キャリア Vol.742

M-1芸人からゴミ清掃員に。マシンガンズ滝沢に学ぶ「どんな仕事でも楽しんじゃう」ための心掛け

仕事の数は星の数ほどあるけれど、そんな中でも「なぜその仕事を!?」つい、そう聞きたくなってしまうような職業を選んだ人たちに20’s type編集部が深掘りインタビュー。知られざる仕事の裏側、実は深〜いやりがいを聞いたら、“仕事選び”の本質と、日々の仕事を楽しむ秘訣が見えてきた――。

かつて、M-1グランプリ準決勝にも進出したお笑い芸人。だけど、「今は本業がゴミ清掃員で、芸人は副業になってます」と笑いながら語る、マシンガンズの滝沢秀一さん。

たとえ人から「落ちぶれた」と言われても、「この仕事を辞める気はない」と堂々と語る。この前向きさ、どこから湧いてくるのだろう? 本人に聞いてみた。

マシンガンズ滝沢さん
お笑い芸人・ゴミ清掃員 マシンガンズ 滝沢秀一さん
1976年生まれ。98年にお笑いコンビ『マシンガンズ』を結成。芸人として活動するかたわら、2012年から清掃員としてゴミ収集会社で働いている。18年に自著『このゴミは収集できません』(白夜書房)を発刊。19年5月、妻と一緒にコミック単行本『ゴミ清掃員の日常』(講談社)を発刊。ダ・ヴィンチによる「次にくるマンガ大賞」にノミネートされた
◆Twitter:@takizawa0914
ゴミ清掃員の仕事内容

朝は5時起きで、ゴミ清掃車に乗り、担当地域を回ってゴミを回収。作業は午後に終了。曜日によって、可燃や不燃など、収集するゴミの内容は変化するが、ひたすらゴミを運んで収集する作業が基本。また、ペットボトル工場でひたすらラベルはがしとキャップ外しをする日も。

「ゴミ清掃員は、年齢も国籍も問わないため、アメリカ、中国、ネパール、セネガルなど、いろんな国の人と一緒に働くことも多いです。夜にお酒を飲まず、朝ご飯をちゃんと食べてから仕事で体を動かすので、ぽっこりお腹も引っ込んで健康的になりました!」(滝沢さん)

ゴミ清掃員の収入

収入は、家族4人でなんとか暮らせる程度。給料は日払いでもらっている。

お笑いライブ出演料は一本たったの315円! 
生活苦の中、妻の出産費用が必要になった

滝沢さんがゴミ清掃員となったきっかけは、妻の妊娠。出産のためにまとまったお金が必要になったのだという。かつては、お笑い番組の『爆笑レッドカーペット』などにも出演し、お笑い一本で生活をしていたが、次第に仕事がなくなり、日々の生活が苦しくなっていた時期だった。

「貯金もなければ、地方営業の仕事もなく、お笑いライブに出演してもギャラは1000円ぽっち。事務所と相方とで取り分を分けて、そこから税金を引かれたら、僕に入るお金はわずか315円です。真綿で首を絞められるように追い詰められていく中で、妻が『5カ月後に子どもが生まれるから、40万円持ってきてね』と(笑)」

そこでバイト先を探そうと考えた滝沢さん。求人広告を見て片っ端から電話をかけたものの、答えは全て「35歳以上は採用しない」。当時36歳だったことで、門前払いされてばかりだった。

「絶望しましたよ。もうお笑い芸人を辞めて、ちゃんと就職するしかないのかと。でも、既にお笑いを辞めた仲間なら、もしかしたら仕事を紹介してくれるかもしれないと思い、連絡を取ってみたんです。すると、『ゴミ清掃員の仕事ならすぐできるよ』と。やりたい、やりたくないとかより、『助かった! これでお笑いを続けられるぞ、ラッキー!』という感覚でしたね」

マシンガンズ滝沢さん
「よっしゃー!って気持ちでいっぱいでした」(滝沢さん)

ゴミ清掃の仕事を始めると、滝沢さんはあることに気が付いた。通りすがる誰とも目が合わないということだ。かつての自分がそうだったように、ゴミ清掃員の存在に意識を払う人はいなかった。しかし、周囲からの反応は別だ。

「ゴミ収集会社の同僚からは、『なんで芸人やってるのにここにいるんだ』ってよく言われましたね。逆に、芸人の後輩からは『なんでゴミ清掃員の仕事なんかしてんすか?』って言われたり、『コイツ、終わってんな』っていう目で見られたり。陰で“ゴミ芸人”って呼ばれてたのも、実は知ってます」

せっかく働くならゴミだけじゃなくて、“面白いこと”を拾って帰ろう

ゴミ清掃員の仕事を始めてからは、早起きのために大好きなお酒も控えるようになった。ゴミ収集車にゴミを投げ入れる作業も、思った以上にハードワーク。夏場の作業は特に体力を奪われるという。

「このままじゃ体が持たないと感じたこともありました。それでも僕は仕事を続けなければいけない。それなら同じ作業をする中でも、何か自分なりに楽しみを見つけようと考えたんです。1日働いたら、そこで一つは何かを見つける。ゴミだけじゃなく、何か自分が面白いと思えることを拾って帰ろうと。すると作業にも集中できたし、いろんなことが見えてくるようになったんです」

まず、滝沢さんがやってみたのは、ゴミを捨てた人のことを想像してみることだ。

「化粧品の容器や女性誌が入っているゴミ袋を見て、『あ、このゴミを捨てたのは、若い女性だろうな』と。よく見ると野菜の切れ端なんて一切入ってなくて、『外食ばっかりしてる人なのかな』と、人物像を想像していく。

あとは、『高級住宅街は、ゴミ出しの分類ルールをちゃんと守っていて、ごみ捨て場もキレイだな』とか、『ゴミがたくさん出るサイクルは、給料日と関係がありそう』とか、観察と妄想を繰り返すようになって。仕事がますます楽しくなりました

マシンガンズ滝沢さん

最もインパクトがあったのは、「30リットルのゴミ袋いっぱいに、えのきバターが入っていたこと!」と滝沢さんは笑う。

「異常に重くて、たぷたぷしてて、『一体これは何なんだろう?』と。それで、えいやっとゴミ収集車に投げ込んだら、袋が破けて、よく見たら全部エノキなんですよ。バターのめちゃめちゃいい匂いがして(笑)。芸人仲間に話したら、『もしかしたらYouTuberが捨てたんじゃないか!?』って盛り上がりました」

意外な発見や面白エピソードが増えれば、テレビ番組などでも使えるかもしれないと思い、“ゴミトーク”をストックしていくことに。ネタ探しも兼ねて、ゴミ清掃員の先輩にも積極的に話を聞くようになった。

「ゴミ清掃員は、みんなゴミの話が好き(笑)。例えば、『CDは燃えないゴミだったけど、焼却技術がアップして今は燃えるゴミに分類される』とか、『ゴミの最終処分場の埋め立て地があと50年でいっぱいになる』なんて熱く語ってくれるんですよ。それからどんどんゴミに興味を持つようになり、自分で語れる知識も増えました」

最初は、仕事をつらいと思ってしまう自分の気持ちを変えようとして始めたことだった。けれど「こんなゴミ清掃の知識、また手に入れたぞ!」という小さな達成感と、「これをいつかどこかで発表してやろう」と思えたことが、滝沢さんの未来までも変えていった。

「ある時、せっかくだからTwitterでゴミ清掃員のあるあるネタを発信してみようと思ったんです。すると事務所の先輩の有吉弘行さんが面白がってリツイートしてくれて、めちゃめちゃバズったんですよね。そうやっていろんな人に反応してもらえるのが楽しくて、毎日のようにつぶやいていたら、本を出すことになって。漫画『ゴミ清掃員の日常』(講談社)まで発売されました」

ダチョウ倶楽部のリーダー直伝「ダメだった時」の対処法

滝沢さんにとって、ゴミ清掃員の仕事は生活のために始めたこと。決してやりたい仕事ではなかったが、「目の前の仕事を、自分なりに楽しむための工夫」を始めたら、全てが変化し出した

「やりたい仕事じゃなかったとしても、目の前の状況を利用して、やれることを探してみれば、苦しさは減ると思いますね。『こんな仕事、嫌だから辞めよう。次を探そう』になると、また別の場所でも苦しくなるだけなんじゃないかな。僕は、これがゴミ収集の仕事じゃなくても、どんな環境でもネタにして面白がってたと思います」

また、ゴミ清掃員と芸人の仕事を並行したことは、相互に良い影響を与えることにもなった。

「本職がゴミ清掃だと思えば、ライブで滑ってもいいし、ゴミ清掃で失敗したらそれをライブで話せばいい。そう思えるまでに2年くらいかかったけれど、今はうまい具合に両方を利用できています。どっちも一生懸命やってきたから、ゴミ清掃員の仲間はライブを見に来て応援してくれたりするし、芸人仲間も困った時に助けてくれる。本当にありがたい話です」

さらに今現在、実感している喜びは、「自分のいいところを見つけられたこと」だという。

「正直、僕も昔はトップで活躍する芸人さんを見て、『あの人みたいなスターになりたい』って思ってました。20年前の自分にゴミ清掃員の仕事をやれと言ったら、ひっくり返るはず(笑)。でも、成功した芸人さんの真似をしようと頑張っても、それって人の生き方をパクってるだけ。うまくいくはずもないんですよ。僕は僕として、ゴミ清掃の仕事を通じて、その楽しさを発見し、与えられたものの中で“自分のいいところ”を見つけられたと思っています」

つらい仕事の中でも自分なりの視点を持ったことをきっかけに、滝沢さんは、誰の真似でもない「自分の個性」を見つけ、能力を発揮できるフィールドが開けたのだ。

マシンガンズ滝沢さん

書籍の重版も決まり、多忙な日々を送る滝沢さんだが、それでも週に2日はゴミ清掃員として働き続けているという。

「ゴミ清掃員を辞める気はないんです。仕事自体が楽しいし、飽きられて芸人の仕事がなくなっても、僕にはゴミ清掃の仕事があると思えますから(笑)。週5で働くのは難しくなりましたが、上司は『ゴミ清掃業界のために、頑張ってきてよ!』と快く応援してくれているんですよ。ゴミ清掃員と芸人を融合して、自分ならではの発信をしていければと思っています」

滝沢さんは最後に、どんな仕事でも楽しむためには“気負わずにチャレンジすること”が大事だと教えてくれた。

「自分の中の何かを変えるために一歩でもいいから踏み出してみることが大事なんじゃないですかね。チャレンジすることは怖いと思いますけど、そんな人には僕が強く影響された、ダチョウ倶楽部のリーダー・肥後さんの言葉を送りたいです。『自分で“こうなりたい”と思ったら、とりあえずやってみろ。できなかったら、ニヤニヤしながら帰ってこい』と。失敗したくない、かっこ悪いのは嫌だなんて思わず、とりあえずなんでもやってみる。もしダメだったら、ぺろっと舌を出しながら帰ってくればいいだけってことです(笑)。そんなに気負わずに、何事も気楽に楽しめばいいんだと思いますよ」

Information

マシンガンズ滝沢さん

滝沢秀一さん著書!『ゴミ清掃員の日常』
読むと分別したくなる。
ゴミ清掃芸人が夫婦で描くゴミのエッセイまんが。
何気ない暮らしの中で見つけた「面白くてためになるゴミ知識」と消費税分くらいの小さな幸せをお届けします。

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取材・文/上野真理子 撮影/大室倫子(編集部)

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