キャリア Vol.1002

「負けてる時こそ自分に矢印を向けろ」サッカー元日本代表・槙野智章が20代のトライ&エラーから学んだ“勝ち続ける”マインド

スポーツもビジネスも、勝ち続けるのは困難だ
ビジネスパーソンは、常に目標をクリアしていかなければならない。毎日厳しい仕事に立ち向かうその姿は、1試合の勝利のために練習を重ね、努力し続けるアスリートのよう。ビジネスの世界に通ずる「勝利の哲学」をさまざまなスポーツのプロフェッショナルたちに学ぶ!

10年間在籍したクラブを離れ、今年、新天地で新たな挑戦をスタートさせたサッカーJ1リーグ・ヴィッセル神戸の槙野智章選手。

18歳でプロ契約、23歳の頃にはドイツ1部(当時)のケルンに移籍し海外を経験。その後2012年から昨年まで所属していた浦和レッズでは、主軸として天皇杯やAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制し、2018年のワールドカップロシア大会では日本代表にも選ばれた。

その活躍はプレーのみに留まらず、持ち前の明るいキャラクターでピッチ内外を盛り上げてきた、サッカー界のスター選手だ。

ポジティブで底抜けに明るい性格。その言動が時に賛否両論を生むこともあったが、本業のサッカーに対してはとにかくストイックだ。34歳になった今も「まだまだ上手くなりたい」と日々サッカーと真摯に向き合っている。

そんな槙野選手が、プロサッカーという厳しい世界の中で第一線で活躍できているのはなぜなのか。「超ポジティブ」を地で行く男に、勝ち続ける自分でいるための秘訣を聞いた。

槙野智章

「楽しい」と思えなければ、それは挫折だ

今季でプロ17年目を迎えた槙野選手が、サッカーにおいて最も大切にしているのが、とにかく「楽しむ」ことだ。彼がこれまで実績を残すことができた秘訣は、この言葉に尽きると強く感じている。

「いろいろなチームでプレーして、その時々でさまざまなプレッシャーを感じることもありましたし、自分が思うようなプレーができない時期も経験しました。時には適正のポジションでプレーさせてもらえない歯がゆさを感じたことも。

そんな中で『楽しむ』のは、簡単なようで一番難しいこと。でも、それなくしては自分の実力や存在意義を発揮できないと痛感しているんです」

槙野智章

楽しむことの大切さを改めて考えるきっかけとなったのが、海外挑戦だった。

サンフレッチェ広島のレギュラーとして活躍していた23歳の冬、槙野選手はサッカーを始めた頃からの夢の一つだった海外でのプレーを選ぶ。

よりレベルの高いリーグで、世界のトップレベルを知りたい。厳しい環境に身を置くことで、自分をさらに成長させたかった。

しかし、ケルンで待ち受けていたのは、厳しい現実だ。

在籍していた2シーズン、トップチームで試合に出場したのはわずか8試合。先発は加入直後の1試合のみで、試合途中からの出場がほとんどだった。心が折れそうになりながらも、自分がやるべきことにフォーカスし続けた。

「昔から、僕の中での『挫折』の基準は、ミスをしたかどうかではなくて、楽しめたか楽しめてないか

いつも『今日もサッカーができる!』『ボールが蹴ることができるんだ』とワクワクしていたし、そういう環境に身を置いていることに幸せを感じていたはずなのに、ドイツでプレーしている時だけはその感覚を見失っていたんです。

サッカーが大好きで、だからプロになったはずなのに、なんだか楽しくないなって。そのせいで、自分らしさを失っているような気がしたんです」

ドイツでこのままプレーするのか、それともまたJリーグのクラブでプレーするのか。

最大限の実力が発揮でき、成長を見込める環境がどこなのかを見極めた末、槙野選手が選んだのは帰国の道だった。

「あのままヨーロッパに残って別の道を選んでいたら、違う景色を見ていたかもしれません。ただ、そのままドイツで突き進むよりも、一度日本に戻って自分を必要としてくれるクラブ、人のもとでプレーすることが最善だと考えました。

その選択がベストだったのかどうかは未だに分かりませんが、後悔はありません。それに、結果的にはこの後の自分のプレーを奮い立たせる要因の一つにもなったと思っています」

負けている時こそ「自分」に目を向けて

槙野智章

槙野選手がこれまでのサッカー人生で挙げた勝利は、「努力が報われる瞬間で、『自信』を与えてくれるもの」だという。しかし逆に、「敗戦が続いて、うまくいかない時期」こそが、いかに自分自身と向き合えるか1選手としての真価が問われるのだとも続けた。

「20代の若い頃は、感情の矢印を人に向けていました。負けたのはあれが悪い、監督がどうだ、なんて文句を言っていましたし。でもそれでは、チームの雰囲気やチームワークはよくならないし、何の解決にもならないんですよね」

矢印を自分の方に向けられるようになったのは、意外にもここ数年だという。2018年ワールドカップロシア大会での経験が一つの転機となった。

「W杯ではあまり試合に出られずプレーでは貢献できなかったけれど、プロとしての立ち振る舞いや、自分と向き合うことの大切さを改めて感じさせてもらいました。

1選手としては悔しく、辛い時期ではありましたが、試合に出ていなかったから気付いたことも多かった。長い目で自分のサッカー人生を見た時に、財産になったなと思いましたし、『負けている時こそ自分と向き合うべき』という、当時の経験が今も生きてると感じることも多いんですよ」

また、槙野選手といえば、日本サッカー界のムードメーカー、盛り上げ役のイメージも強いが、当の本人は盛り上げ役を率先しているという意識はないという。ただ、チームが同じ方向を向いて勝利を目指していくため、周りの士気を高める努力は惜しまない。

槙野智章

「『槙野は盛り上げ役だよね』とか『声を出すよね』とよく言ってもらえるんですが、別に無理してやっているわけではない。自分が黙って静かにしていることでチームが良くなるのであれば、その方がいいと思いますし(笑)

ただ、サッカーと言うスポーツは意思疎通がなければ成立しないし、伝えるべきことを伝えなければ試合の中でピンチを招くこともある。特に僕のポジションは、大声でチームメイトに伝えることも重要な仕事の一つ。そういう意味では、自分の役割をまっとうしているだけですね」

チームが同じ方向を向いて勝利を目指していく。そのために周りの士気を高める努力は惜しまない。どうすればチームが勝つか、いい練習ができるか――。常にそれらを考え、伝えるべきことは伝える。それは新天地・ヴィッセル神戸でプレーする今も変わらない。

強いパワーが生まれたのは、20代のトライ&エラーがあったからこそ

5月11日には35歳を迎えたベテラン。自身のプレーのみならず、いかに自分の経験をチームに還元していけるかも重要な任務の一つだ。

これまでの経験をどのように若手に伝え、育成していくか――。いずれ指導者の道へ進みたいと考えているからこそ、今は指導者目線で俯瞰してみることも多くなったという。

いずれは「若くして監督になりたいんですよ。Jリーグに新しい風を巻き起こしたい」と、セカンドキャリアの野望も抱く。

「でも、まずは悔いなく選手生活をまっとうしたいですね。今は既に、いつ辞めてもいいと感じるくらい充実した毎日を過ごせているし、全力でサッカーと向き合えていると思います。こう言えるようになったのも、若い頃にいろいろ考えながらやってきたからかも」

槙野智章

10代の頃から大きな夢にチャレンジし、挫折もパワーに変えてきた槙野選手。自身の過去のさまざまな経験を踏まえた上で、20代のビジネスパーソンにもメッセージを送ってくれた。

夢は持てるだけ持った方がいいし、やりたいことはいっぱいあった方がいい。そして、チャレンジできるのであれば、たくさんトライしてほしい。

僕も20代に、いろいろなトライをして、挫折して、やっと自分自身を見つめられるようになりましたから。

その中で自分がやりたいこと、楽しいこと、向いていることが見つけられるだろうし、何かを掴めるんじゃないかなと思うんです。それができれば、きっと自分の未来は変わる、変えられるはず。そうやって自分が『楽しい』と思える瞬間を積み重ねていけるといいんじゃないでしょうか」

取材・文/モリエミサキ 写真/(C)VISSEL KOBE


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