【犬飼貴丈】“腐ってた過去の自分”変えた運命のダメ出し「やりたい仕事は待ってるだけじゃ舞い込まない」
『仮面ライダービルド』(2017年:テレビ朝日)で主役に抜擢され、子どもたちのヒーローを演じて一躍その名を広めた犬飼貴丈さん。
以降、NHKの朝ドラや大河ドラマ、映画など数多くの作品に出演し、ドラマイズム『サレタガワのブルー』(MBS/TBS他)では主演を務め、妻の不倫に追い詰められるサレ夫を見事に演じている。
また昨年にはYouTubeチャンネルを開設し、俳優・犬飼貴丈とはまた違った一面をストレートに見せ、話題を呼んだ。
一見すると、順調にキャリアを積んできたように見える犬飼さんだが、実は、過去には「仕事が全くなくて、腐っていた時期もあったんですよ」と打ち明ける。
くすぶっていた時期を脱し、「腐っていた自分」を変えられたきっかけとは何だったのだろうか。
この記事は姉妹媒体『Woman type』より転載しています。
“華々しい芸能界デビュー”が待っている、はずだった
18歳の時、「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募。犬飼さんはそこで、見事グランプリを獲得する。
「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」は、売れっ子俳優の登竜門。グランプリ獲得後は華々しい芸能界デビューが待っているかと思いきや、俳優の仕事が舞い込むことは2~3年なかった。
芸能界デビューが決まり、上京してからまずやったのが「事務所にいること」だったんです。毎日事務所に行って、デスクに座って仕事がくるのを待っていました。
受け身で仕事を待っていた日々を、今では「かなり投げやりになっていたと思う」と振り返る。
実績がないので、俳優の仕事がくることをただ待っていてもダメだったんですよね。言うまでもなく、そんな受け身の僕のところにチャンスは巡ってこなかった。
それどころか、仕事がこないのは、事務所のせいだとか、卑屈な気持ちばっかり膨らんで。そうやって悶々とした時間だけが過ぎていきました。
もう、このままじゃダメだ……。犬飼さんは遂に、事務所のスタッフに退所の意志があることを伝えた。しかし、そこで“ダメ出し”をしてくれるマネジャーと出会ったことが、彼の運命を変えることに。
「このまま仕事を続けていけないかもしれない」とマネジャーに初めて本音を話したら、本格デビューに向けてこれからどうしていくか、一緒に話しながら考えてくれたんです。
その時に僕に足りないところは何か、といったダメ出しもあったんですけど、今まで事務所で腐っていただけの僕にはそれもすごくうれしかった。
自分一人で考えていても気付けなかったことを言ってもらえて、「これで何かが変わるかも」っていう希望が湧きました。
仕事を辞めようか、とことん悩んだからこそ浮き彫りになった「俳優がやりたい」という強い気持ち。「こうしたい」という気持ちを臆せず発信したことが、強力なサポーターを得ることにつながった。
「俳優:犬飼貴丈」から「職業:犬飼貴丈」へ
そんな彼に、最大の転機が訪れる。それは人気俳優への登竜門と言われる仮面ライダーシリーズの2017年作品『仮面ライダービルド』のオーディションだった。
これが最後のチャンスだろうと感じていたので、「落ちたら、今度こそ本当に辞める」くらいの気持ちでオーディションに挑んだのを覚えています。
審査員をまっすぐ見つめ、「1年間、僕に任せてください!」と大きな声で宣言。背水の陣でこのラストチャンスに臨んだ。
結果は、前述の通りだ。遂に、 『仮面ライダービルド』(テレビ朝日)の主演に抜擢され、実績をつくった犬飼さん。すると、次々にオファーが舞い込むようになった。
そんな犬飼さんの最新主演ドラマ『サレタガワのブルー』が2021年7月に放送された。「既婚者役は初めて演じた」と犬飼さん。
キャラクターの「裏設定」を理解することで、リアルな人間像を表現することにこだわった。
暢は一見、妻に裏切られた「かわいそうな人」に見えると思うんです。でも、僕は台本を読んだ時点で、彼自身がちょっと偏った考え方をする人なのではないか、という印象を受けました。
だから監督に彼の裏設定を確認してみました。犬飼くんは暢ってどんな人だと思う? と意見も聞いてくださって、キャラクター像を一緒に掴んでいきました。
彼ならどういう感情表現をするのか、何が彼らしさなのか、自分なりに考えて演じたので、ぜひ期待して見てほしいです。
そう言って穏やかに微笑み、本作への自信をのぞかせた。
また、今では俳優の「その先」も見据えるようになったと打ち明ける犬飼さん。次に目指しているのは「俳優:犬飼貴丈」ではなく、「職業:犬飼貴丈」だという。
昨年YouTubeアカウントを開設したのですが、それも一つの足がかり。
今は、誰もがコンテンツなり、新しい価値を生み出して、発信できる時代だから、僕も人に「面白い」って思ってもらえるものや、誰かの心に寄り添えるものを、自分で作ってみようって思ったんです。
「続けなきゃ」より「続けたい」仕事を
職業:犬飼貴丈。“自分であること”“自分にしかできないこと”を職業とするために、大事なことは何か。答えは単純明快、「犬飼貴丈は、いい仕事をする」という実績をつくっていくことだ。
不遇の時代をブレイクスルーして、「やりたいことを仕事」ができるようになるまでの軌跡を思い返せば、とにかく「実績を残すこと」がなりたい自分に近づくための何よりの近道だと犬飼さんは知っている。
その上で、「この人と一緒に仕事ができてよかった、と言ってもらえる存在でいることも大事」と続ける。
人よりもちゃんと周りを見ておく。そして、その場で必要とされているけど、誰もやっていないことを、自分から率先してやるのが僕が仕事をするときのポリシー。
例えば、ずっと立っている人がいるなら「座りますか?」「椅子どうぞ」って声を掛けるとか。周囲の様子にちゃんと意識が払える人って、一緒に働いていて気持ちがいいと思うんですよね。
芸能界デビューを果たしてから、キャリアは既に10年目。 仕事に対する姿勢も、「随分変わった」と犬飼さん。
僕がここまで仕事を続けてこられたのは、やっぱり、この仕事が好きだから。
「辞めようか」って悩んだ時期はあったけど、それはただ、自分が受け身でチャンスを待っていたからだった。好きな仕事を、諦めなくて本当に良かったと今では思います。
でも、全ての人に「頑張って今の仕事を続けて」なんて言いたいとはこれっぽっちも思っていません。
「続けなきゃだめかな?」なんて感じている時点で、それは、自分の好きな仕事ではないのかもしれない。
僕は「この仕事辞めようか」ってとこまで考えて、悩み抜いたから「この仕事がやっぱりやりたい」って気づくことができました。
そうやって、悩んで、もがいて、試して、「やりたい仕事」って探すしかないんじゃないかな。
そうやって見つけた仕事で、長く楽しく働いていけたらいいですよね。
取材/大室倫子(編集部)文/キャベトンコ 編集/栗原千明(編集部) 撮影/赤松洋太
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