橋本愛「怖いことほど挑戦してみる」理想の表現を追い求める彼女が生んだチャレンジの循環
※この記事は姉妹媒体『Woman type』より転載しています
自分の表現を向上させていくのが好きなんです。
ひとたび芝居や表現の話になると、無邪気かつ情熱的な表情を覗かせる。彼女は紛れもなく“表現者”だ。
これまでに映画やドラマへの出演に加え、アニメーション作品への声の出演、アーティスト活動では歌や作詞をするなどさまざまな表現に取り組んできた橋本さん。
そんな彼女が今回初めて挑戦するのが、2023年6月16日(金)公開のDC映画『ザ・フラッシュ』の吹き替えだ。
理想の表現を目指して、できる限りの準備をして臨んだ
本作で橋本さんが吹き替えを務めるのは、スーパーガールというヒロイン。
オーディションで役をつかんだ時、「驚いたし、うれしかった」と大きな瞳をキラキラさせて語る。
今回の吹き替えについて、「アニメーション作品より難しいと感じるポイントは少なかった」と振り返る。
今回は、役者さん(サッシャ・カジェ)の声と表情などたくさんのヒントがあったので、準備をする上ですごく助けられました。
役者さんの演技にリスペクトを持ちながら、彼女の声質やトーン、表情からくみ取れる感情などを自分の声に乗せるように意識しています。
また、声だけでキャラクターを表現しなければいけないからこそ、自分なりにカーラの核を掘り下げ投影させていくことを心掛けた。
カーラは壮絶な過去を抱えながらも、とある希望を原動力に生きています。
そんな彼女の覚悟や思いの強さ、ブレない信念を核として捉えた上で、存在感のあるカッコよさと繊細さを表現してみたいと思いました。
そこで、あまり高い声は出さない方がいいかなとか、どうしたら迫力を出せるかなとか、自分なりに表現をいろいろ模索して。
イメージに近い声で演技ができるように、できる限りの準備をして収録に臨みました。
自分が納得できる仕事をするために、トレーニングを積んできた
本作のアフレコを振り返り、「自分にとって新しいチャレンジだったので、すごく面白かった」と声を弾ませる橋本さん。
役者の表情や口の動きに合わせて声の演技をする上ではさまざまな縛りがあるが、「だからこそできる表現の楽しさを味わうことができた」と新しい表現方法を会得したことの喜びを語る。
今まで、演じる役によって自分の声色を変えたいと思ってもうまくコントロールできなくて、特に低い声を出すのに苦労していました。
なので、ここ数年はボイストレーニングに通っていたんです。今作ではその成果を発揮することができたのではないかと思います。
映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』で成島出監督と仕事をしてから声の表現を意識するようになり、ボイストレーニングで声帯のメカニズムや使い方を学んできた橋本さん。
その成果が今作で現れたことは、表現者・橋本愛の大きな成長につながった。
例えば、怒るお芝居をしたときに声が裏返ったり高くなったりすることがあって、聞いていてあまり心地よくない音だと感じていました。
でも、今回はボイストレーニングをしてきたおかげで、声の低さを保ちながら聞きなじみの良いトーンで声を出すことができたと思います。
自己評価にはなりますが、過去の自分と比較して成長を実感できたので、すごくうれしかったし納得して終わることができました。
「挑戦する勇気の種すら持てなかった」橋本愛が変われた理由
自分の技術を向上させるためのトレーニング、新しいジャンルの仕事への挑戦。より豊かな表現を求めて前進してきた橋本さん。
「実は、こうやってチャレンジを続けられるようになったのは、割と最近のことなんです」と打ち明ける。
過去には、挑戦したいことを口にする勇気がない時期もあった。そんな橋本さんを変えたのが、努力と人との出会いだ。
理想とする表現・お芝居ができなかった頃は、自分の仕事に全く自信がなくて。
新しいことに挑戦する勇気の種すら持てなかったし、「こんな仕事をやってみたい」なんて希望を口にすることもできなかったんです。
今の仕事も納得できるかたちでできてないのに、そんな自分が「やりたいこと」なんて口にすることなんてできないーー。当時はそう思い込んでいたという。
だけど、自分に自信がなかったからこそ表現を磨く努力もできたし、それを見ていた人たちが手を差し伸べてくれて、新しいお仕事のお誘いをくれたり、導いてくれたりして。
だんだん自分でも納得できる表現ができるようになっていき、仕事で評価していただける機会も増えました。
私が新しいことへのチャレンジに前向きになれたのは、そこからでしたね。
努力の末に得た成長が自分の自信につながり、そこから「やってみたいこと」「挑戦してみたいこと」が自然とあふれてくるようになった。
「歌をやりたい」「この人と仕事がしたい」と自分から挑戦したいことを言って好きなことをやらせていただく機会が増えてからは、自分に思いもしなかったお話やご縁が舞い込んでくるようになって。
そこにまた新しいチャレンジをするという循環が生まれたんです。それが自分にすごくいい刺激を与えてくれていますね。
だから、その循環の中で今は、分からないから怖いと思ったことほど挑戦してみるようにしています。
その先に、ワクワクするような新しい扉が開くことを知っているから。
未知の仕事への挑戦は、誰しも二の足を踏んでしまうもの。
そこに一歩踏み出す橋本さんの原動力は、「自分の表現力を高めること」だという。
例えば、「歌の仕事をやったらこのスキルが上達した」とか「吹き替えに挑戦したらこんなことができるようになった」とか、自分の成長をある種、育成ゲームみたいにとらえているところがあって。
そういうふうに仕事でチャレンジしてレベルアップできると、何だかすごく面白いんですよね。
そして、お芝居の仕事って、その場では完璧だったと思っても、実際に完成された作品を見ると「全然ダメだ」と自分の欠点があぶり出されていくことの連続。
そういう意味で成長に終わりがないし、クリアしたい課題もいっぱい出てくるので、今後もチャレンジの連続だなと思いますね。
「自分の気持にうそはつかない」と仕事を始めたときから決めていた
「これまでは演じる役に入り込むことを理想としてきた」と振り返る橋本さん。
それができるようになった今、「今度は、自分の感情任せではない演技」ができるようになりたいと理想を語る。
今は、作品全体の中で自分自身を客観的に俯瞰しながらお芝居をすることに挑戦しています。
例えば、今までは怒りを表現する時、カメラの前に立って自然発生的に出てきた感情に身を任せていました。
だけど最近は、脚本の流れや演出、相手の役者の感情などに合わせて感情をコントロールできるようになりたくて。
自分がどう映るかということだけじゃなく、全体の調和の方に目が向くようになりました。
ただ、表現の選択肢があり過ぎて……今のところ終わりが見えないですね(笑)
そう言って、自身の表現の伸びしろに期待の表情をにじませる。そんな飾らなさが橋本さんの魅力だ。
10代前半から俳優業をスタートし、今年で活動13年目を迎える。長いキャリアを飾らずに歩んでいる橋本さんが仕事を続けていく上で意識していることとは、「自分を偽らないこと」だという。
自分の気持ちにうそをつかないこと。それはこの仕事を始めた時から決めていることです。
未熟な時は人から言われたことをその通りにやるのがいやで、周囲の人に対してちょっと反発しちゃうようなこともあったんですよ。
それで失敗して、人に迷惑をかけたり、傷つけてしまったりしたこともあったし。
でも、自分の本音を隠したり、自分を騙したりしながら仕事をしていくと、どうしても健やかでいられなくなってしまう。だから、なるべく自分の気持ちにうそをつかないことが大事です。
「私はこうしてみたいと思う」「私はこうやってみたい」というのをちゃんと伝えて、ありのままの自分を出す。
そうすることで、うそ偽りのない自分を周りの人に知ってもらって受け入れてもらえると、よりいっそう心地よく働いていけるのかなって思いますね。
作品情報
映画『ザ・フラッシュ』2023年6 月 16 日(金) 日米同時公開
監督:アンディ・ムスキエティ
出演:エズラ・ミラー/ベン・アフレック/マイケル・キートン/サッシャ・カジェ/マイケル・シャノン
配給:ワーナー・ブラザース映画
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取材・文/阿部裕華 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)編集/栗原千明(編集部)
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