キャリア Vol.885

自由すぎるゲイバー店員・カマたくの“This is me”な生き方「人生なんて全部後付け。テキトーに今を生きる方が幸せよ」

“イイ20代の過ごし方”って何だ?
30代を迎えるとき、かっこよく、自分らしく働いていられるかどうかは、20代の過ごし方次第。だから聞いてみたい。つい憧れてしまう、イキイキと働く先輩たちに。「イイ20代の過ごし方って、何ですか?」

Twitterフォロワー数は約90万人。日常に溢れる「イライラ」を切れ味鋭いトークでぶった斬る動画の数々がバズり続ける、ゲイバー店員のカマたくさん(31歳)

中1から16年間売春をしていたという壮絶な経歴も、本人は気にする素振りは一切なし。世間の目も他人が決めたルールもオールスルー。その“This is me”な生き方に、今、多くの憧れと共感が集まっている。

こんな窮屈な時代だからこそ、カマたくさんのように自由に生きてみたい20’sも多いはず。そこで彼に「カッコいい30代になるためには、どんな20代を過ごしたらいいんですか?」と聞いてみた。

カッコいい30代のなり方なんて、私に聞く時点で人選ミスよ

カッコいい30代になるためにどうしたらいいかって、そんなの私に聞かないでよ〜。だいたい逆に聞くけど、カッコいい大人って何? っていう話じゃない?

私が思うカッコいい大人は、うーん、なんだろう、余裕がある人? いろんなことに余裕があって、落ち着いている人はカッコいいなと思うけど、自分がそうなれるかと言ったら話は別よね。というか、どうあがいたってなれっこないわよ。

そんな余裕がある人は、私みたいにしょうもない動画を絶対に撮らないし。私なんて死ぬまで一生悪口言い続けているタイプだから(笑)、余裕がある人なんて生まれ変わりでもしない限り無理。そもそもそんな人、カッコいいとは思うけど、自分がなりたいとも思わないわ。

基本的に、それぞれがイメージするカッコいい大人なんて、ないものねだりみたいなところが大きいんだから、憧れるだけ不毛って話。そんなこといちいち考えてないで、目の前のことをやってなさいよ。

って、これで終わったらさすがに話にならないわよね。せめて私自身の20代の頃のことを中心に話してみるけど、何の役にも立たないと思うから、テキトーに聞き流していいですからね。

そもそも私は中学1年のときにDVの父親に売春をさせられて。そこからDVの解決策として父親にお金を渡すために、自分から身体を売るようになったのね。そこから16年間、なんだかんだ売春は続けてたわ。

この話をすると、大抵の人は驚くか同情したような顔をするんだけど、私は特に何とも思っていないのよね。ツイキャスで動画配信をやっていた頃からよくネタにしていたんだけど、それも大々的に告白しようとしていたわけじゃなくて。

配信を聞いてくれる人から「今まで何してたの?」って聞かれたから「ええっと、まず売春でしょ?」って答えただけ。私にとっては「高校のときテニス部でした」と同じぐらいの感覚よ。

コンビニバイトも風俗も、お金を稼ぐ手段という意味では同じ。効率がいいから売春をやっていただけで、それ以上でも以下でもないの。

カマたく

カマたくさんTwitterより

私、昔から本当にやりたいことって特に何もなくて。高校卒業したあとにアニメの専門学校に行ったんだけど、それも特にやりたいことがなかったからエンピツ転がして決めただけなのよね。

だから、たまに「やりたいことを見つけなきゃ」って言っている人を見ると、そこにこだわらなくてもよくない? とは思う。

だって、やりたいこととか好きなことなんて無理矢理見つけるものでもないでしょ? 好きなことと向いてることが一緒ってことも少ないし。とりあえず目の前のことやってみて、それがたまたま向いてるかもと思えるものならラッキーぐらいでいいんじゃない? ダメ?

私なんて今までの人生、自分からやりたいと思って選んだものなんてほとんどないわよ。専門を卒業して最初に焼き鳥屋さんに就職したんだけど、それもたまたま誘われたからだし。ツイキャスで動画配信を始めたのも、友達から勧められたからやってみただけ。本当、ゆるい感じでこれまで生きてきたから。

それでもなんとかなってるんだし、深く考えなくても大丈夫よ。

人生なんて全部後付け。そう割り切った方が気楽でしょ?

唯一考えていたことがあったとしたら、30になるまでには自分の人生を決めなきゃいけないなという意識は漠然とあって。20代はそのためにやれることは全部やっておこうって感じだった。

カマたく

いつか自分の店を持ちたいな〜という気持ちはあったから、ツイキャスをしていればその基盤づくりになるんじゃないかと思って。始めたのが25歳ぐらいの頃だったんだけど、あの辺りが私のターニングポイントと言えばそうなるのかしらね。

そりゃ忙しかったわよ。当時は焼き鳥屋を辞めて、建築会社で施工管理の仕事をしていたんだけど、昼、仕事をして、夜は配信をやって、風俗もやって。まあ寝る時間はなかったわね。今考えれば、よく生きてこられたわ。

でも、当時、それを努力だと思っていたかと言えば、そうでもない気がするのよ。何をすれば正解なんて誰にも分からないから、とりあえずこれをやっておけば何とかなるだろうと思えるものをひたすらやっていたって感じ。いい感じにまとめれば、そうやって積み重ねたものが30代になって花開いたとも言えるわね。

でも覚えておきなさい。こうやって私が言ってることなんて、全部後付けよ。というか、世に出た人が得意げに自分のこれまでを語ったりするけど、ああいうのはほぼ後付け。

だって、私と同じぐらいの世代で、私と同じように昼職をやりながら風俗をやっていた人なんて他にもたくさんいるだろうけど、みんなそれぞれまったく別の人生でしょ? これをやったら必ずこうなりますなんてものはないの。

人生どうなるかなんて誰にも分からないんだから、全部後付け。そう割り切っていた方が気楽じゃない?

自分をちょっとでも良く見せたいなんて、お高くな〜い?(笑)

ただ、唯一はっきり言えることがあるとしたら、30代になるとガクッと体力が落ちるわ。

私も自分が17〜18歳のとき、30代の先輩たちが「30過ぎると寝ても疲れがとれない」なんて話をしているのを聞いて、「いやいや、若くても疲れますよ」なんてこと言ってたけど、全然一緒じゃなかったわ(笑)

30過ぎてからの体力の衰え具合はとんでもない。これはもう経験してみないと分からないことだから、今ここで何を言っても無駄だと思うけど、とりあえず体力があるうちにできることは何でもやっておいた方がいいことだけは間違いないわ。

カマたく

「最近ほんとに疲れが取れないのよ」(画像はカマたくさんTwitterより)

まあ、こんな風にあれこれ言ってるけど、正直、私自身、他人から何か言われるの、めちゃくちゃ面倒くさいのよね。

よく「どこから目線なの?」ってこと言ってくる人いるけど、本当にどうでもいいから何も覚えてない。記憶にすら残らないわ。メモリーがもったいないじゃない? だから保存さえしない。そのままスルーに限るわ。

たぶんそこでモヤモヤしている人って真面目すぎるのよね。もっとみんなテキトーに生きればいいんじゃない? って思う。

私の周りにいる幸せそうな人の共通点は、テキトーよ。時間は守らないわ、言ったことを忘れるわ大事な会議にサンダルで来るわ、本当クソみたいな人ばかり。でもそれぐらいでいいのよ。押さえるべきところをちゃんと押さえていれば。

まあ、真面目な人にいきなりテキトーになれって言っても無理な話よね。ただもっと開き直ってみてもいいとは思う。私、子どもの頃から女の子っぽかったから、それで何か言ってくる人もいたはいたけど、「女の子みたいに見えますかそうですか」って、それだけ。

だって、ガタガタ言ってくる人のために自分の生き方を変えるのもおかしな話じゃない? だから開き直るのが一番。

生きづらそうにしている人って、だいたい開き直れないのよ。だから開き直っちゃえばって言うんだけど、そしたら「できない」って言うの。そんなの、こっちがなんで?って話。

プライドがあるんですかね? え~、いらな~い、そんなの。自分をちょっとでも良く見せたいわけ? そんなの、お高くな〜い?(笑)

私から言わせると、強欲よね。全部手に入れようとしやがるなんて、自己評価めっちゃ高くない? 逆に自分に自信があってすごいと思う。まあ、それならそういう自分のままで生きていけば? って思うけど。

どうせみんな年をとっていくんだから、あれこれ悩んでマイナスに陥るのはやめなさい

今の世の中、すぐに他人と比べたがるでしょ? 例えば自分の方が真面目に働いているのに、あの子の方が労働時間も短くて給料も高いってキーッてなる人いるわよね。

その気持ちも分かるけど、だったらそっちに転職すれば?っていう話だし。でもそれができないっていうことは、今の自分の仕事にお金以外の別の価値を感じているからで。なら、それでよくない?って思う。

心を満たしてくれるものはお金だけじゃないし、あなたにはきっと他にもっと大切なものが手に入っているわけだから、それで十分幸せよ。相手のことを妬むなら、せめて同じ土俵に立って物を言わないと。それができないなら、人を羨むのなんて意味のないことだから、さっさとやめた方が精神衛生的にもいいわ。

とにかくみんな、あらゆることに悩みすぎだし考えすぎなのよ。

最初の話に戻るけど、カッコいい30代になりたいなんて言っても、カッコいいの定義なんて人それぞれなんだから、焦ったってしょうがないわ。どうせ気付いたらみんな同じように年をとっていくんだから、あれこれ悩んでマイナスに陥るのはやめなさい。

みんなもっとざっくり生きればいいのよ。無理に頑張らなくても死なないんだから大丈夫。何が起きたって最終的には何とかなると思って、テキトーに生きた方が人生は幸せ。それが、私が一番言いたいアドバイスね。

取材・文/横川良明 企画/大室倫子(編集部)

Information:カマたくの初エッセイ本、好評発売中!

カマたく

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