株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」 』(プレジデント社) Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
新時代の“個の力”はどうつくる? 澤円が「ありたい自分がある人は強い」と語るワケ
学歴や会社名などの肩書きではなく、自分自身の「個の力」を磨けと言われるようになって久しい。しかし「個の力」とは一体何なのか、なぜ大切かを答えられる人は少ないだろう。その正体を探るべく、『個人力――やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)を上梓した澤円さんに聞いてみた。
自分の意志でしていると思っていたことの多くは「やらされている」こと
20’s typeを読んでいる皆さんに知っておいてほしいのは、新型コロナウイルスの影響もあってより一層、会社が個人を守れる時代ではなくなるということです。でも、それはチャンスでもある。なぜなら「会社員」としてではなく「個」として、自分で自分の人生を生きることを求められるからです。
そのときに大切なのが、学歴とか会社名を全部取り払った先にある「ありたい自分」とは何かということ。僕はこれを「Being」と呼んでいます。
僕は、子どもの頃から「他の人には、世界はどう見えているんだろう?」と考えてきました。そうやって自分を客観視してみると、僕は会社や学校、親、友達などいろいろな「外部」に囲まれていることが分かります。同時に、自分の意志でしていると思っていたことの多くは、その「外部」の影響を受けて「やらされている」ことに気付いたんです。
もちろん、学校の宿題も会社のタスクもやらなくていいわけではないけれど、そればかりになるとしんどいし、成功や失敗をすべて他人から評価されることになります。さらに言うと、失敗をしたとしてもそれを他人のせいにできてしまう。それでは「自分の人生を生きている」とは言えないのではないでしょうか。
それよりも、好き・挑戦・ワクワク感・安心……何でもいいので、自分の内側から出てくるものに正直であることが、僕の言う「個の力」の根っこ。そうやって自分に正直に生きることが、人生を楽しくし、成功につながる「個の力」なのだと考えています。
そう言うと、若いうちから「Being(ありたい自分)」を見つけるなんて難しい、という相談を受けることもあります。もし、どんなに考えても「やりたいことなんてない」と感じるなら、自分の好きなものや憧れの人を見つけて、「どんな要素に惹かれているのか」を分析してみることをおすすめします。
「あの人の、こういうところが良いな」という要素が、「ありたい自分」を紐解く鍵になるはず。時間はかかるかもしれませんが、Beingがあるのとないのでは、仕事の捉え方や人生の歩み方も大きく変わってくるでしょう。
他人の評価軸でなく「Being」から選択しよう
では「ありたい姿」が決まったら、それを軸にどう今後のキャリアを描いたらいいのか。会社に所属するならイメージしてほしいのが、自分がその会社の一員として、会社のビジョンや経営理念を、飲み会の席で友人にドヤ顔で語れるかどうかです。それが社名の自慢ではなく、自分が心から共感して出てくる言葉なのかを考えてみましょう。
また、会社員として働いていると「大手企業に入った方がいい」とか「給料が高いところに転職した方がいい」といった、他人の価値観や情報に踊らされそうになることがあります。でも、それはあくまで「外部」の声で、自分の気持ちとは関係がないことに気付いてほしいですね。
ただ難しいのは、知らず知らずのうちに、そういった価値観を持ってしまっているとき。それに気付くにはどうすればいいでしょうか。一つの方法は、メンタリングを受けることです。必ずしもキャリアカウンセラーのような専門家でなく、相手は友人でも同僚でも構いません。要は会話を通して「思考の壁打ち」をしてもらうのです。
壁打ちというのは、何かの答えを教えてもらうのではなく、自分の考えていることを相手にぶつけて、その反応で「言語化」の手伝いをしてもらうこと。自分の「Being」がどういうもので、だからこの会社に入りたいと思っている。そう話しているうちに、「ここが矛盾している」とか「この条件はそれほど重要でもないな」などと気付くことができます。
その過程で最も良くないのは、考えることを放棄してしまうことです。僕は、これまで多くの面接を担当しましたが、いわゆる面接対策だけしてきた人が「流暢にしゃべるけれど、何も考えていないな」というのは、すぐに分かってしまいます。「ありたい姿」を考えていない人は、面接官にとっても魅力的には映らないのです。
ここまで、偉そうなことを言ってしまいましたが、僕自身が20代の頃は、実は何も考えていませんでした(笑)。当時の僕は学生時代に内定をもらっていた企業を「このままだと人生楽しくなさそうだな」と直感で断り、何となく楽しそうだと感じた小さなIT会社に入ることにしたんです。
しかしラッキーなことに、その選択が大当たりで。結果的に今は幸せなビジネスライフを送ることができています。今振り返ると、あの時の選択は、直感的ではあるけれど「ありたい姿」に向かっていたのかなと思います。とりあえず安定している会社に、と自分の気持ちを無視して就職していたら、今ごろ後悔していたかもしれません。
キャリアのことを考えるとき、「こうした方が得」とか「どの会社に入るべき」など、自分の人生の「白黒」を他人の評価軸で付けてしまいがちです。でも、どの会社に入るかとか、そもそも会社員として働くかどうかも含めて、人生の選択肢は無限にあります。
だからこそ、「どうありたいか」を持っている人は強い。それはどんなことがあっても、今後のキャリアの支えになってくれるでしょうから。自分の「Being」を信じて、周りに流されず、他人と比べず、自分らしい人生を歩めたらいいですね。
Information
澤さんの新著『個人力 やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』
世界中にインパクトを与えた新型コロナウイルス(covid-19)。私たちの目の前の「働き方」が大きく姿を変え、企業もその大小を問わず大打撃を受けている。在宅勤務・リモートワークが主流となる社会では、これまで以上に「成果」が評価軸となり、「個」としての力量が問われていくことは間違いないだろう。
そんな世の中で充実して働くため、また活躍するために大切なのは、「どんな自分でありたいか」、その信念を軸にして行動することである。もっと“自己中”に、もっと“わがまま”に――。新しい時代の「働く力」を描き出す。
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