【上白石萌歌】苦手な仕事を避けてきた。「決めつけること」をやめて開けた新たな扉
10歳で第7回「東宝シンデレラ」オーディションの史上最年少グランプリを受賞して以降、俳優・声優・歌手など幅広いフィールドで活躍している上白石萌歌さん。
2月4日に公開される映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』では、日本語版吹替声優として主人公に抜擢された。
アニメの声優経験はある上白石さんだが、ハリウッド映画の吹替は初めて。どんなふうにこのビックチャレンジに向き合ったのだろうか。
※この記事は姉妹サイト『Woman type』より転載しています。
ゴーストとの対決シーン「汗をかくほど体力を使った」
世界的ブームを巻き起こした映画「ゴーストバスターズ」シリーズの30年後を描いた今作。
上白石さんが声を務めるフィービーは、ゴースト退治のメカニックを開発していた初代ゴーストバスターズの一人イゴン・スペングラー博士の孫だ。
12歳ながらどこか達観しているフィービーに「自分よりも精神年齢が上かもしれない」と微笑む。
フィービーはすごく大人びている子なんです。だから、少女性をそのまま出すのではなく、彼女の知的な部分を特に意識して演じました。
でも、フィービーには12歳らしいおじいちゃんっ子な一面もあって。その子どもらしい純粋な気持ちもあわせて表現したいと思いました。
フィービーは祖父譲りの「科学を愛する心」と「メカニック技術」で、次々に現れるゴーストたちに立ち向かっていく。ゴーストと対決するシーンでは「汗をかくくらい体力を使った」と上白石さんは言う。
普段は全身をフルに使って主観的にお芝居をしているけれど、吹替となると画面を見ながらなので客観的なお芝居をすることになるんです。
でも客観的なお芝居をそのまましてしまうと、わざとらしく“吹き込んでいる感”が出てしまう。そうならないために、役者の方の仕草や息遣い、口の動きなどを意識して。
自分の中にフィービーの見ている情景を引き寄せるように心掛けました。
アフレコを振り返りながら「難しかった……」と思わず本音をこぼす上白石さん。中でも特に苦労したのは「英語と日本語のニュアンスの違いをどう表現するか」という点だった。
作中でアメリカンジョークを言うシーンが何度もあったのですが、日本人には伝わりにくいものも多くてどう表現するか悩みました。
でも、一つ一つ試行錯誤を重ねてなんとか納得いく吹替ができた。この経験を経て、私自身の表現の幅も広がったように感じます。
チャレンジを阻むのは悪い想像力。先入観は捨てていく
映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』では、登場人物がそれぞれの信念を持って悪に立ち向かう様子が描かれている。上白石さんは「すごく勇気をもらえる作品」と胸を張る。
そんな彼女が、仕事をする上で大切にしている信念とは何なのか。
自分が関わる作品を誰よりも好きだ、って言えるようにすること。これが私の信念ですかね。
その作品に関連する知識を身につけるのに本をたくさん読んだり、演じる人物について突き詰めて考えたり、できる事前準備は全部して現場に行きます。
そうしているうちに、作品をどんどん好きになるし、自分の人間性まで磨かれていくのを感じで、すごく楽しいんです。
今作の吹替で事前に準備したことを聞くと、「とにかく何回も映像を見返した」と上白石さん。
フィービー演じるマッケナ(・グレイス)さんのお芝居をじっくり研究して、自分の心がシンクロするように、台本を読まなくてもセリフが言えるように準備しました。
この入念な事前準備が、本番の舞台に立つ自分に確かな自信を与えてくれる。また、新しいことにチャレンジするときに、先入観を持たないようにすることも上白石さんのポリシーだ。
難しい挑戦を前にして、失敗したらどうしようとか、無理かもしれないとか、いろいろ想像しちゃうことって誰しもあると思うんです。
でも、自分の先入観でどうせうまくいかないって考えてたら、いろんなチャンスを逃してしまう。だから、悪い想像力はいったん置いておいて、先入観を捨ててまずは挑戦してみる。
それで無理ならそこまでだし、やってみたら意外とうまくいくことだってあるかもしれない。
まずはとにかく、行動して知ることが大切だなって思います。
この“まずはやってみる”マインドこそ、上白石さんがAnother Actionを重ねられる秘訣だ。しかし、こうした考え方ができるようになったのは、最近のことだと上白石さんは明かす。
以前までの私は、自分に合わないと思っていた役や、苦手だと思っていたお芝居を避けていたんです。どうせうまくいかないって、自分で決めつけて。
でも、20代になり、ありがたいことにいろいろなお仕事のオファーをいただくようになって、思い切って何でも挑戦してみることにしたんです。
そうしたら、仕事が今までよりずっと楽しくなりました。思いもよらない扉が次々に開いて、新しい自分を発見することができて。
だから今も、「あなたに是非やってほしい」と声を掛けていただけたものは、好き嫌いとか向き不向きとか、まずは気にせずやってみたいと思っています。
同じく俳優として活躍する姉、上白石萌音さんの存在も、萌歌さんの仕事観に大きな影響を与えている。
姉とは、毎日のように仕事の話をしていますし、相談に乗ってもらっています。
姉と話す時間は心をフラットにすることができて、すごくありがたい。私がこの仕事を続けていく上で、本当に欠かせない存在です。
「新しい自分」に出会えるチャレンジがしたい
初めて挑んだハリウッド大作の吹替の仕事。脇を固めるプロの声優陣の偉大さを痛感し、「収穫できたものも多かった」と上白石さんは柔らかな笑顔を見せる。
中でも、アフレコに立ち会った音響演出からの「声は衣装みたいなもの」という言葉は、彼女の“芝居観”を変化させるものだった。
声は衣装みたいにいくらでも変えることができるし、印象をガラリと変えることができると気づきました。
実際、プロの声優の皆さんは声の表情一つで豊かに演じられていて、すごく勉強になりました。それは声のお仕事だけではなく、すべてのお芝居に通用するなって。
今後はもっと“声の表情”に意識を向けて、お芝居をしてみたいと思います。
最後に、これからチャレンジしてみたいことについて聞くと、予想外の回答が飛び出してきた。
アクションに挑戦してみたい。今回のように声のアクションだけじゃなくて、実際に自分もお芝居で体を動かしてみたいなって思っています。
まだやったことがない分野なので、そこで自分の新たな一面を知るのが楽しみです。
やったことのない未知の仕事も、先入観を捨ててまずは知りにいく。そして、自分から好きになりにいく。それが、上白石さんのスタイル。
彼女が次に開くのは一体どんな扉なのか、そこでどんな上白石萌歌を見せてくれるのか、今から楽しみだ。
<プロフィール>
上白石萌歌(かみしらいし・もか)さん
2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションにてグランプリを受賞し、2012年デビュー。2018年公開の映画「羊と鋼の森」で第42回日本アカデミー賞新人賞を受賞。主な出演作に、TVドラマ「義母と娘のブルース」(2018/TBS)、「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(2019/NTV)、「教場Ⅱ」(2021/フジテレビ)、映画『子供はわかってあげない』(2021)など。3月18日公開の映画『KAPPEI』ではヒロインを務め、4月からは連続テレビ小説「ちむどんどん」、TVドラマ「金田一少年の事件簿」(日本テレビ)に出演。■Twitter ■Instagram
取材・文/阿部裕華 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)
作品情報
映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』作品情報2月4日(金)より全国の映画館にて公開!
監督:ジェイソン・ライトマン(『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』)
脚本:ギル・キーナン/ジェイソン・ライトマン
製作:アイヴァン・ライトマン(『ゴーストバスターズ』『ゴーストバスターズ2』監督)
原題:Ghostbusters: Afterlife 配給:ソニー・ピクチャーズ
出演:フィービー:マッケナ・グレイス(上白石萌歌)
ポッドキャスト:ローガン・キム(高山みなみ)
キャリー:キャリー・クーン(朴璐美)
トレヴァー:フィン・ウルフハード(梶裕貴)
グルーバーソン:ポール・ラッド(木内秀信)
ラッキー:セレステ・オコナー(日笠陽子)
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