キャリア Vol.909

「やりたいことが分からない20代」にすすめたい、“自分の検索キーワード”の整理とは?【リンクトイン村上×ビザスク端羽】

ニューノーマル時代の働き方を前進させるために、新たな学びを提供するオンラインイベント『Grooves Work Technology Summit』が7月28〜30日の3日間にわたって開催された。

1日目のSession04に登壇したのは、日本最大級のナレッジプラットフォーム『ビザスク』を手掛ける株式会社ビザスク代表の端羽英子さんと、ビジネス特化型SNS『LinkedIn』(以下リンクトイン)を日本で運営するリンクトイン・ジャパン代表の村上臣さんだ。

株式会社 ビザスク 代表取締役社長 端羽 英子さん

株式会社 ビザスク 代表取締役社長 端羽 英子さん
東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券にて企業ファイナンス、日本ロレアルにて予算立案・管理を経験し、MIT(マサチューセッツ工科大学)にてMBAを取得。ユニゾン・キャピタルにてPE投資を5年行った後、2012年3月に株式会社ビザスクを設立、13年『ビザスク』をローンチ、20年3月に東証マザーズ上場。

リンクトイン・ジャパン株式会社 日本代表 村上臣さん
学生時代にITベンチャーを起業後、ヤフーに買収される形で同社に入社。『Yahoo!モバイル』『Yahoo! ケータイ』などの開発に携わる。2012年4月、ヤフー執行役員兼CMO就任。17年にリンクトイン日本代表に就任

モデレーター:株式会社grooves 経営企画室 関雄太さん

個人が仕事経験で培った知見を登録し、1時間のビジネス相談「スポットコンサル」のアドバイザーとして、依頼者とマッチングするする『ビザスク』と、転職や複業相談などビジネスパーソンの交流を後押しする『リンクトイン』。どちらも、時代の変化に即してビジネスパーソンのキャリア形成を後押しするサービスだ。

今、大きな変革期を迎えている世の中で、20代のビジネスパーソンがどのようにキャリアを構築していくべきなのか。本記事では“キャリア形成のプロ”である二人のトークセッションから、「自分がやりたいことが明確化できていない」20代へのヒントを紹介する。

「自分が何者なのか」を言語化できるようになろう

――この数カ月で多くのビジネスパーソンの働き方に変化がありました。これからの時代、「働き方」や「キャリア」の考え方はどう変わっていきますか?

リンクトイン村上:「自分が何者かを語る」ことの重要性がより一層高まってくると思います。私が人材業界で働いていてよく思うのは、多くの人が「自分のことを語る」のに慣れていないということ。「転職したことがないから職務経歴書を書いたことがない」っていう人も多いですしね。

――「自分が何者かを語る」が、なぜ重要なのでしょう?

リンクトイン村上:主体的なキャリアをつくるために必要だからです。これまでは、会社に入社した時点で自分の意思ではなく、会社が考えたキャリアが用意されていました。でも、今はどんな会社でも存続が不確かな世の中。だから、自分を主語にして「自分はこれができる」「自分はこれがしたい」と考えることが求められます

ビザスク端羽:私も同意見です。転職活動などの特別なとき以外でも、自分の意思を語れるかどうかは大切になるでしょうね。

――とはいえ、「自分はこういう人間です」と話すのってなかなか機会もないですし、難しいですよね。

ビザスク端羽:特に日本は謙遜してしまう人も多いですよね。ビザスクでも、例えば半導体の業界で20年働いている人に「半導体に関する一般的なご意見を聞きたい」と言っても、「いやいや僕がアドバイザーなんて……。30年働いている人もいますから」と返す方もいるんですよ。

リンクトイン村上:それはあると思います。

ビザスク端羽:でも、自分では自覚していないだけで、社外から見ると重宝される人だったっていうことはよくある話です。だからこそ、自己発信をしながら自分の強みを見つけてほしいですね。

リンクトイン村上:発信して人の目に触れることで、自分の強みに気付けることってありますもんね。

ビザスク端羽:はい。社内だと似たようなことができる人がいるので気付きにくい。でも、別の場所で「特別な自分」になれることって誰もがあると思うんです。

リンクトイン村上:自分のどんな部分が評価されるかって、社外に出てみないと意外と分からないものです。それを確認する意味でも、発信することは非常に良い学びになるのではないかなと思います。

ビザスク端羽:今は、そういった機会をSNSで持つことができる時代ですし、できることから小さくトライしてみるのがおすすめです。

リンクトイン村上:僕もコラムを書いて発信することがあるんですけど、10時間かけて書いた記事より、ぱぱっと書いた記事の方が読まれることが多いんです。そういうことがある度に「え、人から評価されるポイントってそっちだったの?」って思いますもん(笑)

リンクトイン村上

ビザスク端羽:発信することで「人から見た私のニーズってここにあったんだ」って気付けるのは、すごくおもしろいですよね。

転職活動をしなくても「職務経歴書」は書くべき

――自分ができることや、やりたいことを言語化するって、簡単なことではないですよね。

ビザスク端羽:それなら、定期的に「自分自身」について紙に書いてみること、発信してみること。それをもとにフィードバックを受けてみることを、もっとライトにしてみるといいと思います。

リンクトイン村上:職務経歴書のようなものを書いてみるとイメージしやすいかもしれませんね。

ビザスク端羽:はい。職務経歴書って転職するときに書くものというイメージがあると思いますが、仕事を続ける上でも、メリットが多いんですよ。

――職務経歴書が、仕事を続ける上でも必要?

ビザスク端羽:はい、振り返りという意味でもそうですし、自分のスキルを言語化して他人からフィードバックをもらうことで、今後どうしていきたいのか考えるきっかけにもなりますから。

プロジェクトが終わったタイミングや、年度末など区切りのタイミングで自分のキャリアを見返し、常に更新することで、今の自分の「仕事の力」を高めることにも役立ちます。

「人から見える自分」を意識せよ

――自分の強みややりたいことを話すことの大切さは分かりました。 そこからどうすれば「私はこれが得意な人なんだ」と、周りの認知度を上げることができますか?

ビザスク端羽:これも自分のスキルの「他人からの見え方」を意識してみるといいですよね。ビザスクでやっている「スキルの棚卸→他人からの評価」を知る方法があるので、簡単に紹介させていただきますね。

<ビザスク流・スキルの棚卸→他人からの評価を知る方法>

1.2人1組のペアを組み、お互いに自己紹介をする
3〜5分程度で、自分のこれまでのキャリアを盛り込んで自己紹介。

2.お互いの自己紹介の中でキーワードだと思ったことを発表し、答え合わせをする
自己紹介をするときは、自分の中でなんとなくキーワードがあるはず。しかし自己紹介を聞いた人が拾ったキーワードと、自分の思っていたポイントが一致するとは限らない。その答え合わせをすることで、自分が伝えたかったことと他者が感じたことの差異が分かる。

3.ペアの人に、自分の他己紹介をしてもらう
次に、ペアの人から別の人に、他己紹介をしてもらう。そのときに、他己紹介をされた相手が、しっかり自分のキーワードを拾ってくれたかどうかを確認。誰かを挟むことでキーワードはより薄まっていくため、自分が伝えたいことがちゃんと伝わっているかを確認することができる。

リンクトイン村上

ビザスク端羽:こうやって自己紹介と他己紹介を繰り返すことで分かるのは、自分が思う自分と他者から見た自分には意外とズレがあるということです。それを受けて、自分が伝えたいことが伝わるように、自分のキーワードを研ぎ澄ませていくのがいいのではないでしょうか。

――なるほど。ちゃんと「自分が話したいこと」が相手に伝わっているかは大事ですよね。

リンクトイン村上:あと、これからは「人もインターネットで検索される時代」です。なので、どういう風に検索されたら自分が出てくるのかを意識することは大事ですね。自分を表すキーワードを、「探される身」として考えてみてください。

――探される身?

リンクトイン村上:自分がどんな人たちから、どんなキーワードで意識される存在なのかということにアンテナを張り巡らすんです。そこに寄せていけば、自分のポジショニングもつくれるでしょう。

もしくは、やりたい仕事やキャリアがあるのなら、求人サイトなどでどんなことが求められているのかを見て、自分からキーワードを作りにいくのもいいと思います。それを目指してスキルを磨いていくようにするなど、キーワード作りはキャリア構築にも役立つのではないでしょうか。

ビザスク端羽:そうですね、「検索される意識」というのは、実はすごく大切です。ビザスクでは以前、ユーザーに会員登録をしてもらうときに「あなたは何について話せますか」という質問を用意していました。そこで「インターネットのことを話せます」のようなビッグワードを取りにいく方が結構いたんですよ。

――検索する人はたくさんいそうだけど、ライバルも多そうですね……!

ビザスク端羽:そうなんです。Googleでキーワードを検索するのと一緒で、掛け合わせのキーワードは何なのか、検索にひっかかるキーワードを集めにいくイメージを持つことが大切ですね。

リンクトイン村上:本当に、SEOみたいなものですよね。SEOマーケティングのように、戦術的に良いキーワードを取りに行くべきだと思います。

ビザスク端羽:これは社外に関することに限らず、社内でも同じです。今はHRTechが流行っているので、社員のスキルをデータ化する企業も増えてきました。そのデータをもとに「こんなスキルがある人はいないかな?」と社内で検索されることも今後は想定されます。だから社内においても「自分のキーワードを持つ」という考えは大事になると思います。

20代は、目の前の仕事に取り組みながら「旗を立てる」ことも忘れずに

――自分のキーワードをつくることが今後のキャリア構築の鍵になることが分かりました。最後に、これから“良いキャリア”を歩みたいと考えている20代にメッセージをいただけますか?

ビザスク端羽:若手の方に関しては、まずはとにかく目の前の仕事を頑張ることに尽きると思います。目の前のことを頑張らずに悩んでいるより、目の前のことに一生懸命になっていた方が少なくとも前進できるはず。やりたいことが見つからないのであればなおさら、とにかく目の前の仕事をやる、というのが大切だなと思います。

リンクトイン村上:さらに加えるなら、目の前のことをやりながらも、「自分がやりたいことや方向性」を定期的に周りに伝えることも必要だと思います。やっぱり旗を立てないと、誰からも分かってもらえないので。

ビザスク端羽:そうですね、それはあると思います。

リンクトイン村上:「私がやりたいことは何か」を日頃から考えておいて、チャンスがあれば「私にはまだ早いかもしれないんですけど、やってみたいです」ぐらいのノリで言ってみる。そして、パスが回ってきたら、あとは全力で取りに行くだけ。目の前のことをこなすと同時に、やりたい仕事ができるように仕向けていくことも忘れないでほしいですね。

文/於ありさ 


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