スキルアップ Vol.755

【5つの力分析】新規事業の立案・企画を任されたら…… “業界分析”のフレームワークを効果的に使おう!

効率的な仕事の“型”を学ぶ!
そろそろ気合や根性だけで乗り切る仕事は卒業! 一人前のビジネスパーソンとして、仕事の“型”である「ビジネス・フレームワーク」を活用して仕事を進めてみては? そこで、ビジネススクールのグロービスで講師を務める鳥潟幸志さんが、各種ビジネス・フレームワークの概要と利用シーンを解説する!

新規事業の立案や、新サービスの企画・開発。
もしもそんな仕事を手掛けられるチャンスがまわってきたら、一体何から始めれば……!?

そんな20’s の疑問に、グロービス講師の鳥潟さんは、「まずは、勝機のあるフィールドを見つけることが大事」だと答えてくれた。

じゃあ先生、「勝ち目のあるフィールド」ってどうすれば分かるの……!?

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株式会社グロービス グロービス・デジタル・プラットフォーム 事業リーダー 鳥潟幸志 さん埼玉大学教育学部卒業後、サイバーエージェントでコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタルPR会社のビルコム株式会社を共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了、MBA取得後は、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行う。現在はEdtech推進部門において『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める

本日のテーマ:5つの力(ファイブフォース)分析で伸びる業界を見極めよ!

本日のテーマ:5つの力(ファイブフォース)分析で伸びる業界を見極めよ!

家入一真

5つの力分析」とは、業界の収益性に影響を与える要因を分析することで、その業界が収益性を上げやすいか上げにくいかを判断する、マイケル・ポーター教授が提唱したフレームワーク。「5つの力(ファイブフォース)」とは、「業界内の競争」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」の項目に分けられる。

「5つの力分析」で、業界の将来を分析し、見通しを立ててみよう

「『5つの力分析』を使えば、あらゆる業界の収益性や将来性を見極めることができます。なかなか利益が出にくい業界や、どれだけ頑張っても利益率がほんの数%にしかならない業界、あるいはこれから市況が厳しくなっていく業界などを理解することができるのです」

家入一真

では、この「5つの力分析」は、どのようなシチュエーションで使うと有効なのだろうか。

「『5つの力分析』が特に有効に機能するのは、新規事業に参入する時です。また、転職先を決める時に『伸びる業界』を見極めるために使ってもいいですね。

ある業界の構造を分解し、分析するフレームワークなので、新規参入する場合に勝算はあるのか、充分な収益を確保できるのか分析するために使うといいでしょう。そこで『儲かりにくい業界』だと分かった場合、その業界へ参入しても事業の成功は望み薄でしょうし、仮に転職してもできる仕事やキャリアアップの仕方に限界がきてしまいます」

では具体的に、どのようなプロセスで分析を進めていけばいいのだろうか?

【5つの力分析STEP1:業界内の競合】まずは業界を適切に定義しよう

「始めに『業界内の競合』について考えるため、どこの企業が競合に当たるのか、分析したい業界はどこなのかを定義する必要があります。その際に、例えば自動車業界について分析したい場合、『自動車業界』と大きなくくりで分析するのは避けた方が懸命です。『電気自動車業界』など、もう少し具体的に対象を絞ってみると、より的確に収益性を知ることができるでしょう」

「自動車業界」などあまりに大きな業界で一まとめにすると、収益性を左右する要素が多岐に渡りすぎてしまうため、結論が出しにくくなるそうだ。とはいえどうしても業界を絞りにくいと感じた場合は、まずは分析してみて、何度でも業界を設定し直して分析をやり直してみると良い。

【5つの力分析STEP2:売り手・買い手の交渉力】自社商品の売値と原材料の“高い/安い”を見極める

前提となる業界を定義した後は、「売り手と買い手の交渉力の強弱を考える」フローにうつる。

家入一真

「まず、自社商品が高く売れるのか、安く売れるのかをチェックしていくために、『その業界に商品のバリエーションがどれぐらいあるか』を確認します。

買い手(顧客や消費者)にとって商品の選択肢が少なければ、価格が値下げされることはありません。この状態が、『売り手が強く、買い手が弱い』ということです。
一方で、業界に存在する商品の数が多くなれば多くなるほど、値下げ圧力が大きくなり商品の価格が下がります。この状態は『買い手が強い』ということ。もちろん売り手が強い方が、企業として売上を上げやすいということになります。

売り手/買い手のどちらの方が優位なのかを理解するために、その業界にどんな商品・サービスがあるのかをリストアップしてみるといいでしょう」

また、原材料や取引先企業から材料を調達するコストも、その会社の収益を左右する要因となる。

「この時も、『売り手/買い手』の考え方が使えます。自社から見て“売り手”となる取引先企業や素材調達先が、競合他社にも資材を卸しているなら、原材料調達コストは高くなってしまいます。さらに、原材料がある一つの取引先でしか作れない場合、その取引先の交渉力が強くなり、コストは高騰するでしょう。逆に、その原材料が代替可能になってしまうとさまざまな取引先から調達できる場合、コストは下がります」

この「売り手・買い手」を見比べることで、最終的なその業界の利益の出しやすさを見極めることができるのだと鳥潟さんは言う。

【5つの力分析STEP3:新規参入・代替品の脅威】業界外に視野を広げ、ライバル企業の増減を確認する

次の『新規参入の脅威』とは、この業界への参入障壁が高いか低いかを見極めるということだ。

「例えば規制の多い業界では、新商品を開発して新規参入する障壁は高くなります。あるいは自動車業界のような設備投資が必要だったり、人材の育成コストがかかるような業界も参入障壁は高いでしょう。一方で、テクノロジーやスキルさえあれば少人数でも商品開発できるアプリ開発などの場合、開発コストや人件費が抑えられるので、参入障壁は低いと言えます」

次に『代替品の脅威』について、『他に変わる商品やサービスがあるかどうか』を確認していく。

「今の時代だと、カーシェアやシェアサイクル、公共交通機関など、さまざまな移動手段がありますよね。そういう他の手段に顧客が流れる可能性はないかを確認してみましょう。代替品が多いと、業界の利益は低くなってしまいます」

「5つの力分析」の注意点

このように「5つの力分析」をしてみることで、その業界が儲かりやすいのか、儲かりにくいのか、想定することができる。その際に気をつけたいことは、リストアップする項目が正確かどうかだ。

「『たぶんこうだと思う』といった項目ばかり挙げていっても、想定の範囲内の結果しかでてこないはずです。そのため『5つの力』をチェックする際には、財務諸表など具体的な数値も合わせて確認するとより精度の高い分析ができますよ。そもそもの利益率が何%なのか、業界平均はどのくらいなのかなど、正確な数字を見ながら考察できるといいですね」

各業界の構造や、どのような仕組みで収益が出ているのかについて紐解くために、ぜひ「5つの力分析」を効果的に使ってみて欲しい。

取材・文/石川 香苗子 撮影/大室倫子(編集部)

Information

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