橋本環奈“失敗してもいい”マインドで繰り出す軽やかな挑戦「プレッシャーは感じないようにしています」
好きですね、挑戦するのは。
トレードマークの大きな瞳をキラキラさせて、彼女は言った。
新しいことをするのが好きなんです。それまでできなかったことができるようになったときが、一番楽しいと思えるから。
新しいことに挑んで成功したときの幸福感は他には代えがたいものがある。だから、挑戦するのが好きなんです。
俳優・橋本環奈。取材日は、5カ月強に及んだ舞台『千と千尋の神隠しSpirited Away』の大千穐楽の翌日だった。
橋本さんにとっては初舞台。俳優人生を占う大挑戦だったに違いない。けれど、彼女は疲れなんてまるで感じさせないくらい元気だった。
どうしてこんなにタフでいられるのだろうか。挑戦をこよなく愛する橋本さんのマインドに迫った。
※この記事は姉妹媒体『Woman type』より転載しています。
地道な練習の末に臨んだ日本初の撮影技術
橋本さんが最近チャレンジしたことの一つに、8月19日(金)公開の主演映画『バイオレンスアクション』がある。
本作で橋本さんが演じるのは、日商簿記検定2級合格を目指し専門学校に通う傍ら、殺し屋のアルバイトに励む最強のヒットガール・菊野ケイ。
アクションシーンでは、“ボリュメトリックキャプチャ技術”という日本映画としては初の最先端テクノロジーが採用されている。
360度に設置された数十台のカメラを使って、役者の動きを3Dデジタルデータに変換。高精細な映像技術によるCGで再現することにより、通常のカメラでは実現できない角度からの撮影が可能となる。
このボリュメトリックキャプチャ技術を使った撮影は、グリーンバックで囲まれた専用スタジオで行われた。日本で初めて採用された技術だけに、演じる橋本さんにとっても当然初挑戦となる。
何が難しいって前と後ろが分からなくなるんですよ。
例えば、目の前の敵をキックで倒した後、次は真後ろにいる相手と対峙しなきゃいけないとします。その場合、キックの後に、ぐるっと体を回転させなきゃいけない。
普通だったら、周りのドアや柱を目印にして、どこまで回るか調整するのですが、グリーンバックだと目印が何もないので、自分がどれくらい回ったか分からなくて。
気付いたら回りすぎていたりして、「ここはどこ? 私は誰?」状態になっていました(笑)
そこで必要となるのが、地道な練習の繰り返しだ。
とにかく何度も通しで練習をして体に馴染ませていきました。
アクションで大事なのは見せ方。私自身が強くなる必要はないけれど、ちゃんとケイとして強く見えなきゃいけない。
今回みたいに360度で撮ると、右から見たらカッコいいキックに見えるけど、左から見たら形がダサいということがよくあるんですよ。
全方位を意識するのも難しかったですし、その上で決められたアクションのスピードに動きを合わせなきゃいけないので、もう頭の中は考えることでいっぱい。
しかも、グリーンバックって風通しが悪い分、どうしてもスタジオが暑くなるんですよ。暑さで体力を削られて、物理的にも大変でした。
失敗するのが悪いことだって誰が決めたの?
挑戦には、恐怖や迷いがつきもの。だけど、軽やかに挑戦を重ねる橋本さんからは、まるで重圧が感じられない。そう伝えると、プレッシャーは感じないようにしています。と言った。
基本、なるようになる精神なんです。
どんなに適当に生きてても頑張らなきゃいけない場面というのは必ずやってくる。その時が来たら頑張ればいいだけで、ずっと肩肘張ってたら疲れるじゃないですか。
私は短期集中型なんですよ。常に80点を出し続けるよりも、大事な場面で120点を出したいし、出せたら満足という性格。だから、それ以外のところでは思い切り力を抜く。
よく切り替え力がすごいねと褒めてもらえるんですけど、切り替えるのが最善だと思っているから、そうやっているんです。
自分に合っているやり方を選んでいるから、あまり負担を感じないのかもしれないですね。
自分を変えたいと願う人は多い。でも、何かに挑戦する時には恐怖心がつきまとう。チャレンジ迷子な人たちが一歩踏み出すためには、どんな思考の転換が必要なのだろうか。
失敗するのが悪いことだとは思いません。もちろん挑戦して周りから認めてもらえた方が自尊心は高まると思う。
でも、たとえ失敗したとしても失敗から得られることもたくさんあるじゃないですか。
安定感って素晴らしいし、年齢と経験を重ねるごとに新しいことに挑戦するのが億劫になる気持ちもよく分かる。
でも、ぬくぬくしたぬるま湯って浸かり心地は最高ですけど、ずっとそこにいたら、他のお風呂がどれだけ冷たいか熱いかなんて一生分からないんですよ。
いざ入ってみたら、想像以上に熱くて火傷することもあるかもしれない。
それを人は失敗と呼ぶのかもしれません。
でも、このお風呂は火傷するくらい熱かったということが学べたんだから、それは一つの経験であって、失敗じゃない。
そうやって考えてみると、気の持ち方も変わる気がします。
たとえどんなにひどいミスをしても、自分が失敗だと思わなければ失敗にならない。ある結果に対して、失敗かどうかをジャッジするのはいつも自分自身なのだ。
私も何かする度にSNSでいろいろ書かれます。でも、気にしないようにしています(笑)
それよりも私が怖いのは自分自身を嫌いになることなんですよ。
何かに挑んで失敗することよりも、自分を嫌いになる方がよっぽど怖い。だから、私はいつも自分のことを嫌いにならない道を選択するようにしています。
働く上でのルールは、無理をしないこと
その小柄な体のどこにそんな力が隠されているんだろう? と感じるパワフルさで、橋本さんは前へ前へと突き進んでいく。
けれど、そんなチャレンジスピリットあふれる橋本さんが「これだけはしない」と決めているマイルールがある。それは、無理はしないことだ。
挑戦とは自分のキャパシティ以上の物事にトライすることだ。どうしたって無理をせざるを得ない気もするが橋本さんは次のように話す。
無理には、自分が納得してやる無理と、人から押しつけられる無理の二種類があると思っていて。
前者は自分がもっと頑張りたいからやることなので、それぞれの自由。
でも、後者は絶対ダメ。無理強いされたものなんて楽しめないし、ストレスになる。
そうならないためにも、私たちは自分で働き方を選ぶべき。その方が、もっともっと仕事が楽しくなる気がします。
それは言い換えると、自分らしさをどこまでも追求するということだ。
自分らしさってすごく大事。
例えば、今回のケイちゃんという役も、他の人にもできるケイちゃんだったら私がやる意味がないですよね。せっかく任せていただいたんだから、橋本環奈らしいケイちゃんを演じられたらという気持ちは常にありました。
自分らしさこそが、私の武器になる。それを養うためにも、まずは自分で考えて動くこと。自分の言葉と行動に責任を持つことを意識しています。
橋本環奈が、こんなにもタフに見えるのは、ブレない自分らしさを持っているからだろう。そして、それは一朝一夕で手に入れたものじゃない。これまでの人生の中で、常に自らがハンドルを握って、一つ一つのルートを決めてきた、その積み重ねによって築き上げられたものなのだ。
弱点があることは恥ずかしいことじゃない
23歳にして完璧すぎる思考を持つように思える橋本さん。そんな橋本さんのまだ知らない一面を知りたくて、最後に「弱点は何ですか」と聞いてみた。
弱点ですか? 何だろう……。私、弱点はあまり人に教えたくないタイプなんですよね(笑)
そうカラッと笑いつつも、彼女は大事そうにこう付け加えた。
きっと、「自分には弱点なんてない」と思わないことが大切なんじゃないかな。
弱点がない人間なんていないもん。弱点があることは恥ずかしいことじゃない。あっていいと思います。ただ、それを自分が理解しておくことが大事なんです。
そして、定期的に毒を吐き出せる場所を持っておくのもおすすめ。
私は自然体でいることを大切にしているので、眠いとか、疲れたとか普通に言いますよ。人間、頑張りすぎても疲れるだけ。むしろ何でも「はい!」「はい!」って元気よく返事をしている子を見ると、いつか壊れちゃうんじゃないかなって心配になりません?
いい子になりすぎないというのは、長く働く上で大切なことだと思います。
自分で決めた無理はする。でも自分を壊すような無理はしない。人の顔色ばかりうかがういい子はやめて、どんな選択も自分で考え、自分で決める。
橋本環奈が困難な挑戦にも折れないのは、そこに圧倒的な自分の意志があるからだ。
取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴
作品情報
映画『バイオレンスアクション』
8月19日(金)、全国の映画館で公開
橋本環奈、杉野遥亮、鈴鹿央士、馬場ふみか、森崎ウィン、大東駿介、太田夢莉、猪塚健太、箭内夢菜、兵動大樹(矢野・兵動)、くっきー!(野性爆弾)、佐藤二朗 / 城田優、高橋克典 / 岡村隆史 ほか
原作:浅井蓮次・沢田 新『バイオレンスアクション』(小学館『やわらかスピリッツ』連載中)
監督:瑠東東一郎
脚本:江良 至、瑠東東一郎
製作:『バイオレンスアクション』製作委員会
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©️浅井蓮次・沢田 新・小学館/『バイオレンスアクション』製作委員会
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