キャリア Vol.869

マネジャー&20代の座談会から探る、「リモートワークがうまくいかない」若手が‟普段通り”に仕事を進めるためのコツ

20's type2周年特集
世の中全体が「働き方」を見直さざるを得ない状況だ。そこで「今後の自分はどう働くか」を改めて考えるべく、話題の働き方の実態を調査。“withコロナ”の新時代に備えて、自分が納得できる働き方を選び取る準備を始めよう

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、土日の外出制限のみならず、平日も人との接触を8割減らすよう求められている。それに伴い、多くの企業がリモートワークを実施するようになった。いまやリモートワークは「withコロナ時代」に欠かせない働き方といえるだろう。

とはいえ若手にとってのリモートワークは、先輩や上司に仕事の話を気軽に聞けない、作業スペースが十分に取れない、そもそもずっと孤独で精神的につらい……など、問題が山積みだ。

出勤していた時のように仕事を頑張りたいのに、なかなかうまくいかない。そんな時、どうすればいいのだろうか?

そこで今回は、もともとフルリモートが認められていたクラウドワークスの田中健士郎さん、一部リモートで働いていたピークスの松浦香美さん、‟完全出社スタイル”だったフォースタートアップスの近藤尚青さんの3名座談会をオンラインで実施。

コロナショックをきっかけに完全にリモートワークとなった3人の話から、20代がこれまで通りに仕事を進めるためのコツを探ってみた。

コロナショック

(写真左)株式会社クラウドワークス
経営企画室 地方創生・ワーカーエクスペリエンスチーム リーダー/働き方エバンジェリスト
田中 健士郎さん(32歳)
(写真中央)ピークス株式会社 
ソリューションビジネスユニット アカウントエグゼクティブ
松浦 香美さん(25歳)
(写真右)フォースタートアップス株式会社 
ヒューマンキャピタリスト
近藤 尚青さん(28歳)

コミュニケーションは意外と“いける”
ただ、言語化の難しさを感じることも

――皆さん、コロナショックの前後で働き方はどのように変わりましたか?

田中:クラウドワークスは2019年からフルリモート・フルフレックスがOKの会社。私は経営企画の部署で、メンバーのマネジメントも行っていますが、それでもコロナ前から週2~3日はリモートワークをしていました。

3月下旬からは会社全体で在宅勤務になったので、いまではフルリモートで仕事をしています。もともとリモートの環境は整っていたので、そこまで不自由はしていません。家に子どもたちがいるので、育児と平行しながらというのを除けば、ですけどね。

松浦:私は出版社系列のクリエイティブカンパニーで、営業をしています。以前からアポイントが立て込んでいる時などにコワーキングスペースで仕事をすることが許されていて、「場合によってはリモートOK」の環境でした。いまは取引先もリモートワークが多いので、商談や打ち合わせは全てオンラインで行っています。

近藤:私はスタートアップに対してCXOの採用やチームの立ち上げ支援を行なっています。これまでは毎日オフィスへ出勤していて、クライアントや候補者とは対面で打ち合わせをしていました。3月末頃からリモートワークに切り替わり、いまでは全て自宅で行っています。

――今回のコロナショックでそれぞれ完全リモートワークに切り替わったんですね。 特に近藤さんはこれまでとはガラッと環境が変わりましたが、リモートで働いてみてどうですか?

近藤:私はリモートワークを始めてまだ数週間ですが、「意外といけるもんだなあ」というのが正直な感想です。

私はこれまでオンライン商談をしたことがなかったのですが、いざ取り組んでみたらほとんどのクライアントや候補者がスムーズに応じてくれたし、打ち合わせの内容にも問題がなかったんです。直接会わなければ温度感や人となりを知ることができない、というのは私の思いこみだったんだなと考えを改めました。

――松浦さんはもともと一部リモートだった環境からフルリモートに変わりましたが、どんな変化がありましたか?

松浦:私は広告制作を手掛けているため、色合いやデザインなど、感覚的なニュアンスを言語化してオンラインで伝えることの難しさを感じています。

一方で、一人で行う作業に集中できるようになったのは、良い意味でのギャップです。雑音がなく話しかけられることもないので、企画書をつくるスピードは格段に早くなりました。

――田中さんはリモート・出社を選べる環境から、出社停止のフルリモートに変わりましたが、どんなところに良さや難しさを感じていますか?

田中:私も、コミュニケーションの変化は大きいと感じています。良い面でいうと、「全員がリモート」になったことで情報の伝達がフラットになりました。

とはいえ、リモートだけのコミュニケーションは難しいこともあります。例えばスピード感を持って意思決定をする場面や、会社のビジョンやミッションといった抽象的な内容を伝えるとき。

こういう緊急性が高い案件や、抽象度の高いことについて話し合うときは対面の方が向いているようです。なのでフルリモートのいまは、言葉選びやメンバーとの温度感に注意しながらコミュニケーションを取るようにしています。

リモートワークへの順応は‟見える化”がキーワード

コロナショック

――いま25歳くらいの若手で、いきなりリモートワークに移行して「なかなかうまく順応できない……」と悩んでいる人は多いです。田中さんはマネジャーの立場から見て、どのように対処すればいいと思いますか?

田中:当社で言うと若手でも「見える化」が上手な人は、リモートにうまく順応できている印象です。リモートワークでは自分から発信しなければ、上司も何をやっているのか把握できず、アドバイスもできないですから。順応するには、まずはそこからではないでしょうか。

――先輩や上司に、自分が何をやっているかをちゃんと伝えることが大事ということですね。

田中:はい。あとリモートワークには「独走力」も重要だと思います。仕事を一人でやりきる、考えきる力ですね。共有もとても大事なことですが、とはいえ何でも先輩や上司に聞いていてはお互いに仕事が進みません。

先ほど松浦さんが「企画書を集中してつくれるようになった」と言っていたように、リモートワークでは自分一人で集中できる時間も取りやすいですから、一度自力で企画書作りなどをすべてやりきってみるといいと思います。

もちろんどうしても分からないことがあれば先輩に聞いてもいいのですが、それを意識することで「自分一人で考えきる力」が磨かれていくと思います。

――松浦さんは、25歳の若手メンバーとして、ご自身で工夫していることはありますか?

松浦:自分がいつ・どれだけ仕事をしているかが伝わりにくいというのは私も実感しているので、こまめに仕事の状況を伝えるようにしています。

具体的には上司と週1回、商談の進捗や営業成績の達成状況を報告する1on1の時間を入れたり、15分でも共有の場を設けるようにしたり。移動時間を気にしなくていいせいか、5〜15分程度の短時間の打ち合わせを気軽に入れられるようになった気がします。

――自分で意識的に「ちょっとした共有」の場をつくっているんですね。

松浦:営業職の場合は特に、自分がいまどんなクライアントにアプローチしているか、どんな商談をしているかを細かく可視化することが大切だと思います。当社では営業チームのSlackに、日報を投稿するチャンネルがあるので、毎日そこに訪問した企業名や商談内容を記入するようにしていて。

他にも朝会など、会社側が用意してくれた報告の場もたくさん用意あるんですよ。なので自分で報告や発信を意識的に行うことで新たなアイデアに結びつくことも多く、モチベーションに繋がっています。

――対クライアントで意識していることはありますか?

松浦:クライアント側でもリモート対応が進んでいるので、対クライアントにも社内と変わらず、オンライン上の共有を大切にしています。以前は私も対面コミュニケーションを大事にしていたので少し不安でしたが、いまはオンラインコミュニケーションが多様化しているのでクライアントも柔軟に対応してくださっています。

――なるほど。同じく対面コミュニケーションを重視していた近藤さんは、対クライアントで意識していることはありますか?

近藤:当社はまだリモートが始まって数週間なので、正直ノウハウはまだちゃんと掴めていません。でも普段なかなか会えない起業家の方や、忙しそうなクライアントとの時間調整がしやすくなったのは大きな発見でした。

――リモートに切り替わったことで、アプローチできる層も広がったんですね。

近藤:対面で会う場合、指定した時間に確実にオフィスにいてもらわなければなりませんよね。でもリモートならパソコンの前にいてもらえばいいだけなので、先方も気が楽みたいです。

これまで、忙しそうな人相手だと「アポイントが取りにくいかも……」と勝手に判断して諦めてしまうこともあって。でも今回リモートで打診してみたら、すんなりアポがとれるので「案外アポって取れるものなんだな」と気付けました。

リモートランチ会、上司の常時接続タイム……“孤独問題”は工夫で乗り切る

コロナショック

――他にリモートワークをする中で気付いたことはありますか?

近藤:リモートワークをするために大切なことは、仕事をする上での本質的な部分にあるんじゃないかな、というのは考えるようになりましたね。

そもそも「自分の仕事に使命感や誇りを持っているか」「この仕事がめちゃくちゃ好きで、打ち込めるのか」とか。その答えによって成果は変わるんじゃないかと思いました。

――なぜそれを考えるようになったのでしょうか?

近藤:リモートワークって誰にも見られていないし、だらけてサボることだって容易です。でも本当に好きでやっている仕事や、この仕事は自分がやるんだって気持ちがあるなら、場所なんて関係なく目の前の仕事に取り組めると思うんですよね。

――なるほど。でもいくら好きな仕事でも、ずっと一人で集中し続けるのって大変じゃないですか?

近藤:いや、決して「一人で集中して頑張ろう」ってわけではないです。私も社内の人とチャットでちょっとした雑談をしたり、退勤後に「Zoom飲み」したりして、気分転換しているのでバランスが保てている部分もありますし。私自身これまで「業務中に雑談とかなくても大丈夫なのでは?」って思っていたんですけど、意外とそんなことはなかったです(笑)

――リモートワークって、特に一人暮らしだと孤独ですよね。狭い部屋で閉塞感もありますし……。

松浦:私も一人暮らしなので、その気持ちがよく分かります。 寂しいですよね……。私は先輩と「リモートランチ会」を行ったり、自粛生活の不安や日常の雑談、ちょっとした仕事の進捗状況などを聞いてもらったりしています。最近は社内で「ランニング部」も発足して、みんな工夫しながら気分転換している印象ですね。

――田中さんはメンバーに一人暮らしの若手の方もいると思いますが、いかがですか?

田中:僕は若手メンバーをマネジメントする側でもあるので、みんなが話しかけやすいように「一日のうち14時~15時の間はこの部屋(オンライン上)にいるから、声掛けていいよ」という「常時接続タイム」をつくっています。その間にちょっとした相談とか、雑談をしていて。意識的にコミュニケーションを増やすようにはしています。

――常時接続タイム! ありがたい取り組みですね。

田中:あと私自身が、完全リモートになって、入ってくる情報量が減ったと感じていて。オフィスに週数回でも出勤していた頃は、移動することで、自然と電車や道で目にする広告、すれ違う人の会話などから情報が入ってきていたんだなと。

だからいまはコミュニケーションの他に読書の時間も意識的に増やして、インプットを増やすようになりました。

――仕事でアイデアが出づらいなと感じている人は、インプットが減っていることも原因の一つなのかもしれませんね……!

「やってみたい」のタネは、オンラインでの会話に潜んでいる?

――リモートワークって、そもそも若手に向いている働き方だと思いますか? というのも、周りに気軽に相談しづらいですし、経験の浅い若手は‟出社スタイル”の方が合っているような気もして……。

近藤:たしかに出社していればすぐ周りの先輩に聞けるのはいいですよね。でもいまってこんな状況ですし、変化には嫌でも順応しなければならないというか。厳しいけれど「リモートワークは向いていないからやりません」ってわけにもいかないですし……。

私も今回急にリモートワークに移行しましたが、いろいろな新しい気付きもあったし、意外とすぐ慣れることもできました。全世代が苦労していると思いますけど、私はまだ経験が浅く固定観念が少ない20代の若手こそ、柔軟に対応していきやすいと思うんですよね。

松浦:私は、タイムスケジュールとコミュニケーションを怠らなければ、若手でもリモートワークはできると思います。予定通りにタスクを終わらせるよう気を付けていくうちに、慣れることはできそうだし、自律して仕事ができるようにもなれるんじゃないかなと。

もちろん私自身もいきなり全てが上手くいっているわけではなくて、周りにスケジュールや進捗状況を細かく共有するなどの工夫を重ねることで、何とかできているところも。そのバランスは、全世代を通して模索中だと思うので、いろんな方法を試してみたらいいのかなと思っています。

田中:僕も含めて上司側ですら急なリモートワークに対応するだけでいっぱいいっぱいだから、経験の浅い若手には難しいこともあるかもしれません。中には「あ、あの人いま手が空いているから仕事を振ろう」と、若手を気遣う余裕がないマネジャーもいると思うんです。だからいまの若手は、それも頭にいれた上で自分から積極的に仕事を取りにいけるといいと思います。

――とはいえ、正直いまは慣れるのに精いっぱいで、がんがん仕事を取りにいくのも疲れちゃうというか……。

田中:そうですね、難しい場面もあるかもしれない。でも例えば松浦さんのように、積極的に上司や先輩とコミュニケーションを取っていたら、オンライン上の何気ない会話の中から仕事を見つけることもできるのではと思います。

もし自分で仕事を取りにいけないなら、どういう仕事なら自発的にやれそうか、自分のビジョンや仕事の信念をしっかり整理することが大切かなと。先ほど近藤さんが仰ったみたいに「なぜこの仕事をするのか」を考えるいい機会だとも思うんですよね。

近藤:「なんで自分がこんな仕事しているんだろう」って思った瞬間に、リモートだと集中できなくなると思うんですよね。だから私自身も、いまは「自分でやりたい仕事のボールを拾いにいけるかどうか」を意識したいと思っています。

――なるほど。リモートで集中できずに困っている人は、たとえ目の前の仕事がやりたいことじゃなかったとしても、ひとまず「この仕事にはどんな目的があるのか」を考えるだけでも仕事への向き合い方が変わりそうですね。

田中:若いうちって「私はこれをやりたい」ってなかなか持ちづらいですけどね。でも私がこれまで見てきた経験からいうと、若手が信念・ビジョンを持って働けるようになるとすごく伸びるんですよ。小さなことでもいいから「これを叶えていきたい」とか「やってみたい」のタネがないか、探してみるといいんじゃないでしょうか。

――上司とのミーティングに限らず、雑談中にもそういうタネは落ちていそうですね。そのためにもまずは「見える化」「コミュニケーション」の部分を意識していきたいと思います。3人とも、ありがとうございました!

取材・文/石川 香苗子 企画・編集/大室倫子(編集部)


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