株式会社グロービス グロービス・デジタル・プラットフォーム グロービス学び放題フレッシャーズ 事業責任者 寺内健朗さん内定者・新人教育のためのeラーニング『グロービス学び放題フレッシャーズ』事業責任者としてサービス設計やブランディングを担当
第二新卒採用でよく聞く「ポテンシャル」って何? 企業経営のプロに聞いてみた
社会人経験が3年目くらいまでの若手を採用する「第二新卒」市場では、コロナ禍でも“ポテンシャル”採用が重視されている。では、その「ポテンシャル」とは一体何なのだろう?
社会人向け教育を展開している株式会社グロービスで、内定者や新人教育関連の事業を手掛ける『グロービス学び放題フレッシャーズ』事業責任者の寺内健朗さんに聞いた。
若手社員に普遍的に求められる三つの「ポテンシャル」力
もともと「ポテンシャル」という言葉は、将来性や可能性、長期的に見て大きな成果を残してくれそうな潜在的な力、という意味で使われています。これまでの「ポテンシャル採用」では、それが学力や地頭、学習能力などを指していました。しかし近年、企業の描く「ポテンシャルの高い人材像」は多様化してきたように感じます。
「ポテンシャル」は、企業にマッチする人柄や価値観といった意味を含むようになり、その高低や良し悪しを競うものではなくなりつつあります。そもそも「将来の資質」について言及しているものなので、一朝一夕で簡単に身に付けられるものでもないのです。
企業ごとに「ポテンシャル」の捉え方が多様化した背景には、ビジネスの複雑化が挙げられます。IT技術の進歩により、いつでもどこでも仕事ができるようになりましたし、企業が提供するサービスや製品、商談のあり方も多岐にわたるようになりました。それに従って、各企業で働く人に必要な資質にも多様性が生まれたのです。
「ポテンシャルの高い人材像」は多様化しているとはいえ、「ポテンシャル」という言葉が本来意味する「長期的に見て大きな成果を残してくれそうな潜在的な力」には、どの会社にも当てはまる普遍的なものもあります。
まず一つ目は、論理的思考力。ビジネスが変化するスピードが増し、課題が複雑化する中で、課題の本質を捉え、論理的に考える力が不可欠だからです。
なぜその事象が課題と言えるのか、何が原因なのかを論理的に整理しながら仕事を進めることで、適切な解決方法を導き出すことができるはずです。
二つ目のコミュニケーション力は、一般的に「うまくしゃべれる力」や「どんな人ともすぐ仲良くなれるスキル」と一面的に捉えられがちですが、企業が重要視するコミュニケーション力は、違う意味も含みます。
例えば働き方や年齢、立場の異なる人たちと連携して成果を上げる「他者と協働する」ためのコミュニケーション力。仕事では、一人の力では解決できない問題を、周囲の多様な人たちと力を合わせて解決しなければなりません。そこで他者の感情を理解し、共感したり寄り添ったりしながらコミュニケーションを図ることで、協働する人たちのパワーを最大化して物事の解決に当たる必要があるのです。
そして三つ目は、変化・成長する力です。今後も、感染症や自然災害などの影響を受け、経済の急激な変化によるビジネスモデルの転換は次々と起こるでしょう。このとき、ビジネスパーソンとして常に学び続け、変化し成長する力がなければ、古いままで淘汰されてしまうことになります。
withコロナで求められる「自律・自走マインド」
三つの普遍的な力に加えて、withコロナ時代に新しく求められるようになったものもあります。それは、自律心と自走マインド。これは「困ったことがあったら、自発的に動いて解決する力」のこと。分からないことがあれば自分から聞きに行く、周りに協力を仰いでチームをつくるなど、自分で考えて動けるかどうかを指しています。
2020年入社の新卒の多くは、自宅でのフルリモートワークで社会人生活がスタートしました。「完全在宅勤務」を継続する企業は少ないと思いますが、今後も働き方のニュースタンダードとしてリモートワークは定着していくでしょう。既に一部の企業ではオフィスを縮小して、リモートワークを原則とする方針を打ち出しているところもあります。
在宅勤務の場合、隣の席に気軽に話せる同僚がいるわけでも、困っていることに気付いて助け舟を出してくれる先輩や上司がいるわけでもありません。企業側も、個々人の努力や仕事のプロセスをきめ細かく見て評価することができないため、成果主義にならざるを得ない状況です。そのときに重要なのが自律心と自走マインドなのです。
企業が社員を一日中リモートカメラで監視するということは、今のところ現実的ではありません。つまり仕事の進め方は、自分自身に任されることになります。すると自分を律して一日の過ごし方を決め、それに従って仕事を進めなければなりません。
実際に、今年の新卒からは「そもそも誰に何を聞いたらいいか分からない」「自宅で仕事をしているとだらけてしまう」という話をよく聞きました。そんなときに自分から助けを求めたり、自力で立て直したりする方法を探せることが、withコロナ時代の会社員に必須の力となります。
普遍的な三つの力、そしてリモートワーク化で求められるようになった自律・自走のマインド。これらを具体的な「ポテンシャル」の力として挙げましたが、実はもう一つ、最も重要なことがあります。それは、自分自身の内側にある「将来こうありたい」という価値観に目を向けることです。
自分の中にある「こうありたい」という価値観に目を向け、強く意識することで、おのずと進むべきキャリアビジョンが描かれ、その実現に必要な力を身に付けるために努力することができるでしょう。例え働く環境が整っていなくても、「自分のありたい姿」があれば、自ら動いて環境を変えることもできます。それはどんな時代であろうと、普遍的な自分だけの力となるはず。それこそが、今後企業が求める「ポテンシャル」の根幹になるのではないでしょうか。
Information
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取材・文/石川香苗子
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