キャリア Vol.1029

中川翔子「仕事ができなくなるかもしれない恐怖」に向き合って見つけた“ちょうどいい働き方”

歌手、タレント、役者、YouTuberなど一つの枠にとらわれず、さまざまなフィールドで活動する中川翔子さん。

中川翔子

2023年3月17日公開の映画『長ぐつをはいたネコと9つの命』では、主人公・プスに立ちはだかる犯罪組織「3びきのくま」のリーダー、ゴルディの吹き替えキャストを務めた。

ゴルディは金髪がトレードマークのキャラクターだ。くしくも、中川さんが人生初の金髪にしたタイミングで臨んだアフレコを振り返り、「一生忘れない」と朗らかに笑う。

「ゴルディの口癖で“ちょうどいい”というセリフがあるのですが、それは私自身が最近、仕事をする上で大切にしているキーワードでもあって。自分のお気に入りのワードとして、今後心の中で唱えようと思います」

中川さん自身、多彩な活動をしながら、どのように“ちょうどいい”働き方を実現しているのか。その秘訣を聞いた。

※この記事は『Woman type』の記事を原文ママ転載しています。元記事はこちら

「一度きりの人生」だからこそ、一瞬一瞬に愛をぶつけたい

『長ぐつをはいたネコと9つの命』は、命を9つ持っていた主人公・プスがそのうち8つを失ったことで、改めて命の大切さや誰かと生きることの尊さと向き合うストーリーだ。

中川さんはそんな本作について、「プスにすごく共感します」と話す。

「20歳の頃、友人から『人生って3万日しかないんだって』と聞いて衝撃を受けました。

当時はささいなことで悩んで、ズルズルと引きずってしまうことが多かったんですが、その言葉を掛けられて以来、『限られた人生なんだ、ネガティブになっていたらもったいない!』と思い直して。

ライブをするとき、歌うとき、テレビに出るとき、「これが最後かもしれない」と覚悟を持って取り組めるようになりました」

中川翔子

「時間=寿命」だと日常的に考えるようになり、1日1日を大切に過ごすようになった中川さん。

人生は有限だという当たり前の事実を受け入れたことで、自分を取り巻くものや身近な人たちの尊さを再認識できた。

「私はすごく運が強くてラッキーだなって感じます。たくさんのすてきな人に出会えて、子どもの頃から大好きだった歌や絵を仕事にして、たくさんの夢をかなえている。

今回もこんなに猫がたくさん出てくる最高なアニメ映画で吹き替えができるなんて楽しすぎます」

自分の人生を構成するあらゆる人やものに感謝の気持ちを伝えるとともに、「その一つ一つに、そして人生の一瞬一瞬に思い切り愛をぶつけたい」と語った。

仕事ができなくなって気付いた、自分だけの“ちょうどいい”ワークライフバランス

「私はお仕事をすることが大好きなんだなってしみじみと思います」

そう話す中川さんに、『長ぐつをはいたネコと9つの命』がテーマとする「一度きりの人生」にちなみ、「一度きりの人生で仕事が与えてくれるもの」について尋ねると、「仕事のおかげで太陽の光を強制的に浴びることができます(笑)」と、彼女らしい答えが返ってきた。

中川翔子

「仕事がない日は自分の見える範囲だけで生活してしまうけれど、仕事をしていると、新しい人やモノ、世界と出会うことで知らない情報がどんどん降ってきます。

その中で引っかかったものを好きになったり、新しい夢につながったりするんです」

夢はいくつあってもいいし、何歳になっても見つかっていくもの。そう熱く、力強く話す中川さん。

いま抱いている夢は、『長ぐつをはいたネコと9つの命』に登場するママ・ルナを例に挙げ、「猫アイランドをつくりたい!」と“猫愛”を爆発させた。

「ママ・ルナは、たくさんの猫たちと暮らしているのですが、将来はああいう人になりたいですね(笑)

無人島に保護猫を集めてもいいし、小さく始めるなら保護猫カフェでもいい。ピンクの雀卓(じゃんたく)を置いて、メニューに激辛カレーがあって、私がステージで歌う。そんな保護猫カフェをつくりたいです。

私の仕事のモチベーションは、猫も人もハッピーにすることだから」

中川翔子

中川さんにとって、「仕事」は新しい夢が見つかるキッカケを与えてくれるもの。ただ、後悔なく、自分らしく働き続けるためには、「仕事だけになってはダメだと思う」と続ける。

「今年の1月、療養のためにしばらくお休みをいただいたのですが、その期間は『仕事ができなくなるかもしれない』恐怖を感じました。

それと同時に、働きたくても働けない状況に陥って初めて、自分にとって『仕事』がこんなにも大切なものだったんだと気付きましたし、普通に働けることのありがたさも実感しました。

だからこそ、健康には十分に気を配って、睡眠時間もしっかり確保して、“ちょうどいい”働き方をすることが仕事を続ける上では重要なんですよね」

命を第一に、たまにガンガン行こうぜ! が今の私にとって一番“ちょうどいい”バランス」だと中川さんは言う。

「メポ(愛猫)に癒やされる時間、お風呂に入る時間、寝る時間……どれも大切なんですけど、自分を甘やかしすぎてもダメ。

例えば、私はいちご大福が好きなんですけど、いくら好きだからってそればっかり食べてたら栄養バランスが偏って体調が悪くなるじゃないですか(笑)

それと一緒で、好きなことに触れる時間、休む時間、お仕事を頑張る時間、どれか一つだけじゃなくそれぞれ“ちょうどいい”バランスがとれると全部うまくいくんですよね」

心をすり減らすことにばかり、時間を使ってない? 自分の心に問い掛けて

自分なりの“ちょうどいい”ワークライフバランスを大切にしたいと語る中川さん。仕事を頑張りすぎてしまうなど、“ちょうどいい”バランスがまだ分からない人に向けて「自分の心の声にしっかり耳を傾けてみて」と呼び掛ける。

「楽しいことだけでご飯を食べていくのはすごく難しいけれど、自分の心をすり減らすものは思い切って捨ててみてもいいかもしれません。私も昨年くらいからそれを意識するようにしています。

そしてこれは仕事でも同じだと思うんです。自分の心をすり減らす作業ばかりに時間を割いていないか、見つめ直してみるといいかもしれません。

自分の心を摩耗することに時間を使っているくらいなら、自分の心がワクワクするような時を過ごしたり、自分の大切な人に感謝することに時間を使ったりする方がずっといい。

そうやって仕事を続けていく中で、自分が少しでも『楽しい』と感じられること、没頭できることに出会えたら、そこに集中していけばいいと思うんです」

中川翔子

そうは言っても、仕事だと逃げ場がないこともあるだろう。そんなとき、中川さんはどのようにバランスを取っているのだろうか。

「仕事とプライベートをきっちり分けています。なるべくプライベートの時間は好きなことで自分を満たしてあげるんです。

例えば、Netflixで好きな作品を見ながら、手元ではゲームをしたり、本を読んだり、猫をなでたり、チョコを食べたり。

これでもかというくらい好きなことだけを並べるようにしていますね」

仕事で頑張った分、プライベートでは自分を思い切り甘やかす。それが中川さん流のバランスの取り方だ。

「自分を甘やかしてあげながら、自分が心から楽しいと感じられることを見つけて、全力で取り組む。こういった心持ちでいることはとても大事だと思います。

なんと言っても、一度きりの人生ですから。一日も無駄にせずに過ごしたいです」

中川翔子(なかがわ・しょうこ)
歌手、タレント、役者、YouTuber。1985年5月5日生まれ。2002年にミス週刊少年マガジンを受賞し、芸能界デビュー。06年7月、シングル「Brilliant Dream」でCDデビューして以降、「空色デイズ」などの楽曲をリリースし、07年『第58回 NHK紅白歌合戦』に初出場。11年にはディズニーアニメ『塔の上のラプンツェル』で主人公ラプンツェルの日本語吹き替えを務めるなど、声優としても活躍の幅を広げる。15年、NHK連続テレビ小説『まれ』で、連続ドラマ初出演。23年には映画『長ぐつをはいたネコと9つの命』でゴルディの日本語吹き替えを務める

作品紹介

映画『長ぐつをはいたネコと9つの命』
2023年3月17日公開

>>作品ページ

取材・文/阿部裕華 撮影/渡辺 美知子 編集/光谷麻里(編集部)

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