キャリア Vol.972

真面目に頑張ってきた人ほど、焦りがち。コロナ禍で急増「残念なキャリア選択」回避するには?【ポジウィル金井芽衣】

副業やパラレルキャリア、移住など、コロナ禍でより一層広がった“働き方”の選択肢。前例がないこの状況に、「自分も何かした方がいいのかな……」と戸惑う声も聞こえてくる。

しかし、焦るからといって「周囲に流されてするキャリア選択は、“本人が納得できない結果”につながりがち」。そう指摘するのは、キャリアカウンセリングサービスを運営するポジウィル代表の金井芽衣さんだ。

金井さんはこれまでに、焦りや不安から“自分に合わないキャリア選択”をしてきた20代をたくさん見てきたと話す。

時代の変化に惑わされず、納得感のある働き方、生き方を選択していくためにはどうすればよいのだろうか。具体的な事例を交えて、話してもらった。

ポジウィル株式会社 代表取締役社長 金井芽衣さん
ポジウィル株式会社 代表取締役社長 金井芽衣さん
1990年群馬県生まれ。埼玉純真短期大学で保育士・幼稚園教諭の免許を取得した後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入。13年、リクルートキャリアに入社し、法人営業を経験。複数回MVPを獲得する。17年に国家資格キャリアコンサルタント登録。同年8月にポジウィル株式会社を設立し、同社代表取締役に就任

“THE優等生”こそキャリアに悩みがち

――ポジウィルでは、あらゆるキャリア相談が寄せられていると思います。コロナ前後で、相談内容に変化はあったのでしょうか。

まず、私たちのサービスを利用してくださる方は19年8月のサービス開始初月から、1年で30倍以上に伸びています。裏を返すと、それくらいキャリア不安を抱えている人が多いということでもあります。

また、コロナ禍で、漠然とした不安感が増している20代は非常に多いと感じますね。

新卒マーケットでは、ここしばらくの間売り手市場が続いていたと思うんです。MARCH以上の大学生であれば、比較的有名な大手企業から複数内定をもらえて、どこに行けばいいんだろう、という悩みを持つくらいには余裕がありました。けれど、コロナを経て、その状況は一変。いきなり企業を選ぶ側から選ばれる側になってしまい、不安がますます高まっている印象です。

――実際、どんな相談をされる方が多いのでしょうか。

「このまま今の会社にいてもいいのだろうか?」「自分の力を付けなければと思うけれど、何からすれば分からない」と仰る方が多いですね。

やはりどの業界も先行きが見通せない状況ですし、これからは会社が守ってくれるとは限らない、会社にぶら下がっているだけではダメだ、と危機感を持っているようです。

大手企業に在籍していても「自分は能力以上に給料を貰い過ぎているんじゃないだろうか」と相談しにくる20代の方もいるんですよ。

――シビアですね。転職相談も多いのでしょうか?

ポジウィル株式会社 代表取締役社長 金井芽衣さん

意外かもしれませんが、転職相談はさほど多くありません。私もこのサービスを始めるときは、転職の具体的な相談が多いのかと思っていたんですが、実際は「何となく不安」という方が一番多いんですよ。要は、転職以前の問題です。

何となく転職サイトに登録して、何となくいろいろな会社や働き方を見てはいるけど、何かが違う。どうもしっくりこない、という悩みですね。

「どうして不安なのか分からないけれど、何となく不安」という方が、その不安の要因を探し求めて弊社のサービスにたどり着く傾向があります。

特別年収が低いわけでもないし、大きなトラブルを抱えているわけでもない、満たされているように見える方が相談にいらっしゃるんですよ。

――他の人から見れば順風満帆のように見える人でも、悩みを抱えている、と。

そうなんです。実は、部活も勉強も真面目に頑張ってきたような、いわゆる“優等生”タイプがキャリアに悩みがちなんです。

というのも、そういう方はある程度、“敷かれたレールの上”を歩いてきたと思うんです。進学校に入って、良い大学に入って、何となく大手の会社を目指して就活をして……。

ただ、社会人になると、自分がどういうキャリアを歩むべきか、なんて誰も教えてくれないんですよね。正解がない。いきなり「あなたはどうしたいのか」と問われて、それが分からず不安に陥ってしまう。

女性の方であれば、結婚・出産などのライフステージの変化も視野にいれると、より一層「今、どうしていいか分からない」となってしまう人も多いです。

――これまで“いい子”でやってきた人ほど、キャリア選択で焦ってしまうんですね。

その傾向はあると思います。なぜなら、自分の意思で人生を決めることに慣れていないから。

例えば、以前ポジウィルのユーザーさんで、「大手というネームバリューに惹かれて就職したけれど上手くいかなかった」という方がいました。その方は某有名大学を卒業して、親御さんのご意向もあり大手企業に就職。個人宅を訪問する営業業務に就きましたが、実は対人恐怖症で、人と話すのが得意ではなかったようなんです。

結局、上司からは「なんでこんなこともできないんだ」と叱られる始末。結果的に、メンタルを病んでしまったんです。

――それは辛いですね……。

みんな“良い子”だからこそ、自分の特性ではなく、親の期待に応えたいと思ってしまうんだろうと思うんです。

その方は現在、マーケターとして元気にお仕事をされています。トレーニングで特性を分析したところ、対人業務ではなくエンジニアやマーケターに向いているということが分かったんです。

やはり、自分に向いていないことで頑張っても、良い結果は出ません。若い時の苦労は買ってでもしろ、とよく言いますが、ミスマッチの状況下で頑張ってもつらいだけ。「しなくていい苦労」をしないためにも、ネームバリューや常識にとらわれるのではなく、本質的に自分に合うものが何なのか、を見つめることが大事だと思います。

キャリアは「悩む」だけじゃなく「考えて」

ポジウィル株式会社 代表取締役社長 金井芽衣さん

――「自分に合わない選択」を避けるためには、具体的にどういったことに気を付ければいいのでしょうか。

まず「考えないで意思決定をする」というのは危険です。考える、というのは、漠然と不安に思うこととは違います。上手くいっていないことがあるなら、必ず原因があるはずですから、その原因を突き止めること。

例えば、何となく今の状態が嫌だからといってすぐに転職しようとか、移住や副業を始めよう、と思うのではなくて、何が嫌なのか? 何が上手くいかないのか? などと要素分解していくんです。

上司とそりが合わないのか、仕事の内容が面白くないのか、土日に休めないのが嫌なのか、刺激し合える同僚がいないのか――理由はいろいろありますよね。

一つ一つブレイクダウンしていくことで、自分が何に不満を持っているのかが、分かるはず。今の会社から逃げるように別の道を選んでしまうと、同じ失敗を繰り返してしまいがちです。

恋愛でもそういうことってありませんか? 似たような人と付き合って別れて、「今回もうまくいかなかった」みたいな(笑)。

――なるほど、分かりやすいです(笑)。ただ、自分のモヤモヤと向き合うのってなかなか面倒くさい作業ですよね。

はい、しんどいと思いますよ。でも、面倒だろうとそこから始めることをおすすめします。

例えばポジウィルのカウンセリングでは、人生に溜まった膿を出すことから始めるんです。

キャリアに不安を抱えている人って、両親との関係性とか幼少期の寂しかった記憶とか、割と深い部分で不安を抱えていて、それが要因で仕事や恋愛を拗らせてしまっているというケースが多いんです。見たくない部分ではあると思いますが、向き合うことでやっと変化できるんです。

「いつかどうにかなるだろう」と思いたい気持ちも分かりますが、時が解決してくれるわけではないんですよね。自分で大きなアクションを起こして、やっと変われる。いつかどこかで報われるだろう、と思っているのではなく、もう一つ踏ん張って、自分を見つめ直す努力をしてみてもいいと思います。

――しんどいけれど、何かを選択する前には自分としっかり向き合うべし、ということですね。

最初は大変でも、やってしまえば後が楽なんです。心の中にモヤモヤを溜め込んでいる方が、ずっと不健康ですから。心身ともにヘルシーな状態を保てるよう、「悩む」ではなく「考える」を大切にしてほしいです。

“ラッキー”は、自分の行動がつくり上げるもの

ポジウィル株式会社 代表取締役社長 金井芽衣さん

――20代は何かと忙しく、目の前のことに精一杯になりがちです。そのような中でちゃんと自分と向き合うためには、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか?

とにかく紙に書き出すことをおすすめします。自分が何にモヤモヤしているのか、ひたすら書き出してみるんです。

そうすると、“モヤモヤの核”みたいなものが分かってきます。漠然と「仕事が嫌だ」と思っていても、掘り下げてみると仕事内容自体は問題ではなくて、ただ今の上司と合わなかっただけ、みたいなことはよくあります(笑)。

悩む必要のあることと、悩んでも仕方のないことの区別がつけば、それだけで楽になりますし、具体的なアクションに進めますから。

――すごくシンプルですね。まずは一度自分に向き合って、仕分けをしてから行動する、と。

はい。あと皆さんにお伝えしたいのは、私が大好きな言葉でもある「プランド・ハップンスタンス(Planned Happenstance)」という考え方です。

“計画された偶発性”という意味で、日々、何となく起こるラッキーな出来事は、結局自分自身の毎日がつくり上げている、ということです。

私自身も、名前を書けば入るような短大からキャリアに興味を持って大学に編入して、縁があって人材関係の会社に入社しましたが、それらは全て自分が興味を持ったものに対して自ら行動していったからこそ実現できたことだと思っています。

20代は、そんな自分の毎日をつくり上げる“武器”を増やす時期でもあります。

もちろん先ほどお話した通り、「しなくていい苦労」をする必要はないと思います。でもそうでないことなら、20代のうちはとにかくたくさん行動して、自分に合った働き方を見つけてほしいですね。キャリアをつくっていく上で、持てる選択肢は多いに越したことはありませんから。

取材・文/太田冴

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