キャリア Vol.941

営業のプロに学ぶ、コロナ後の“残念なセールス”を脱する術「売れない営業は、信用と信頼の違いが分かっていない」

コロナ禍により、これまで“対面ありき”だった営業スタイルがオンライン中心にシフト。これまで上司や先輩から受け継がれてきた「営業ノウハウ」が通用しなくなり、悩んでいる人も多いのでは?

誰もが手探りで営業活動を続ける中で、「今の状況は、若手営業パーソンにとってはむしろチャンス」と話すのが、営業支援事業を手掛けるセレブリックスの今井晶也さんだ。今井さんはこれまで10年以上、300種類以上の商材を取り扱い、延べ100社超の営業代行を行ってきた“営業のプロ”だ。

そこで今回は、コロナ禍により変わった営業職を取り巻く環境と、そんな状況でも“売れる”人になるための方法について、話を聞いた。

株式会社セレブリックス 営業企画本部 / 本部長 セールスエバンジェリスト 今井晶也さん

株式会社セレブリックス 営業企画本部 / 本部長 セールスエバンジェリスト 今井晶也さん

2008年にセレブリックス入社。営業コンサルタント、プロジェクトリーダーとして延べ300以上の商材と100社超の営業代行プロジェクトに参画。14年からはコンサルティンググループの業務を兼務し、法人営業のバイブル『顧客開拓メソッド』を執筆・制作。現在はセールスモデルの研究・開発・講演、営業ノウハウコラム『Sales is』執筆なども行う。Twitter:@M_imai_CEREBRIX

コロナ禍でも変わらない
営業の本質は「信頼」づくり

コロナ禍で対面営業ができない時期が続き、最近では皆さんオンライン商談にも慣れてきたと思います。多くの方が感じていることだと思いますが、オンライン化によってそれまで当たり前だった「対面コミュニケーションを通じて人間関係を築く営業スタイル」が減ってきてしまいました。

つまり対面の時と比べ、人と打ち解けるのに時間が掛かるわけです。そんな状況にも関わらず、多くの営業パーソンがあの手この手でどうにか成果を出そうとする。不況の波も相まって、クライアントからは「不要不急の案件だ」とうんざりされてしまい、かえって売れない……なんてジレンマを抱える人も多くなってきている印象です。

では、こうした事態に陥ったときに何をすべきなのか。僕が必要だと思うのは「こんな時だからこそ、営業の本質を改めて見つめ直す」です。

営業の本質とは「この人なら信頼できる」「この人が言っているんだから買おう」とお客さまに感じてもらうこと。それは、対面だろうとオンラインやテキストのコミュニケーションだろうと変わらない事実です。実際に、クライアントに信頼されている営業パーソンはコロナ禍でも「全く成果が出ない」ということはありませんでした。

株式会社セレブリックス 営業企画本部 / 本部長 セールスエバンジェリスト 今井晶也さん

では、「信頼される」にはどうすればいいのか。まずは自分が「信用」と「信頼」を混同していないか、確かめてみましょう。

信用と信頼は、似て非なる言葉。「信用は過去にするもの、信頼は未来にするもの」と考えると分かりやすいのではないでしょうか。

クレジットカードを例に説明すると、利用実績に応じて付与されるのが「信用情報」。その内容に応じた利用枠が「信頼」だと考えてみてください。カードを利用して毎月きちんと支払いをしている、という過去の積み重ねがないと、利用枠という信頼は上がらないですよね。

これを営業の仕事に当てはめてみると、新規営業でテレアポをしても、その場では信用がないため、提案を聞いてもらえることはほとんどないでしょう。でもその後、何度かお客さまに役立つ情報を提供したり、継続的にアプローチしてみたりすることで、徐々に信用が積み重なり、初めて商談につながるというわけです。

それなのに、信用の積み上げを飛ばして、先に信頼を勝ち取ろうとするのは“残念な営業パーソン”が多くいます。

コロナ禍営業の鍵を握るのは「セールスコンテンツ」

では実際に、どうやって「信用」を積み上げていけばいいのか。以前であれば、「ちょくちょくクライアントのもとに顔を出そう」とか「継続的にテレアポしてつながっておこう」といった営業テクニックも使えました。しかし今は気軽に訪問もできませんし、「不要不急のアポには応じたくない」というクライアントが多くいます。

そこで僕がおすすめするのは「セールスコンテンツ」づくりです。お客さまにとって有益な情報を、メールでもいいですし、オンラインでも対面でもどんな手法でもいいので、「コンテンツ」をつくって共有する。そうやって有益なコンテンツをお客さまに提供することで、徐々に「コイツは信用できるな」と思ってもらうのです。

「コンテンツ」と言っても、立派なものをつくる必要はありません。例えば、競合他社での導入・活用事例の資料を作ったり、営業先にとって課題解決につながるような問題提起、課題解決のプロセスや方法を書いた資料を共有してみたりするイメージです。

それらを何パターンか作っておいて、クライアントに合わせて定期的に共有していきます。一度資料を作っておけば、クライアントによってカスタマイズするなどして横展開もできますし、オンライン会議の場でも視覚的に伝えることができるので役に立ちます。

株式会社セレブリックス 営業企画本部 / 本部長 セールスエバンジェリスト 今井晶也さん

セールスコンテンツに関する詳細は僕のnoteにも書いてあるのでぜひ読んでほしいのですが、この話をすると必ず「何から手をつけたらいいのか分からない」という質問が寄せられます。

その質問に対して僕は、「お客さまに言われて嫌だったことから解決していこう」とアドバイスしています。

例えば「今は検討できないですね」と言われたことに納得がいかなかったら、「今決断すべき」理由になるようなコンテンツをつくって提供する、といったイメージです。そうすれば、お客さまの不安や不満も解消するので、結果的に「信用を積み上げる」ことにもつながります。

さらに若手にアドバイスするとしたら、セールスコンテンツを利用する際には「ITツールを駆使する」意識を持つようにしてもらいたいです。

例えば、Sansanの名刺管理システムや、Googleアラートなどを使えば、営業先のニュースを素早くキャッチアップできます。そうすれば「こういう動きがある会社なら、このコンテンツが先方の役に立ちそうだ」など、絶妙なタイミングで信用をつくることができるでしょう。

その他にも今は便利なツールが世の中にはたくさんありますから、ぜひ自分に合ったものを探してみてほしいです。

上司も先輩も「答え」を持っていない今こそ、
自分のスタイルを確立するチャンス

先述した通り、今は上司や先輩も経験したことがない変化の時代です。今後どのような状況になっていくのか誰にも予想がつかないですし、クライアント側も含めた全ビジネスパーソンが不安を抱えているはず。誰も「答え」を持っていない、未曾有の事態なんですよね。

でも僕は、そんなご時世だからこそ「若い世代の営業パーソンが飛躍するチャンス」だと言いたい。自分なりのノウハウや新しい営業手法を見い出して成功事例をつくり、それを上司や先輩に提案してほしいと思います。

株式会社セレブリックス 営業企画本部 / 本部長 セールスエバンジェリスト 今井晶也さん

僕は以前からnoteで『シン・セールス理論』という、新時代の営業ノウハウや営業手法に関する情報を発信しています。セールスコンテンツの事例なども紹介しているので、ぜひ参考にしていただき、自分のスタイルを模索してみてください。

そうすれば、今回のような事態でも自分なりの“強い営業”の在り方を見い出していけるはずです。

繰り返しになりますが、今は若い世代の営業パーソンが率先して新しいノウハウや新しい営業手法を確立していけるチャンスです。今の状況に不安になったり、落ち込んだりするのではなく、ぜひ前向きにチャレンジしてみてほしいと思います。

取材・文/大室倫子

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今井さんによる徹底解説!より詳しく『シン・セールス』のノウハウが知りたい方はこちら>>New Normal 時代の営業メソッド【シン・セールス理論】~「この人から”今”買いたい!」を実現するセールスプロセスの再構築


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