キャリア Vol.908

【独占取材】本田圭佑が語る、日本で挑戦者が生まれないたった一つの理由「夢を叶えたい人が失敗していい社会つくりたい」

現役のプロサッカー選手でありながら、経営者、投資家の顔も持つ本田圭佑さん。彼の現在の肩書きは「挑戦者」。サッカーやビジネスを通じ、「夢を叶えたい人」たちの支援に取り組んでいる。

本田圭佑
オンライン撮影/蜷川実花

そんな本田さんが、健康管理アプリのFiNCテクノロジーズ創業者の溝口勇児さん、ネスレ日本前社長の高岡浩三さんとタッグを組み、国内スタートアップに投資する『WEIN挑戦者FUND』を今年5月に立ち上げた。

同ファンドでは、孤独や退屈、不安といった21世紀ならではの課題に挑む国内スタートアップに対して投資を行っていくという。具体的には、ヘルスケアや教育、SDGs(持続可能な開発)、地域振興やSNSなどのコミュニティー関連の事業を手掛ける企業への投資を視野に入れている。

本田さんはなぜ、「挑戦者の支援」へ乗り出したのか。『WEIN挑戦者FUND』立ち上げに込める思いと、今後支援していきたい企業や若手ビジネスパーソンの特徴について聞いた。

本田圭佑

今の日本では、挑戦者が生まれにくい

――本田さんは、約4年前から個人ファンドでスタートアップへの投資を始めていますよね。投資に力を入れてきた理由は何だったのでしょうか?

もともと、世界の貧困問題を解決したいという思いがあり、そうした課題解決に取り組むテクノロジー企業などに出資してきました。

今もその気持ちは変わらずあって、経済格差や教育格差を無くしていくことで、誰もが夢に向かって挑戦できる世界をつくりたいと思っています。

過去に投資してきた会社は、日本に限定すると47社。アメリカ・アジア・アフリカ・ヨーロッパでも少しだけ投資させてもらっているので、それらを入れたら80社近くになりますね。

――今回立ち上げた『WEIN挑戦者FUND』で取り組んでいきたいことは何ですか。

本田圭佑

まずは、日本から世界へと羽ばたいていくような挑戦者たちを増やすことですね。

日本では、グローバルを視野に入れて挑戦する人がアメリカなどと比較しても少ないと感じています。

――日本では、世界で活躍する起業家のような「挑戦者」が生まれにくいということでしょうか?

もちろん、日本にも素晴らしい起業家はたくさんいますし、挑戦しようとしている若者もたくさんいると思います。

ただ、僕が過去に投資家としてお会いした人たちを思い浮かべても、本気で世界を目指している人はほぼいませんでした

これは、起業家たちが悪いというわけではありません。グローバルを視野に入れて大きな挑戦ができる風土や、挑戦者たちを継続的にサポートするための仕組みがこの国にないことが問題だと思っています。

なので、そこを変えていきたいんです。

本田圭佑

――日本から世界に挑戦する人が少ない理由はなぜだと思われますか?

一番大きいのは、失敗が許容されにくい文化ではないでしょうか。それが、日本からイノベーションが生まれない悪循環を生んでしまっている気がします。

今の日本では、「失敗したら終わり」という考えが根強く、実際、失敗した後にリベンジするのが難しい。だから、起業家たちもスモールビジネスを手堅くやることばかり考えてしまうようになります。

さらに、彼らがたとえ成功しても、スモールビジネスゆえに大して利益が出ないとなれば、投資家も大きなリターンを得られませんから、出資を渋ることになってしまう。

――ご自身が投資活動を行う中で、そうした悪循環にジレンマを感じていたわけですね。

そうです。一方、アメリカのシリコンバレーを例に挙げると、そこでは失敗を許容する文化が成熟していると感じます。

だから、シリコンバレーの起業家たちは、リスクを取ってもスケールの大きな挑戦ができる。投資家も、グローバルにビジネスを展開する挑戦者が成功すれば、その分得られる報酬の規模も大きくなりますから、投資額を増やせるわけです。

こうした、挑戦者(起業家)と支援する側(投資家)のwin-winの関係が成立していると、イノベーションが生まれやすい。

――『WEIN挑戦者FUND』では、挑戦者と支援者の間にある「良い循環」を日本でつくっていきたいということですね。

はい。あとは、僕は投資家であるとともに、自分の会社も経営していますが、起業家が本当に大変なのは、会社を興した「その後」だと痛感していまして。出資金を何に使い、どうやって事業を成長させていくかを考えて実行していくのが何より難しいわけです。

なのに、僕はこれまで、スタートアップにお金を出資するだけで、その後は起業家たちのサポートがうまくできていませんでした。

だから今回は、挑戦へと一歩踏み出した人たちを継続的に支援していきたい。例えば、起業家たちが直面するであろう成長資金や人材不足などの問題を、『WEIN挑戦者FUND』が築くネットワークでサポートしていけたらと考えています。

応援したいのは“失敗を糧にできる人”

――本田さんは、ご自身が立ち上げた『WEIN挑戦者FUND』を通じて、21世紀ならではの課題解決に挑む挑戦者を支援していくとのこと。特にどんな人に投資していきたいと考えていますか?

一言でいうと、「失敗を糧にできる人」ですかね。

――優れたビジネスモデルを描いているとか、最新のテクノロジーを活用しているとか、そういうことではなく?

そうですね。それも大事ではありますが、それだけでは足りません。いくら良いアイデアがあっても、それをカタチにするための努力を続けることができなければ、夢は叶えられませんから。

――なるほど。では、「失敗を糧にできる人」というのは?

誰がどんな領域でビジネスを行っても、新しいことをやろうとすれば必ず失敗を経験します。そこで逆風にさらされて、誰もが“心が折れるような経験”をすることになる。

そんな中で夢を実現し、大きな成功を収められる人とは誰なのか。それは、失敗から逃げ出すのではなく、その失敗を糧にして、前進し続けることができる人だと僕は考えています。

――本田さんは、その人が「失敗を糧にできる人」かどうかは、どうやって見抜いているんですか?

本人としっかり話すことは絶対条件ですね。なぜその事業や仕事をやりたいと考えているのか、それに対してこれまでどんなアクションを取ってきたのか、そこでどんな失敗を経験して、どう立ちまわったのか、あれこれ聞いて判断しています。

失敗って、成功以上に価値があると思うんですよね。失敗をどう捉えて、そこから何を学んだのか。そういうところをいろいろとお話させていただくことが多いですね。

「夢を叶える人」には、必ず“良い仲間”がいる

――先ほど、「失敗を糧にできる力」が重要だというお話がありましたが、他に「夢を叶える人」に共通することは?

良い仲間を持っていることじゃないでしょうか。サッカーも経営も、一人じゃできないんで、僕はそう思うんです。

自分とタイプは違ってもいいから、尊敬できる人、一緒に目標や夢に向かって切磋琢磨できる人が身近にいるといい。

それが会社の同僚でも、友人でもいいんですが、そういう人たちが自分の周りに増えていくと、仕事がさらに楽しくなるし、結果的に成長すると思います。

――そういう人と巡り合うにはどうすれば?

行動あるのみですね。志が高い人に出会うのは、簡単なことじゃありません。受け身で待っていても、そういう人はあなたの前には現れない。

ただ、自分が行動を起こし始めると、自然とそういう人たちとのつながりが出来てくるんですよ。「何かが変われば」と待つのではなく、「何かを変えよう」と動く人のところに同じ志を持つ人たちが集まってくるんでしょうね。

――本田さんはプロサッカー選手、経営者、投資家……さまざまな顔を持っていらっしゃいますが、いずれも「夢」に向かう人を応援するという一貫した軸を持って、行動していらっしゃいますよね。

はい。「お金がない」「能力がない」そういう理由で夢を諦めてしまう人を無くしたいという思いはずっと一貫していますね。

さまざまなアプローチで、皆が楽しく努力が継続できて、夢に向かって挑戦できる世界をつくっていけたらと思います。そのために、自分から声を上げて、一緒に活動してくれる仲間を集めていますね。

――本田さんがそこまで「夢の応援」に一生懸命になれるのはなぜなんでしょう?

使命ですかね。やらない理由がない。僕には社会に対して少なからず影響力があるので、当然のことだと思っています。

プロフィール画像
プロフィール画像

WEIN挑戦者FUND 代表パートナー/Co-Founder 本⽥ 圭佑 サッカー選⼿として過去3回のワールドカップに出場し、各⼤会にてゴール・アシストを記録した世界で6⼈⽬のプレイヤーとなる。ビジネス⾯では現在、世界74カ所の地域で サッカースクール・クラブを運営。16年にはエンジェル投資を始め、現在50以上の スタートアップに投資している。18年には、世界的俳優ウィル・スミスとのベンチャー キャピタルファンド「ドリーマーズファンド」を発表

取材・文/栗原千明(編集部) 撮影/蜷川実花

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