20代で何度も転職、「何をしても長く続かない」元フリーターの人生を180度変えた営業の仕事
「やりたいことが見つからない」「やりがいのある仕事がしたい」と悩む20代は多い。そんな読者にヒントをくれたのが、メーカーのサポートが終了したIT関連機器の保守・販売などを扱う株式会社ゲットイットで営業本部長を務める新垣一也さんだ。
ゲットイットは、メーカーのサポートが終了したEOSL(End Of Service Life)機器を扱う日本最大級の専門店。新垣さんは営業としてお客さまからの信頼を獲得し、10年以上にわたり同社の成長を支えてきた存在だ。
しかし彼の20代の頃の話を聞くと、仕事が長続きせず「フリーターになったり、かなり迷走していたんですよ」と笑う。
「フラフラしていた状態」から抜け出す転機となったのは、「営業」の仕事との出会いだった。なぜ、営業職として働き始めたことが、彼の生き方を変えたのか。新垣さんが、「やりたいこと」に向かってまっすぐ進んでいけるようになるまでの道のりを聞いた。
憧れだけで上京し、何となく転職を繰り返した20代
現在ゲットイットでは営業本部長としてメンバーを束ねる新垣さんだが、20代前半はやりたいことがはっきりせず、本人いわく「フラフラしているダメな若者」だったそうだ。
「高校を卒業後、18歳で上京して大手居酒屋チェーン店に就職しました。飲食業をやりたかったというより、憧れの東京で働いてみたいという、本当に軽い気持ちだったんです。お店では正社員として1年ほど働きましたが、長時間労働に嫌気が差して『これならアルバイトの方がマシだな……』という思いが強くなって。正社員を辞めて他でアルバイトをするようになりました。
フリーターになってからは、自分のやりたいことについても次第に考えるようになって。『昔からコンピューターに興味があったな』と気付き、バイトをしながら夜間の専門学校に通って勉強をしたんです」
当時はインターネット広告の黎明期だったこともあり、コンピューターの専門学校を卒業した新垣さんは広告代理店に就職。しかし、その会社も2年ほどで辞めることになった。結局またフリーターに戻り、さまざまなアルバイトを経験しながら生計を立てていた。
そんな彼に転機が訪れたのは、26歳の頃。建築現場で働いている時に現場監督から「友人の会社が人手不足で困っているらしいから、手伝ってみないか」と声を掛けられた。そこで紹介されたのが現在働くゲットイットの代表、廣田優輝さんだ。
「当時のゲットイットは、アルバイトを含めて20名に満たないくらいの小さな会社。IT機器の中古品物販を主にやっていたので、私は梱包や検品の手伝いなど力仕事をメインに手伝っていました。初めの頃は建築現場の日雇いの仕事を続けながら週1~3日というペースで通っていましたが、コンピューターが好きだったこともありゲットイットの仕事が面白くなってきて。ちょうどその頃『20代も後半になったし、そろそろちゃんと自分の将来について考えなきゃいけないな……』と思い始めていたので、次第に毎日顔を出すようになり、最終的には正社員になることを決めました」
営業の仕事=売上をあげる仕事じゃない。
同社が手掛けるEOSL(メーカーのサポート終了、製造中止になった機器)の販売や保守サービスは年々ニーズが高まり、2012年頃から新垣さんは法人営業に携わるようになった。
「ゲットイットの営業は、もともと興味があって当社に問い合わせてくださるお客さまにアポを取り提案していくスタイル。『メーカーの保障が終わってしまったけど、この機材を使い続けたい』というお客さまに中古の部品を提供したり、システムの修理を提案する仕事です。クライアントの新規開拓をするというよりは、困りごとがあって当社を頼ってくれるお客さまに、いかに良い提案ができるのかが肝になります」
新垣さんは日々営業としてクライアントに接していくうちに、自らのポリシーを自然に身に付けていった。そこに、営業としてのやりがいを感じるようになったと楽しそうに語る。
「私たちは中古品を扱っているので、お客さまから『〇〇社の製品で、こういった型番のものを揃えてほしい』と言われたら、まず中古の在庫があるかどうか調べる。そのときに在庫がなかったとしても『他のメーカーで代替できる部品はないか?』、『他の方法でお客さまのニーズを満たすことはできないか?』と、何とか相手の願いを叶えてあげるために試行錯誤します」
やみくもに売上を上げる、というよりも「どれだけお客さまのニーズに応えてられるか」がゲットイットの営業の腕の見せどころだ。
「僕は数字のために無理やりアポを取ったり、必要ない商品を買ってもらうのは苦手。だからこそお客さまの困りごとを叶えてあげて、『次も新垣さんに頼むよ』と言ってもらえるような営業スタイルに落ち着きました。『お客さまが欲しいのはドリルではなく穴を開けることである』という有名な話がありますよね。その例え話と同じで、弊社の営業はお客さまに『Aはありませんか?』と言われて『Aはありません』で終わってしまうのはダメ。そこから『Aが欲しい理由は何ですか?』と質問を重ねることで、お客さまが本当に欲しいものは何なのかを探り当てる。そこに営業の面白さを感じています」
迷っている時こそ、目の前の仕事に本気になろう
20代前半は仕事が長続きしなかった新垣さんだが、気付けば10年以上ゲットイットに在籍している。その理由は前述した営業活動の面白さと、代表の廣田氏の存在だと話してくれた。
「創業当時は彼の仕事のスピードや志の高さについていけず、正直『しんどいな』と思うこともありました(笑)。でも廣田の真剣さを素直に受け止めて、尊敬の思いを持って接するようになったら、『俺も頑張ろう』という気持ちになれた。その後、ゲットイットで働き続けることができたのも、彼と視点を合わせて真摯に仕事に打ち込めたからだと思います」
「かつてのフラフラした時期には絶対に戻ってはいけない、と強く思います(笑)」と笑いながら話してくれた新垣さん。とはいえ今、営業の仕事を心から楽しめているのも、くすぶった20代があったからこそだと振り返る。
「僕みたいに“戻りたくない過去”がある人は、『今の状況を何とかしなきゃ』と目の前の仕事に真剣に取り組むことができる。そう考えると、今となっては若いうちに右往左往したのは貴重な体験でした。もし僕にくすぶっている時期がなければ、今の仕事に真剣になることもなかったかもしれません」
やりたいことが見つからず、迷い、悩みながら20代を過ごしてきた新垣さん。しかし、営業の仕事の奥深さに気付けたことで、仕事にまっすぐ向き合えるようになったと真剣な眼差しで語ってくれた。
「営業の仕事を通して、目の前のお客さまのことを真剣に考えて仕事をすれば、相手にその想いは必ず伝わる。そうすればお客さまが自分のことを必要としてくれるんだ、と学ぶことができました。お客さまが僕のことを信頼して任せてくれる、というのはとても嬉しいことですし、おかげで毎日楽しくやりがいを持って働くことができています。もし仕事が長続きしないとか将来に悩んでる人がいるとしたら、まずは真剣に相手のことを考えて結果を出すことができる仕事を経験してみたらどうか、とアドバイスしたいですね」
取材・文/キャベトンコ 撮影/赤松洋太
RELATED POSTSあわせて読みたい
普通の会社員が“早起き”で5000人を変えるまで「勢いに巻き込まれて絶体絶命の窮地に立ったら、道が拓けた」【朝渋 5時こーじ】
キンコン西野亮廣がホームレスの男に学んだ、2018年以降の稼ぎ方「ギブアンドテイクはコスパが悪い」
幻冬舎・箕輪厚介の熱狂的仕事論――お前ら、“仕事ごっこ”してないか?【会社員2.0】
【幻冬舎・箕輪厚介】「置かれた場所で咲けないやつは、好きなことでも開花しない」“好き”を見つけたいと焦る20代への助言