【記事執筆者】 株式会社グローアップマーケティング 代表取締役 谷本 理恵子中小メーカーの通販部門の運営責任者を経て、合格率1%といわれる「ダイレクト出版認定セールスライター」となり独立。主に、30代以上の女性をターゲットとする化粧品や健康食品のネット通販で、「無理なくリピート購入されるメール」や「チラシ」などの制作を通して、売上2倍・利益5倍など高い実績を出す。「女性特有の購買心理」を活用した効果的な文章やデザインのコツを、セミナーや講演、社内研修などで伝えている。主な著書に『ネットで「女性」に売る』(エムディエヌコーポレーション)『女性に「即決」される文章の作り方』(ぱる出版)『プリンセス・マーケティング』(エムディエヌコーポレーション)がある。現在は、オンライン学習プラットフォーム『Udemy』でセールスコピーライティングなどの講座を持ち、人気を博す
伝わらない文章を書いてしまう人が陥りがちな罠とは? 「準備」と「書く」9:1の法則
「どうすれば、もっと売れるようになるんだろう」
「うちの商品やサービスをもっと知ってもらうには、どうしたらいいんだろう」
……商品・サービスのセールスにつながる「売れる文章」を書きたいと思ったときに、何から始めるのが効果的だと思いますか?
残念ながら、多くの人は「どこから手をつけていいのか分からない」状態のまま、パッと目についた「これさえあれば!」という魔法のようなツールやテンプレートに飛びついたり、「誰かに丸投げできないか」と考えたりしがちです。
けれど、何が問題なのか分からない状態のままでは、より良い文章を書くための正しい解決策は見つかりません。
※この記事は姉妹サイト『Woman type』より転載しています。
「書けない」「売れない」問題の本質は、材料不足
前回のコラムでも、あらかじめ「きっと読者は、ここで迷って、こういう疑問を持つだろう」と分かった上で、先回りして書く必要があるという話をさせていただきました。
相手が変われば、伝えるべき内容も、伝え方も変わります。
自分が伝えたいことを一方的に話すことに終始し、分かってくれないと嘆いていても、世界は変わりません。
書き始める前に、その人に何を伝えれば心が動くのか、何をどういう順番で見たいと思っているのかといった情報を、まずはそろえておく必要があります。
例えて言うなら、材料が足りないと料理ができないのと同じです。
パソコンの画面とにらめっこし続けても、本当の意味で必要な情報は手に入りません。
あなたが伝えたい相手は、生身の人間だからです。
分からないなら、「よし、聞いてみよう!」という発想の転換が必要なのです。
そうは言っても、「ユーザーインタビューは、ハードルが高い」「やってみたけれど、うまく聞くことができなかった」という声が聞こえてきそうです。
けれど、そんなに難しく考える必要はありません。
あなたの周囲の人の感想や意見を、ごく気軽に聞いてみるだけでも、ほとんどの問題は解決するからです。
書くための材料は、身近なところで仕入れられる
ビジネス研修などでは参加者の方に「一対一で1時間以上、3人以上から、自社商品やサービスについて話を聞いてくる」という宿題を出させていただくことがあります。
話を聞く相手は、親兄弟でも友達でも、付き合ってくれそうな人であれば、誰でもOK。
インタビューといった堅苦しい話ではなく、お茶を飲みながら交わす雑談の中で「今使っているホームページやチラシ、企画書などを見たときに、どんな風に感じるのか」など、ざっくばらんに話していただくだけでもじゅうぶんです。
例えば、「自社のWEBサイトのどこが使いにくいのか、どうして買ってくれないのか」を知りたい場合には、その方のスマートフォンを使っていつもと同じように見てもらいます。
サイトを閲覧している様子を観察していれば、どれくらいの速度で読んでいるのか、どこで手が止まるのか、どこで顔が曇るのかが一目瞭然です。
「そんな順番で見るんだ」とか「そこが分かりにくいんだ」といった発見もあるでしょうし、業界では一般的な用語や説明でも、普通の人には伝わらないことに気づくこともあるでしょう。
また、よくできている競合サイトも併せて見てもらい、その違いを聞いてみると、さらに参考になる情報が得られるかもしれません。
いずれにせよ、自分一人でもんもんと悩んでいては、永遠に気付かなかった発見が山のようにあるはずです。
もしかすると「関係ない人の意見を聞くと、逆効果なのでは……?」「その人だけが、そんな風に思うのかもしれない……」と心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、3人に聞けば解決できます。
もし、特定の1人だけが理解できないだけなら、その人固有の問題かもしれません。
けれど、3人が共通して迷うのであれば、その人の理解力のせいではなく、WEBサイト自体が分かりにくいということになります。
これでは、売り上げにつながらないのも当然です。
自分と他人の見方・考え方は、想像以上に違っている
「でも、うちの家族は、何も分かってないんです! 何を見せても、こんなのダメと言うだけなので、身近な人に聞いても無駄だと思うのですが……」という質問をいただくこともよくあります。
けれど、あなたがどれだけ頑張って書いたとしても、ごく普通の人に見せたときに「分からない」と言われたなら、きっと他の人にも伝わらない文章になっていると考えるのが順当でしょう。
つまり、分かっていないのは、あなたの方なのです。
自分が新人だった頃を思い出していただくと、今の自分が専門家になり過ぎていることにハッとするかもしれません。
新人の頃に抱いた違和感を忘れず、誰が読んでもイメージしやすい親切な表現に書き直すことができればきっと、よりスムーズなコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
つまり、「購入した人の声」だけが重要なわけではないのです。
もちろん、既存顧客から話を聞けるならば、どうして類似商品がたくさんある中で、あえてこの商品やサービスを選んでくれたのかを聞くことができます。
過去のお客さまにとって「決め手」となった事柄は、未来のお客さまにも同じように響く可能性が高いので、とても貴重な情報になるでしょう。
けれど、まだ買っていない人からは「買わない理由」が聞けるのです。
例えば、過去に他社商品を買って失敗した経験からうさんくさいと感じ、既存の説明だけでは信じられないのかもしれません。もしくは、そもそも何が良いのかが伝わっていないのかもしれません。
何かのきっかけで、急に興味を持ってくれることもあるでしょう。
それに、あなたの身の回りにいる人たちだって、それぞれが消費者として、毎日のように何かしらの情報に触れて品定めをし、日々ダメ出しをしているのですから、あなたが思っているよりも、ずっとお客さまに近い存在かもしれないのです。
何より、自分以外の人の声を聞くことで、他の人の頭の中が、自分とは大きく違うことに気づくはず。
それだけでも、大きな意味があります。
プロのセールスコピーライターは「書く」より「準備」に時間を使う
プロのセールスコピーライターは、依頼主の商品やサービスを言葉を使って売るのが仕事です。
なぜ「自分が知らない商品やサービス」を「知らないお客さま」に売れるのか不思議に思われるかもしれませんが、自分で考えようとしていないからなのです。
「他の人の頭の中」にある情報をインタビューなどで引き出し、その共通点を見つけ出して再編集することができれば、自分の主観を入れずに、思わず行動したくなる文章を作ることができます。
そのため、ライターと言っても、書く作業には、ほとんど時間を使いません。
すでに購入している人たちが何を評価しているのか、自分以外の人たちがどう感じているのかを調べることに大半の時間を使うので、「リサーチ8割」とも「リサーチ9割」とも言われているのです。
また、社会情勢が次々に変化し、常に新しい情報が入ってくる今、たとえずっと同じ商品やサービスを扱っていたとしても、何に重点をおいて伝えるべきかは、どんどん変わっています。
伝わりやすい言葉も、日々変化していきます。
そのため、今や海外のスタートアップ界隈では、とにかく街に出て、エンドユーザーや見込み客になり得る人の声をたくさん聞き、改善を繰り返すことが常識です。
不思議なことに、日本では、いまだに大規模な市場調査から得られた数値データなどの定量調査だけが高く評価され、顧客インタビューから得られる定性調査の価値が低く見積もられがちです。
けれど、売れるマーケターでリアルな声を聞く努力をしていない人は、見たことがありません。
人は、数字や机上の空論で動くわけではないのです。
むしろ、現場でリアルなお客さまや見込み客の声をしっかりと聞く経験を積み重ねてこそ、数字が何を示しているかを読み間違わずに扱うことができるとも言えるでしょう。
身近な人の話を聞くことは、やろうとすれば誰でもできることですが、驚くほど誰もやっていないからこそ、違いになります。
文章は、あくまで、コミュニケーション方法の一つ。
テクニックやテンプレート以前に、書くための「材料」をそろえることができれば、それだけでも「伝わる力」が大幅に上がるのです。
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