです」と話す

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属 YouTuber 藤原麻里菜さん
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属 YouTuber 藤原麻里菜さん
1993年生まれ、横浜市出身。2013年から、YouTubeチャンネル『無駄づくり』を開始し、現在に至るまで200個以上の無駄なものをつくり続ける。現在、チャンネル登録者数は7万人を超え、総再生回数は1200万回以上。16年、Google社が主催している「YouTube Next Up」に入賞。18年に台湾で開催した個展には25000人以上が来場し、国内外でファンを増やし続けている。著書に「無駄なことを続けるために -ほどほどに暮らせる稼ぎ方-」(ヨシモトブックス)

藤原さんは、頭の中に浮かんだ不必要な物を作り上げる「無駄づくり」を主な活動としている。「歩くたびおっぱいが大きくなるマシーン」、「ラブレターが大量にもらえる下駄箱」など、彼女が作る作品は、「実際には使えないけど、どれもクスっと笑える」ものばかり。

YouTube上での動画総再生回数は1200万回以上を突破し、2016年には、Google社が主催する「YouTube Next Up」に入賞。昨年に台湾で開いた個展には2万5000人以上が訪れた。

「好きなことで生きている」人が人気を博すイメージの強いYouTuberだが、彼女はなぜ「特別好きなものはない」のにこれだけの活躍ができているのか?

藤原さんが「無駄づくり」をスケールさせていくまでを聞くと、20代がどうすれば「自分だけの何か」を見つけられるようになるのか、そのヒントが分かってきた

お金のために始めた「無駄づくり」が、続けるうちに「好きなこと」になった

私自身、実は好きなことはそんなにない方。世の中にはものすごく何かに愛を持っている方々がいて、ライターの知人の中にも「ヘアドライヤーが大好きで、メーカーの人以上に詳しい人」とか「県境に詳しくて、休日になると必ずどこかの県境に行ってる人」みたいな方がいます。それに対して私の「無駄づくり」は、偏愛って感じではないんです。そういう人の「好き」とは違うんですよね。

そもそも無駄づくりって、最初はお金のために始めたんですよ。私はもともとお笑い芸人になりたくてNSC(吉本総合芸能学院)に入ったんですけど、そのときも「お笑いを愛してやまない」っていうよりは、ただちやほやされたいとか、面白いと思われたいから志望したんです。いろいろ試行錯誤はしてみたつもりでしたが、売れてる芸人の先輩方が持つような「これが俺の笑いだ!」という確固たる信念もない私が、売れるはずがありませんよね(笑)。

これじゃ生活もままならないぞ……と思った時に目をつけたのがYouTubeでした。YouTuberって月に100万円とか稼いでるって聞いたので、これだ! と。もともと何かを作るのは得意な方だったので、自分の頭の中にある「どうでも良い願望」を具現化したら面白いんじゃないか?と思って、「無駄づくり」のチャンネルをオープンしたんです。

藤原麻里菜

とはいえ、YouTubeは始めてすぐに稼げるものではないので、動画を投稿し始めたばかりの頃はほとんど収入はありませんでした。でもいくつか動画をアップしているうちに、気付いたことがあって。それは「他人からの評価」をもとに動画をブラッシュアップさせていくと、再生回数が増えていくということ。

自分だけが満足するものを作るんじゃなくて、動画を観てくれた人の反応を参考にしながら、動画を作っていくようにしたんです。するとだんだん「面白い」といってもらえる声が増えていって。試行錯誤していくうちに、だんだんお金も稼げるようになって、いつのまにか私は『無駄づくりの人』としてアイデンティティーを確立していました。

「これで生きていくぞ」って、一つに絞る必要なんてない

私はYouTuberとしての活動に注目していただいていることもあって、「大好きな『無駄づくり』で生きている人」として取り上げられることも多い。でもYouTubeの他にもライターなどの仕事もしていますし、私自身、別に「無駄づくりYouTuberだけで生きていくぞ!」とは思っていません

これは日本人の価値観の問題なんだと思いますけど、「私はこれが好きなんだ」って、一本筋が通っているのが美学だという風潮がありますよね。

「これだけを一生やっていきたい」と思えるくらい好きなことがあって、それに向かって努力している方はすごく尊敬します。でも、「これで生きていくぞ」っていうものを一つに絞る必要なんてないんじゃないかなあって思うこともあって。

藤原麻里菜

好きなことで生きていきたいと思って「これだ!」というものに盲目的に突き進んだ結果、全く稼げずに生活できない……なんてことになったら、精神的な負担も大きくなってくると思うんです。

「好きなことで生きていく」ということは、自分の収入のバランスや、自分がやりたいこと、好きなこと、得手不得手などを総合的に見る力が必要なのかなと思います。

「評価される場所」に立てば、自分の好きなことが見えてくる

なんとなく始めた「無駄づくり」は結果的に好きなことになりましたけど、最初に話した通り、私には「死ぬほど好き」なものはないんです。同じように、20代で「これが大好きだ」と胸を張って言える人なんて、ほとんどいないと思うんですよ。だからそんなに自分を追い込んでまで見つけようとせず、これからの人生を楽しくするための材料を探すくらいの気持ちでいいんじゃないでしょうか。楽しんでやっていれば、それが自然と好きなことになっていきますしね。

そのときに「どうやって探せばいいのか分からない」っていう人は、とりあえず今の仕事の場でも何でもいいから「評価される場所に立つ」といいんじゃないかなと思います。評価を受けたことで自分の行動を見直すようになると、いろいろなことを考えるようになって、自分のことをよく知ることができると思います。

とはいえ、評価されるのは嫌だって人もいるはず。私も、すごくプライドが高くて、誰かに評価を受けるなんてとんでもないと思ってたんです。例えば「自分の描いた絵はすごい」と私自身は思っていても、人に見せることで「下手くそ」であることが分かってしまったりするじゃないですか。それが嫌で、描いても誰にも見られないようにしているくらいでした。

でも、「とにかく作って発信しなきゃ」ってYouTubeを始めて、強制的に評価される場に身を置いたことで、だんだんと「例え悪い意見でもいいから、今の自分を評価されたい」って思えるようになったんです。他人の声に耳を傾けて、それに従っていけば、動画を見てくれる人も増えていくと分かりましたから。ただ、「誰かに評価されたい」「褒められたい」にモチベーションが偏ってしまうと、変に型にはまろうとして自分が楽しくなくなってしまう。その塩梅には注意が必要ですけどね。

藤原麻里菜
「『無駄なことを続けるために』(ヨシモトブックス)も好評発売中です……!買ってくれ……!」(藤原さん)

そうやって受けた評価を元に自分の行動を見直すと同時に、「自分が評価してもらえそうな場所を選ぶ」ようにすることも重要なんじゃないかなって思います。例えば、私は芸人という舞台の上だと全然ダメでしたが、YouTube上では評価してもらえました。作った動画がYouTubeでウケなくても、他のメディアに載せればすごく面白いといってもらえることもあります。どこで何が評価されるかって、分からないものですよね。

それに、今は価値観が多様化したぶん、人の好みはさまざまだし、働く場所だって一つとは限らなくなってきた。ネットにもどんどん新しいプラットフォームが生み出されているし、評価される場所って、選び放題だと思うんですよ。

一つのことに執着しすぎず、自分が評価される場所を探していく。そうすれば、何となくでも「自分にはこれが合ってるのかも」というものが見えてきて、楽しく働き続けられるようになるんじゃないかな。それがいつのまにか、自分のアイデンティティーになっていくものなんだと思います。

>>特集【20代で“好きなこと”って必要ですか?】一覧はこちら

取材・文/安藤記子 撮影/野村雄治

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