キャリア Vol.864

「キャラ売り」する前に社内の評価を上げろ? スドケンさんに若手営業パーソンの悩みを#ハック思考で解決してもらった

Kaizen Platform創業者で「スーパーグロースハッカー」として名高い“スドケンさん”こと、須藤憲司さん。前回の記事では、彼の最新著書でもある『ハック思考』とはどのような考え方なのかを教わった。

>>前の記事:『ハック思考』って若手にはムリじゃない? 著者スドケンに聞いたら「考え方はDJと同じ。練習すれば大学生だってできる」と教えてくれた

「ビジネスの常識や思い込みを疑い、常識とは逆サイドにフォーカスする」というのが、ハック思考の基本。では具体的にどのような流れで“ハック”していくのか。

今回は、20’s type読者の悩みをスドケンさんに「ハック思考」で解決してもらった。

※本取材はオンラインで実施しました

プロフィール画像
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株式会社Kaizen Platform 代表取締役 須藤憲司さん 2003年に早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。その後、13年にKaizen Platformを米国で創業。現在は日米2拠点で事業を展開。著書に『ハック思考』(NewsPicks Book)Twitter:@sudoken

自分の強みは本当に「キャラ売り」なのか?

編集部

スドケンさん、今回は実践編として、読者の悩みをハック思考で解決してみてほしいです!

スドケン

分かりました!

編集部

まずはこんなお悩み。

<お悩み>

僕はこれまで、いわゆる“キャラ売り”をしていました。お客さんと仲良くなって、「君がそんなに言うなら買うよ」と契約してもらう……という流れが得意で。 お客さんと楽しく商談できるのでこの営業手法が好きだったんですけど、今年に入ってWeb商談が主流になって、キャラ売りが通用しづらくなりました。どうしたらいいでしょう?(25歳/通信/法人営業)

スドケン

キャラ売りが強みの自分が、どうやったらWeb商談で売上が上がるか」ってことが悩みですよね。ではまず、「ハック思考」の方法をおさらいしてみましょうか。

編集部

これですね!

ハック思考とは

1.ゴールについて定義する
2.その定義を分解して計算式にする
3.常識の逆サイドは何かを考える

スドケン

そもそも「キャラ売りだとWeb商談が不利」って本当なのかなあ。まずはそこを疑って、「キャラ売りとは何か」の定義を考えることから始めてみてはどうでしょうか。

編集部

キャラ売りって、お客さんに可愛がってもらえるキャラクターってことでは?

スドケン

本当にそうですかね? じゃあ可愛がってもらえるってどんな状態?

編集部

愛嬌があるとか……?

ハック思考
スドケン

キャラクターで「売れる」までいくには、誰もが「この人はこういうキャラだから買っちゃうよね」と納得できる状態までいくことだと思うんです。つまり、周りにそのキャラが認められているかどうか。

編集部

例えば?

スドケン

CAMPFIREの家入(一真)さんは「遅刻キャラ」として有名で、遅刻しないと逆に「どうしたんですか?」って心配されちゃうくらいです。

スドケン

あと『ハック思考』の編集者でもある箕輪(厚介)さんとか。「破天荒キャラ」だから、彼がべろべろに酔っ払ってても、別に誰も何も言わない(笑)。キャラってそういうことじゃないでしょうか。

編集部

いや、それは家入さんとか箕輪さんだから許されることであって……。

スドケン

そこがポイントです!

編集部

え?

スドケン

なぜ家入さんや箕輪さんは、ぶっ飛んだことをやっても許されるんだと思いますか?

編集部

それは仕事で結果を残して評価されていて、周りから「この人はぶっ飛んでるけど、仕事をさせたら超一流」と信頼されているから?

スドケン

とすると、キャラ売りの定義ができあがりますよね。キャラ売りとは、「仕事で結果を出していて、評価・信頼を得ているかつ、突き抜けた個性がある」状態だからこそ売れる、ということになります。ただ「個性がある」だけなら、キャラとは言わない。

編集部

なるほど……!

スドケン

その定義に基いてみると、今回の相談者はそもそも「キャラ売り」ができていたのかどうかを考えた方がいいのでは?

編集部

なんとなく「明るくて、ハキハキ受け答えできて、お客さんウケが良い」ということを「キャラ売り」だと思っている営業パーソンは多そうですね。

スドケン

ですよね。Web会議がどうこうっていうよりも、そのキャラが中途半端だからうまくいかなくなってきたんじゃないんですかね。
それが分かれば「仕事で結果を出していて、評価・信頼を得ているかつ、突き抜けた個性がある」状態を目指すところがゴールの定義になるわけです。

評価は‟ハック”しやすい

スドケン

「キャラ売り」をするには、突き抜けた個性を出す前に「仕事で結果を出していて、評価・信頼を得ている」ことが必要なのが分かりました。では、結果・評価・信頼を得るために、普通ならどんな対策を考えますか?

編集部

結果を出して、評価されて、信頼される……現場の営業パーソンなら「売上を上げる」一択ですよね。

スドケン

常識で考えるとそうですよね。でも、そもそも売上って上げる必要あるんでしょうか? 結果とそれに紐づく評価って、単なる売上数字のことなんですかね?

編集部

え……?

スドケン

営業の評価って、「お客さんにどれだけモノを売ったか」で決まると思いがちですけど、「社内からどれだけ良く見られたか」も大事じゃないですか?

ハック思考 スドケン
編集部

社内ですか?

スドケン

そう。営業パーソンだろうと何の職種だろうと、会社独自の評価ルールが絶対にありますから、そこをハックすれば簡単に評価は上がります。

編集部

独自のルール……。

スドケン

例えば、昨対比の達成率が部署内1位とか、重点商品を社内で一番売ったとか。

編集部

お客さんから見たらどうでもいいかもしれないけど、社内の人から見たら「スゲー」ってなる。たしかに独自ルールですね。

スドケン

みんなお客さんをどう攻略するかはよく考えるけど、どうしたら社内の評価が高まるかはあまり考えないですからね。

編集部

売上が評価につながるという「常識」の逆サイドですね。

スドケン

そう。たとえば僕はリクルートにいた時、何度も全社表彰をされたことがあるんです。

編集部

それは須藤さんがすごいから……!

スドケン

いや、そんなことは全くなくって。リクルートのように化け物みたいに仕事ができる集団の中で、真面目にがんばったっていつまでも全社表彰なんて取れないですよ。

編集部

じゃあなぜ何度も表彰されたんでしょうか?

スドケン

なぜなら「評価する側が、何を基準に評価するのか」を考えていたから。評価って実はすごくハックしやすいんですよ。評価する側目線に立って、実績の見せ方を変えるだけなので。だから今回のケースもそういう視点で考えてみてはどうでしょうか。

編集部

見せ方?

スドケン

例えば、今月の売り上げ数字が1000万円だったとします。これだけなら数字の多い順に評価されてしまうかもしれないけれど、その内容が「新規受注だけで1000万円売り上げました」だと見え方が違いますよね。
あるいは「30年間、誰も取り引きができなかった重要なクライアントから初めて取り引きをもらった」とかでもいいかもしれない。

編集部

なるほど、同じ1000万円でも見え方が違う。

スドケン

こうすると簡単に社内の評価なんてもらえます。ハック思考をつかって評価をもらって、そしたら好きなだけ自分のキャラを押し出して仕事をすればいいわけです。

編集部

なるほど。社内から評価・信頼されたら、良いクライアントをまわしてもらえるかもしれないし、自分に自信がついて対クライアントにも堂々と商談できるようにもなりそうですね。

誰もフォーカスしていない‟空白地帯”を探せ

編集部

一つの悩みでも、いろんなハック思考のポイントがあるということが分かりました。ただ、そのポイントにきちんと注目できるかどうかが難しそうですね。コツってありますか?

スドケン

周りを見渡して、空白地帯になっているところを探すこと」ですかね。

編集部

空白地帯?

スドケン

年次を重ねてみんなが提案力を上げることに躍起になっているなら、逆にキャラで突き抜ける人は誰もいなくなる。みんなが売上数字にとらわれているのなら、逆に社内で評価されるポジションはがら空きかもしれない。

ハック思考 スドケン
編集部

多くの人が注目しているところにフォーカスするのをやめて、空いている場所を探してみようということですね。

スドケン

そう。今回の場合なら「営業は売上で評価される」という常識を疑ってみることが「ハック思考」のスタートです。そして常識的な評価軸ではなく、自分が評価されやすい空白地帯を見つけること。これなら経験や実績のない若手でもできるでしょう?

編集部

常識を疑い、誰も狙っていないところを見つける。それなら日々実践できそうです!

スドケン

今回は「キャラ売り」にフォーカスしてみたけど、次は「Web商談で売上を上げる」ことにフォーカスしてみるとかね。いくらでもハックするポイントはあります。

編集部

そのためには、前回の記事で言っていたように、ハック思考のトレーニングが必要になってきそうですね。

スドケン

はい。あと今回の「Web商談に切り替わった」みたいに、いま世の中が変わっているときだからこそ空白地帯ってたくさん生まれているんですよ。

編集部

なるほど。では次回は、その「withコロナ時代のハック思考」について、詳しく教えてください!

取材・文/石川 香苗子 企画・編集/大室倫子(編集部) 撮影/森川亮太(箕輪編集室)

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