「緊急時にこそ各社の価値観が見えてくる」元塚田農場副社長が考える“会社”の見極め方
新型コロナウイルスの感染拡大は、世界経済に甚大な影響を及ぼしている。そんな中で、「うちの会社って大丈夫なの?」「今、この会社に転職してもいいのかな?」と、「会社」を見極めたいと考えるようになった若手ビジネスパーソンもいるだろう。
では、この大転換期に、経営者たちは何を思っているのだろうか?
そして今改めて考えたい、「会社」とは一体何なのか?
そんな問いを、日本の飲食業界を盛り上げる “店舗運営”のプロであり、株式会社ミナデイン代表を務める大久保伸隆さんにぶつけてみた。
大久保さんから返ってきたのは、会社とは「人が交じり合うコミュニティーである」という回答。その理由を聞いてみると、若手が「会社」を見極める上で有効な一つのヒントが見えてきた。
信頼と尊重、愛着のある
“集いたくなる場づくり”を
僕が『塚田農場』を運営するエー・ピーカンパニーを退職し、東京・新橋に居酒屋『烏森百薬』をオープンしたのが2年前。同時に“社長”という立場になったので、経営者としてはまだまだ新米です。そんな僕なりに「会社とは何だろう?」と考えた時に浮かんだのは、「コミュニティー」という言葉でした。
コミュニティーとは、人が集う場のこと。なぜ集うのかというと、そこに共感できるカルチャーや理念、そして会いたい“人”がいるからです。僕自身も「店づくり=コミュニティーづくり」と考えて、毎日の仕事に向き合っています。他店の名物料理を仕入れて店内で作る品数を絞るなどして、店舗運営の効率化を徹底。そこから生まれるゆとりを、お客さんとのコミュニケーションに注ぐ方針で、人と人が交じり合う場にしようと試みてきました。
コロナ禍で通常営業ができなくなった時期にも、テイクアウトの受け取りに来てくださる常連さんたちが絶えなかったことは、非常にありがたかったですね。食べるだけが目的というより、“人”に会いに来てくださっているのだと改めて気付かせてくれました。
料理人が厨房にこもるのではなく、接客して会話を楽しむ。普段からそんな交流の場を心掛けていたからこそ、緊急事態宣言解除後にすぐに客足が戻り、売り上げが落ちなかったのだと誇りに感じています。
会社と社員の関係も、同じコミュニティーに属する一員のようにありたいと思っています。特に飲食店には食事を共にする「まかない」という習慣があるし、家族的な関係が生まれやすい。お酒の仕入れも、馴染みの業者さんに何を持ってくるかは任せていて、「ついでにちょっと寄りました」「自由に休んでいって」みたいなやりとりが日常風景になっています。アニメ『サザエさん』の「三河屋のサブちゃん」みたいなイメージ(笑)
店という場に集まるスタッフ、お客さん、仕入れ業者が垣根を超えて混じり合う。そんな“場の力”を持つ会社は、飲食店に限らずどんな状況でもタフに生き残れるのではないでしょうか。
実際、うちがコロナ禍で始めた「絶メシ」(存続の危機にある地方の名店の料理を再現し、売り上げを還元する特別企画)も、「飲食店として、僕らが世の中に届けられる価値って何だろう?」と考え、店に関わるみんなと足並みを揃えて実現できたものでした。
そんな関係のベースにあるのは、お互いに対する信頼や尊重の気持ち。うちの会社の名刺の裏は、会社名がなく個人名だけなんですよ。「ここでの仕事を通じて強みを磨いて、いずれは自分の名前で食っていけよ!」、そんな思いを込めて社員に渡しているつもりです。
前職のエー・ピーカンパニーで副社長を務めていた時も、近い気持ちは持っていましたが、独立した今は一層、自分たちがつくるコミュニティーへの愛着が強くなったと思います。
「どんなコミュニティーに入りたいか」で会社を見極めよう
会社選びにおいても、この「コミュニティー」というキーワードが鍵だと思います。自分たちの会社がどんなコミュニティーであるのか、ありたいのか。経営者の価値観や哲学は、より明確に求められるようになりました。
例えば就活生や、転職活動中の人はよく「自己分析をしなさい」と言われますが、正直それってかなり難しいですよね。でも、企業研究はそれほど難しいことではないので、じっくりとやった方がいいと思います。すべての業種がコロナという同じ危機を乗り越えようとしている今は、「その会社が何を大事にしているか」が浮き彫りになるタイミングですから。
真っ先に従業員を守った会社、斬新なアイディアで世の中を驚かせた会社、危機に対応する若手リーダーの活躍が目立った会社……緊急時に見えてくる個性は、その会社の価値観そのもの。自分はどんな価値観を持つコミュニティーに仲間入りしたいか? そんな視点で会社を選んでみるといいと思います。じっくり考えて見極めて、自分らしく働ける場所を探せるといいですね。
本記事掲載中!雑誌『type就活』
「なぜ働くのか」という本質的な問いを考えた上での就職を提案する就職情報誌『type就活』。就活生だけではなく、若手ビジネスパーソンにも学びの多い一冊です。
<豪華メンバーによるインタビュー多数掲載!>
・「会社」って、一体何だ? (柳井正/藤田晋/溝口勇児/ハヤカワ五味/大久保伸隆/龍崎翔子 他)
・新卒で会社に就職する意味 (田端信太郎 他)
・会社にとっての「新卒」とは (曽和利光 他)
・「個の力」って何ですか? (澤円/シオリーヌ)
RELATED POSTSあわせて読みたい
“仕事の引き合いが絶えない人”は何が違うのか/キープレーヤーズ高野秀敏氏
【ZEALS清水正大】“日本ぶち上げ計画”を企てる27歳の本気度「商材もアイデアもないのに飛び込み営業しまくりました」
産業医・大室正志流“断る/断らない仕事”のボーダーライン「“無駄な業務”を切り捨てる20代を、誰も助けようとは思わない」
「3年前まで普通の記憶力」だった“記憶力現役日本チャンプ”が伝授する、商品スペックの覚え方