スキルアップ Vol.778

【ZOPA・BATNA】クライアントの“値切り”にどう対処する?若手営業マンが知っておきたい“価格交渉”のフレームワーク

効率的な仕事の“型”を学ぶ!
そろそろ気合や根性だけで乗り切る仕事は卒業! 一人前のビジネスパーソンとして、仕事の“型”である「ビジネスフレームワーク」を活用して仕事を進めてみては? そこで、「グロービス学び放題」の事業リーダーを務める鳥潟幸志さんが、各種ビジネス・フレームワークの概要と利用シーンを解説する!

会社から任されている値引きの範囲と、顧客が提示した条件が折り合わない……。でも、クライアントの要望を丸飲みしてもいられない……。
商談をしていて「価格交渉」で悩む営業パーソンは多いのでは?

そんなとき、うまく価格交渉を進めたり、損切りの判断をするための“型(フレームワーク)”はあるのだろうか? グロービスの鳥潟幸志さんに聞いてみた!

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株式会社グロービス グロービス・デジタル・プラットフォーム 事業リーダー 鳥潟幸志 さん埼玉大学教育学部卒業後、サイバーエージェントでコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタルPR会社のビルコム株式会社を共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了、MBA取得後は、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行う。現在はEdtech推進部門において『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める

本日のテーマ:「ZOPA」「BATNA」で価格交渉スキルを磨こう!

「ZOPA」「BATNA」の意味

「ZOPA(Zone of Possible Agreement)」とは、交渉の余地がある条件範囲のこと。交渉者はZOPA内でいかに交渉結果を相手の限界値の近くに持っていくか、いかに自らの利得を最大化するかということを目指す。

「BANTA(Best Alternative To a Negotiated Agreement)」とは、合意ができなかったときの最善選択肢のこと。お互いのメリット・デメリットを考え、一番良い方法は何か?を導き出すことである。

価格交渉や損切りの判断材料を整理しよう

「営業先で商談していると、ある商品を自分は85万円で売りたい、でも相手は45万円でなければ買わない、といったように、あからさまな値下げ交渉をされることがあります。それに対応するために有効なのが『ZOPA』『BATNA』という2つのフレームワークです」(鳥潟さん)

1.価格交渉のファーストステップは「ZOPA」を明確にすること

「『ZOPA』とは、交渉がまとまる可能性がある範囲を明らかにするフレームワーク。例えば自社は85万円までなら値下げできる、相手は45万円にしてほしい、といった互いの交渉妥結の範囲を探ることを差します。まずはこの範囲を見定めることからスタートしましょう」(鳥潟さん)

このとき重要なのは、「45万円に値下げしてほしい」と言われたとき、クライアントはどこまでなら妥協できると考えているのかのラインを探ることだ。強気の値下げ交渉をされるとつい及び腰になってしまうが、顧客は必ずしも45万円でなければ買わない、というわけではないことも多い。「ZOPA」はどこなのか、勇気を持ってヒアリングしてみることから始めてみよう。

また、クライアントが45万円の値下げを要求する背景を把握することも重要だ。

「例えば、競合他社が45万円で提案をしてきているのであれば、競合他社と自社との違いを伝えることで45万円という最低ラインに変更が加わる可能性もあります。もしクライアントにキャッシュを一括で支払うのが厳しいという事情がある場合は、支払いを分割にすることで値下げ交渉幅を再検討してもらえることもあるでしょう」(鳥潟さん)

2.契約「しなかった」時のメリット・デメリットを整理して「BATNA」を明確にする

「『ZOPA』を確認しても交渉妥協の範囲がすぐには分からないこともあるので、交渉がうまくいかなかった時を想定し、一番望ましい代替案である『BATNA』を考えておきます。『BATNA』とは最も望ましい他の選択肢のこと。例えば、『この商品を買わなかったらクライアントが競合のA社と契約するだろうな』と予測できた場合、クライアントが本当にやりたかったことや優先的に解決したい課題から、自社とクライアントのメリット・デメリットを整理して『BANTA』を導き出すのです」(鳥潟さん)

「また自社の『BATNA』を考える場合には内部事情についても目を向けてみてください。この顧客と契約ができなかった場合、自社にはどんな選択肢があるのか。そうした次善策を考えた上で、今価格交渉している相手と交渉を継続すべきか、撤退すべきか判断を下します」(鳥潟さん)

つまり「BANTA」は、そのクライアントに対して営業活動を続けるべきか否かの「損切り」の判断をするときにも、有効なフレームワークなのだ。

とはいえ、こうした項目を営業現場で瞬時に見極めるのは難しいかもしれない。鳥潟さんも「このフレームワークは、あくまでも価格交渉の最終判断をする際に使ってほしい」と話してくれた。

「商談やクロージングに入る前、顧客とさまざまな議論を重ねる段階で、最終判断や値下げ交渉に必要な情報を整理しておけるといいですね。顧客が本質的に解決したい課題は何なのか、実はキャッシュがないだけで分割なら払えるのかなど、顧客事情について緻密に情報収集しておくと『ZOPAとBATNA』を使いやすくなるでしょう。その上で、このまま価格交渉をすべきなのか、ある程度のところで妥協点が見えなければ損切りして撤退の判断をするのがベストです」(鳥潟さん)

そのときは他のフレームワークなども用いて、顧客の抱える問題や、何が商談のネックになりそうかなどを明らかにしていくと、より判断の決め手となる有益な情報収集ができるそうだ。価格交渉や損切りの判断がうまくできない、という20’sは、ぜひ「ZOPA」「BANTA」のフレームワークを効果的に使ってみてほしい。

取材・文/石川 香苗子 撮影/大室倫子(編集部)

Information

鳥潟さんが事業リーダーを務める『グロービス学び放題

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