「自分の殻を破りたい」筧美和子が“新しい自分”探しを続ける理由
リアルバラエティ番組『テラスハウス』への出演をきっかけにブレイクし、現在は俳優業を中心に、タレントとして幅広く活躍する筧美和子さん、27歳。今回はそんな筧さんの「チャレンジ」について聞いてみた。
Instagram、Twitter、YouTubeの総フォロワー数はおよそ200万人と、自然体な姿が同世代の支持を集めている。
俳優としては、映画『犬猿』のルックスと愛嬌は良いけれどおバカな真子や、ドラマ『あなたの番です』でのドS看護師・桜木るりなど、インパクトの強い役柄を演じてきた。
そんな彼女が最新作の映画『幕が下りたら会いましょう』で挑んだのは、どこにでもいそうな“普通の女性”、尚だ。
※この記事は姉妹媒体『Woman type』より転載しています。
「尚が可哀想な人に見えてほしくない」
映画『幕が下りたら会いましょう』は、鳴かず飛ばずの劇団を主宰する姉の麻奈美(松井玲奈)が、妹の尚(筧美和子)の突然の死をきっかけに自分自身と向き合っていく物語だ。
演じる中で、麻奈美と尚の関係性はすごく意識しました。 家族や姉妹って、距離が近いからこその特別な姿があるように思っていて。完成した作品ではちゃんと麻奈美と尚が姉妹に見えて、うれしかったですね。
映画で主に描かれるのは尚がいなくなったあとの出来事で、尚の登場シーンは少ない。それでも見る人は尚はどのような人物で、姉・麻奈美にとってどのような存在なのか、周りの人を通じてイメージする。
想像から尚を理解するのは、演じた筧さんも一緒だった。
想像を膨らませながら、尚を探っていく。それは感覚的な作業でしたけど、監督と対話を重ねる中で共通認識のようなものを持てていたので、すっと役に入っていけたかなと思います。
印象に残っているのは、本読みで監督から言われた「尚が可哀想な人に見えてほしくない」という一言。
尚は若くして亡くなってしまうけれど、一人で立てるように、強く生きようとした人。根底には寂しさや孤独感があったけれど、それを押し殺して、家を出て東京で一人、がむしゃらに頑張っていたんじゃないかな。
特に家を出る前後で、尚の心情は大きく変わったと思うので、そこは意識して演じました。
監督と対話を重ねたから、ナチュラルに役に入れた
尚は等身大の女性。私たちの身近にいるような、“普通の人”だ。そんな女性を演じることこそが、筧さんにとっては新鮮だった。
私はこれまで癖があったりハイテンションだったりするキャラクターを演じる機会が多かったので、あまり強い味付けをしない役ができてうれしかったです。
シンプルな中での繊細な表現を目指しましたが、それはごまかしが効かないことでもあるので、緊張感がありましたね。
新しい役どころへのアプローチで心掛けたのは、疑問を残さないこと。「できることは全部やる」つもりで、監督から説明を受けるだけではなく、自ら質問を重ねた。
何か構えて臨んだというよりは、ナチュラルに役に入っていきました。自分の感覚に意識を向けることに神経を使う感じというか。
そんな演じ方ができたのは、監督としっかり話をする時間が持てたからこそ。安心感がありましたし、感謝しかないです。
監督も演者も、登場人物の心の機微を表現することにこだわったという本作。「完成した作品は、内容を知っているのにグッときて、いろいろと感じるものがありました」と筧さんはゆっくりと、丁寧に感想を話す。
映画全体から「見えないけれど伝わってくるもの」があった感じがして。心の動きをきちんと演じることで、見てくれた人の心に届けられるんだと改めて実感できました。
そして、私はこういう作品が好きなんだなと気付くことができました。
殻を破ろうともがくことは、新たな自分を探すこと
筧さんはドラマや映画、バラエティー番組に出演する他、昨年からはYouTubeを新たに始め、今年1月には本人プロデュースの雑誌『ZINE』を発売するなど、チャレンジを続けている。
『ZINE』では、自分で文章やイラストを書いて、ゼロからやりたいことを詰め込みました。身近な仲間たちと『ZINE』を作る中で、もっと自由でいいんだなって自然と思えて。
YouTubeもそうですが、「私が普段声を掛けてもらって出演するまでに、こんな工程があるんだ」と知ることができたのも貴重な機会でしたね。作り手側の皆さんの視点を体験できて、新しい発見が沢山ありました。
新しいことを始めるときに何を意識している? そう尋ねると「そうですね……」と、しばらく考えて、「しっかりと向き合うこと、ですかね」と答えてくれた。
私はいろいろなお仕事をやらせていただいていますが、「ちゃんとできるのかな」と不安になることはやっぱりあって。
慣れないことほど遠慮してしまいそうになるけれど、質問したり意見を言ったりと、現場ごとにきちんと向き合うように意識しています。
何かに向き合うことは、できないことやうまくいかないことに目を向けることでもある。つい目を背けたくなることもあるけれど、筧さんは「怖いからこそ向き合おうとするのかもしれないですね」とぽつり。
役への理解がないまま現場に入るのがすごく怖いんです。演技のお仕事以外でも、中途半端な気持ちでいると申し訳ないですし。
だからこそ向き合って、自分の殻を破っていきたいなと思っています。
目の前のことに真摯に取り組んで、自分の殻を破る。それは、自分の未知の一面を見つけることでもある。
殻を破ろうともがくことは、新たな自分を探すこと。そこには必ず発見があるんです。
だからどんなに小さなことだとしても、新しいことをやらなくなったらマズいなと思っています。
それぞれの作品や役との向き合い方は毎回違うからこそ「私にとっては全ての仕事がチャレンジ」と筧さんは穏やかに、笑顔で話す。
私たちの日々の仕事も、改めて向き合ってみたら新しい一面がきっとあるはず。小さなチャレンジを積み重ねることが、今よりもっと良い自分への第一歩になりそうだ。
<プロフィール>
筧美和子(かけい・みわこ)さん
1994年3月6日生まれ。東京都出身。リアリティ番組『テラスハウス』(フジテレビ)の出演で注目を集めて以降、モデルや俳優として幅広く活躍。ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ)、『これは経費で落ちません!』(NHK)などに出演。
■Instagram ■Twitter ■YouTube
取材・文/天野夏海 撮影/赤松洋太
作品紹介
『幕が下りたら会いましょう』
11月26日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開
出演:松井玲奈、筧美和子、しゅはまはるみ、日高七海、江野沢愛美、木口健太、大塚萌香(新人)、目次立樹、安倍乙、亀田侑樹、山中志歩、田中爽一郎、hibiki(lol-エルオーエル-)、篠原悠伸、大高洋子、里内伽奈、濱田のり子、藤田秀世、出口亜梨沙、丘みどり(友情出演)、袴田吉彦
監督:前田聖来
脚本:大野大輔、前田聖来
音楽:池永正二
主題歌:Jam Flavor「CRY〜戻りたい夜を〜」
エグゼクティヴ・プロデューサー:高木雅共 プロデューサー:猪野秀碧、岡田康弘、細見将志、田中佐知彦
企画:直井卓俊
製作・宣伝:エイベックス・エンタテインメント
制作協力:Ippo
配給:SPOTTED PRODUCTIONS (c)avex entertainment Inc
公式サイト:http://makuai-movie.com
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