24歳の起業家・ハヤカワ五味が“自分らしさ迷子”に示す道筋「人に流されるのは、他人にテストの答えを書いてもらうようなもの」
最近、自分の意思で何かを“選んだ”だろうか。
口コミに頼っていたり、人に流されていたり。自分で選んだようで、私たちは実は“選ばされている”のかもしれない――。
情報や選択肢があふれる時代、 一体私たちは何を基準に選択を重ねていけばいいのだろう?
そこでお話を聞いたのがこの人。15歳でビジネスを始め、胸が小さな女性のためのランジェリーブランド『feast』など複数のアパレルブランドを展開してきたハヤカワ五味さん。24歳を迎えた現在は、生理と向き合うプロジェクト『illuminate』に携わっている。
経営者として日常的に“選択”を行ってきたハヤカワさんでも、かつては「他人の期待に応えるため」の選択をしていたことがある」と明かす。人生の舵を切るためには、自分の意思で“選ぶ練習”をしておいた方がいいと語るハヤカワさんに、自分らしい選択をするために必要なことを聞いてみた。
※こちらの記事は姉妹媒体『Woman type』より転載しています。元記事はこちら
10年間で最大の決断は「やめた」こと
“ハヤカワ五味”を名乗るようになってから、もうすぐ10年が経とうとしています。1番最初に販売したのは、15歳の時に作った『キリトリ線タイツ』。その後、大学在学中の18歳で起業し、ランジェリーブランド『feast』『feast secret』やワンピースブランド『ダブルチャカ』を立ち上げ、2017年にはラフォーレ原宿に旗艦店をオープンすることができた。これは、自分の夢が一つ叶ったことを実感した瞬間でしたね。
この10年間を振り返ってみると、私は経営者という職業柄、“選択”という行為を日常的に行ってきました。選択というと「始める」ことだと思われがちですが、これまでの自分のキャリアに最も大きな影響を与えた選択は、「始める」ことではなく「やめる」ことです。
その選択とは、今年の夏にラフォーレ原宿の店舗を閉め、『ダブルチャカ』のブランドをクローズしたこと。いま私が取り組んでいる『illuminate』にリソースを集中させるためでした。『illuminate』は、“生理のカルチャーを変える”プロジェクト。女性が自分に合った生理用品のことを知り、選び、購入することを通して、より多くの人に「選ぶ」ことの成功体験を得てほしいという願いを込めています。
生きている時間には限りがあるので、新しいことを始めるためには、すでに持っているものを手放して“余白”をつくらなくてはなりません。それなのに世間には「やめることは過去の自分を否定すること」と思い込んで、やめられない人が結構います。経営者にも撤退のタイミングを見誤って、すったもんだしてしまう人は多いですしね。
次のチャンスを手に入れるために行った今回の撤退は、誰に流されたわけでもなく、私自身の意思で決めた大きな決断だったと思います。
「悪い結果は人のせい」だと「良い結果も他人事」になってしまう
ラフォーレ原宿の店舗の閉店と、『ダブルチャカ』のブランドのクローズ。これらは『illuminate』の事業に専念するための選択でした。ただ正直なところ、この5年間アパレルを経営してきて、ついに「踏ん張りがきかなくなった」という側面もあります。
会社を立ち上げてからずっと「年商1億円」を目標に走ってきたのですが、その目標を達成するより先に、私の気持ちが折れてしまったのです。
その背景には、私が経営する会社(株式会社ウツワ)の設立を、“人に流されて”決めてしまった経緯があって。18歳で『feast』を立ち上げて間もないころ、私自身は法人化するつもりが全くなかったにもかかわらず、先輩経営者に強く勧められたために、流されるように会社を設立してしまったのです。
自分の意思で選択しないことの何が問題かというと、悪い結果が出た時に「私自身は間違っていない」という思いが強くなってしまうことです。例えるなら「他人にテストの答えを書いてもらっている状態」。そうすると何点だったところで「いや、あいつが悪いじゃん!」てなりますよね。
結果に対して責任を取れないから、一番しんどい時に頑張れない。しかも良い結果が出てもどこか他人事で、心の底から喜べません。私が周囲の期待に応えるように経営者の道を選んで、つらくなってしまった経験があるからこそ、強くそう思うようになりました。
でも今は、自分でブランドの撤退を決め、『illuminate』をやるんだって決心したからこそ、素直にその反響を「自分が成し遂げた」と実感することができています。
つまり、自分で選んだことであれば、良い結果が出ればうれしいし、悪い結果が出れば「じゃあ次はこうしよう」と素直に考えることができるということ。他人の期待に応えたところで、他人は人生の責任を負ってはくれませんから、「自分で選んだ方が、現状をよりよく変えていける」というのが、私の結論です。
「選ぶ」ことで自分の輪郭がはっきりする
まずは明日のランチから“選ぶ練習”を
今の世の中、「自分さえ我慢すれば周りは良くなる」と思っている人が少なくないように感じます。だから自分では選択することをせず、相手の判断ややりたいことに合わせてあげようとする。
でも考えてみてください。自分だけ不幸せで、都合よく周りはみんな幸せなんてことがあるでしょうか? 自分を幸せにできない人は、他人を幸せにすることもできません。
さらに言うなら、「自分さえ我慢すればいい」というのは、自分が不幸せなことに対して言い訳をしている楽な状態です。もしそれが嫌なのであれば、自分の責任で選択し、言い訳ができない状況にしていかなければなりません。
特に、私は女性にこそ、“選択”を意識していってほしいと思っています。女性は妊娠出産一つとっても、自分の力で思い通りにできないことが多い。
そんな時に「選ぶ力」がないと、何をすればいいか分からなくて迷子になってしまう。男性よりも明確なキャリアパスを決めにくい分、意識して自分の道をつくっていく力を付けないと、どんどん周囲に流されてしまいます。
現状をキープしたいのであれば、流されたままでもいいかもしれません。でも自分の意思で選ぶ経験がなく過ごしていると、いざ自分が納得いかない状況に陥った時に、人生の舵を切ることができないでしょう?
自分で選んだ以上言い訳はできませんし、大変だと感じることもあると思います。でも流されるよりも自分で選んだ方が、納得いくキャリアが築けるはず。 周りのせいにして愚痴を吐くこともなく、スッキリした気持ちで生きていくことができます。
「じゃあ一体、何を選択したらいいの?」と考えた時に、選択の基準となる「自分らしさ」が分からない人は多いと思います。
そんなときの私のオススメは、「自分らしさ」を見つけるよりも先に、選んでしまうこと。
私自身の経験を振り返っても、「自分がなぜこれを選んだのか」を考えることの積み重ねによって、「私はこういうのが好きなんだな」って自分の輪郭が少しずつはっきりしてきたと感じています。
だから「自分らしい選択が分からない」という人は、どんな小さなことでもいいので、“選ぶ”ことを意識的にする。明日のランチでもいいし、日々の小さな買い物でも構いません。選ぶ練習をする中で、自分らしいもの・らしくないものが次第に分かるようになり、もっと大きな選択もできるようになるはずです。
情報や選択肢があふれる今の時代では、“自分の意思で選択する”という一見当たり前のようなことが大きな価値を持ちます。自分の責任で選んだ先にしか、思い描いた未来はない。もっと「選ぶ」ことを通じて、自分の足で心地いい人生を歩んでみてほしいと思います。
取材・文/一本麻衣 撮影/吉永和久
Information:『私だけの選択をする22のルール あふれる情報におぼれる前に今すべきこと』(KADOKAWA)
「“自分の意思で選択する”という当たり前のことが大きな価値になる」
ハヤカワ五味さん初の著書!
大学在学中から数々のアパレルブランドを立ち上げ、デザイナー・起業家として注目を浴び、最近ではテレビやラジオのパーソナリティとしても活躍するハヤカワ五味。引っ込み思案な幼少期、ものづくりに熱中した中高生時代、起業家となり多忙を極めた大学生時代、活躍の場を広げ進化し続けている現在──。24年の歩みのなかで、彼女が学び、選んだルールとは……?
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