キャリア Vol.855

【元OL執筆屋・あんちゃ】‟スキルなし”からフリーランスになっても食っていける人の条件は?

20's type2周年特集
世の中全体が「働き方」を見直さざるを得ない状況だ。そこで「今後の自分はどう働くか」を改めて考えるべく、話題の働き方の実態を調査。“アフターコロナ”の新時代に備えて、自分が納得できる働き方を選び取る準備を始めよう

好きなときに好きな仕事ができて自由そう、嫌な上司とも会わなくていいし……と、「フリーランス」の肩書きに何となく憧れる人は多いはずだ。特に近年は独立のハードルも下がり、フリーとして活躍している20代は少なくない。

でも、特に何のスキルもない若手がフリーランスになるのは難しいだろうし、その中でも“食っていける”人になるには相当特別な能力がいるのでは?

そこで、「もともと何の文章力も才能もなかった」と言い切る執筆屋・プロブロガーのあんちゃさんのもとを訪ねた。現在、月間70万PVを誇る人気ブログ『まじまじぱーてぃー』を運営するあんちゃさんは、‟スキルなし”から独立し、どうやって‟食べていける”ようになったのだろう。

あんちゃさん

執筆屋・ブロガー あんちゃさん
1991年生まれ。北海道札幌市出身。ブロガー・メディアディレクター。大学卒業後に上京し、IT企業に2年間勤務。会社員の頃に個人ブログ『まじまじぱーてぃー』を立ち上げ、その3カ月後に会社を退職しブロガーとして独立。ブログ開始から1年で月間70万アクセスを超える。現在の活動はブログ運営にとどまらず、コンサルティング業・講師業・イベント講演など多岐に亘る
Twitter:@annin_book

「そうやって、ずっと流されて生きていくの?」
先輩の言葉にハッとさせられた入社1年目

北海道に生まれた私は、IT企業への就職を機に上京。ところが会社員になったはいいけれど、この先どんな働き方がしたいのかわからず、ずっと違和感を抱いていました。目の前の仕事をこなす楽しさは感じていたけれど、生きていく上での信念なんて、かけらもなくって

そんな日々にモヤモヤを感じていた時、社内で唯一仲が良かった先輩から「そうやって、ずっと流されて生きていくの?」と、胸に突き刺さるひと言を投げかけられました。その先輩は、自分の生き方に信念をもって、積極的に社外のイベントなどに出かけ、知見や友人の輪を広げていたんです。

その言葉にはっとした私は一念発起。「私も胸を張って人生をまっとうしたい」と思い、起業家のトークイベントやセミナーに足を運んだり、地域活性のプロジェクトに参加してみたりと、いろんなことにチャレンジしました。

あんちゃさん

だけどどれも、心血注いで取り組むことができなくって。そうしてたくさん回り道をした結果、たまたまイベントで知り合ったブロガーさんのすすめで、ブログを書いてみようと思い立ったんです。

もちろん、最初はまったく誰にも読まれませんでした。それでも「やるからには全力でやろう」と思い、あらゆる切り口から毎日記事を書いているうちに「【18禁の館】熱海秘宝館に女1人で潜入してきた感想。」とか「【18禁】”バイブバー”とかいう異世界空間に女2人で潜入した話【渋谷】」などの下ネタの記事がTwitterとFacebookでバズり、少しずつ読者が増えていったんです。まさか適当に書いた下ネタが読まれるとは思いませんでした(笑)

「失敗しても死なない」貯金30万円で独立

それからどんどんブログで誰かの役に立てることが楽しくなってきて、「ブログだけで生きていきたいな」という気持ちが少しずつ膨らんでいきました。

でも私はライターの勉強をしてきたわけでもないし、プロとして経験があるわけでもない。だから不安で、なかなか独立する決断ができずにいたんです。

だけど既にフリーランスとして活動していた当時の恋人に「今独立して失敗したら、死ぬと思う?」と聞かれた時、「あ。死なないわ」ってスコンと楽になりました。「だったら、守るものものなく、身軽に動けるいま、チャレンジしないと損だ」って。

あんちゃさん

それで貯金もたった30万円しかないのに、独立することを決めました。でも、やみくもに見切り発車したわけじゃなくて、「30万あったら、最低限の生活送って2~3カ月が限界かな」「3カ月やってみてダメなら再就職しよう」とその後の計画は立てていましたよ。

実はビビリなので、常に「最悪な状態」を考えてから動いていたんですよね。例えば、支払う税金や1カ月に必要な生活費についてもかなり細かく見積もっていました。

それから何歳までにいくらほしいという未来予想図も描きました。周りの大事な人が困っていたらすぐサポートできるくらいの収入はほしかったので、「30歳までに月収80万円」と目標を決め、独立1年目は会社員の時と同じくらい、つまり月収20万円をまずは目指そうと考えたんです。

20万円くらいなら、ブログで稼げなかったとしてもクラウドソーシングで作業を請け負うなどすれば、何とか稼げるんじゃないかなって。とはいえ不安は拭えなかったから、会社を辞める直前と、辞めてからの1カ月は毎日スーパーの安売りパスタと納豆ばかり食べていましたけどね(笑)

実際に会社を辞めてからは、毎日ブログを更新しながら、自分からどんどんイベントを企画したり、ブログのコンサルサービスを始めたこともあって、順調に読者を増やすことができ、収入も少しずつ増えていきました。

誰にも読まれない頃から毎日ブログを更新し続けられたのは、「このままの人生でいいのか?」と何度も自問自答しながら少しずつ腹をくくり、そして私の言葉を必要としてくれている人がいると実感できたからです。

いま思うと、退職したときの「これからはもう会社という後ろ盾がない」という危機感も、強い覚悟につながりました。いま手を動かさなきゃ、数カ月後は貯金が底をつく。そうしたら再就職するか、路頭に迷うかどちらかでしたから。

「覚悟と準備」は‟スキルなし”を支えてくれる

振り返ると、端から見たら特別なスキルがあったわけじゃない私が、フリーランスで食べていけるようになれたのにはいくつか理由があります。

まずは独立前に会社で働きながらしっかり準備をしたこと。自分がどんな生き方をしたいのかロールモデルとなる人を探し、どうしたらそうなれるのか考えて書き出すようにしていました。

ライターの経験はなかったので、自分で必死にスキルアップもしましたよ。もともと本やブログを読むのが好きだったので、大好きなブロガーさんの文体を真似して理解できるまで模写していました。

なかでも私はARuFAさんや、「スタバでダベる女子大生に対し畏敬の念を禁じ得ない」という名エントリーを書かれた熊谷真士さんのブログが大好きで。お2人のブログは端から端まで読んで、行間の使い方や擬音語の入れ方、言葉遣いなどを分析し、しつこいくらいに何度も読んで書き方を勉強しました。何が面白いブログなのか、その共通項を全部書き出していましたね。

あんちゃさん

あとは、自分の最大の武器に気付けたことも大きかったです。それは「どこにでもいる普通のOLである」ということ。この「私らしさ」や「普通さ」こそが強みなんだということにある時気付いたんです。

やっぱり、お腹を抱えて笑っちゃうくらい面白い文章を書くブロガーさんや、多くの人を感動させられる方と比べて、自分の文章が下手に思える日もあります。

だけどヒドい失敗とかヘマをして、もがきながら変化していく姿やプロセスも「普通のOLの成長ストーリー」として発信していったら、次第に応援してくれたり一緒に頑張ろうと励ましてくれたりする仲間が増えていったんです。

そうやって支えてくれる周りの言葉を大切にしたことも、「スキルなし」の私にとっては重要なことでした。心が折れたり、炎上して行き詰まったりした時に、助けてくれたのはいつも周りの人たちでしたから。

仲間のブロガーさんやSNSでフォローしてくれている人たち、イベントで出会った方々、彼氏や地元の友だち、母や妹などに助けを求め、その言葉に救われ、なんとか生き延びて来られました。ちなみに母と妹は下ネタ大好きなので、私の書いた下ネタ記事も全部読んでくれています(笑)

だから私が「何でスキルもないのに独立して軌道に乗せられたんですか?」という問いに答えるとしたら、キレイごとに聞こえるかもしれないけど、本気で「周りが応援してくれたから」だと思っているんです。

せっかく会社員として安定しているなら、その間に準備をしよう

後先考えず「フリーランスっていいな」くらいの感覚で独立したいと思う人って多いですよね。

でも、本当にそれでいいのかなって、私は思っちゃう。もちろんその勢いだけでうまくいっちゃう人も、中にはいますけどね。

特にいまの仕事が不満で、そこから逃げ出したくてフリーランスを目指す人。もしその不満の根本が、自分の弱さや課題と向き合えていないことから生まれているのだとしたら、たとえフリーランスになっても、同じ不満が出てくると思います。それは、ただ働き方を変えたからといって解消する問題ではないから。

私も独立して最初のうちは「自分の言葉で誰かを勇気付けたり、誰かの決断を後押ししたりできること」が純粋に嬉しくて発信を続けていたはずなのに、ブログのアクセス数が増えて収入が増えるにつれ「お金を稼いで、ブログで自由に生きてやるぜ!」とゴールを勘違いしてしまったことがありました。お金を稼いだり数字を伸ばすのは、手段でしかないのに。

その結果、「私は何のために発信してるんだろう」と迷子になって、1年くらい苦しみました。

目先の数字や収入に捉われすぎると、本来の目的を見失って、自分の軸が分からなくなっちゃうんだなと、痛感しました。これが、私の弱さであり、乗り越えるべき課題でしたね。

「会社員かフリーランスか」という労働形態って、自分が望む生き方を実現するための手段でしかないので、独立することを目的にするんじゃなくて、まず「どんな生き方をしたいのか」をハッキリさせた方がいいです。

その軸が立つまでは、会社に勤めながらやりたいことをやってみて少しでもスキルアップしてからでも遅くないと思います。今だってパラレルキャリアという選択肢も広がってますしね。

私自身もそうやって徐々にシフトしていったから気持ちが安定していましたし、それが「スキルなし」からスタートするためには大事な時間だと思います。

あんちゃさん

結局必要なのは、覚悟と準備の両方。「これで生きていこう」と腹をくくることと、そのための準備を今すぐにでも始めることです。その両方を大事にしていれば、細かいスキルは後からでも身に付けることはできると思いますし、何より周りがその気持ちを応援してくれて、支えとなってくれるはずですから。

そうすれば、スタートは「スキルなし」だったとしても、フリーランスとして何とか世の中の荒波を渡っていけるんじゃないかと、私は思っています。

取材・文/石川 香苗子


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