山本美咲さん(仮名)新卒入社した企業で、広告営業歴13年。現在は部長職として、メンバーマネジメント業務をメインに手掛ける
売れる人が向いているワケじゃない? 営業を続けた人・辞めた人が明かす、適性の見極め方
「私、営業は向いていないかもしれない……」
そんな思いがよぎりながらも、一生懸命目の前の仕事と向き合っている人もきっと多いのではないだろうか。
もう少し頑張ったら芽が出るのか、早いうちに新しい道へと切り替えた方がいいのか。
判断がつかずに悩む女性たちにお届けしたいのが、「今だからこそ、自分が向いていたのか向いていなかったのかが分かる」と話す先輩たちの声だ。
今回話を聞いたのは、こちらの3名。
【1】山本美咲さん(仮名):1社で10年以上広告営業を続けている、営業マネジャー
【2】中山裕子さん(仮名):不動産→旅行と業界を変えて営業を続けている、営業主任
【3】小森真紀さん(仮名):編集職へとキャリアチェンジした、元営業
自分は営業に向いていた、もしくは向いていなかったと振り返る女性たちの話を聞くと、営業職の適性に「ある傾向」が見えてきた。
※この記事は姉妹媒体『Woman type』より転載しています
広告営業歴15年目「バイネームで求めてもらうことがモチベーションに」
山本さんが現在勤める企業に入社したのは、2009年。広告営業職に就いて15年目になる。
企業の新規開拓から広告枠の提案、広告掲載後のフォローアップまで一貫して行うのが山本さんの仕事だ。
営業を始めて10年以上たつ山本さんだが、意外にも「入社後の数年間はしょっちゅう辞めたいと思っていた」と笑って話す。
常にのしかかる売り上げ目標のプレッシャー、クレーム対応、マルチタスク、テレアポ……などつらいことばかりで。
ただ、お盆までは頑張ろう、年内は頑張ろう、もう一年頑張ろうと期限を切りながらやっていたら、少しずつ成果が出るようになってきたんですよね。そうすると、「楽しいな」と思うことが増えてきました。
「つらい」「辞めたい」と思う中でも、「自分が営業職に向いていないと思ったことはない」と話す山本さん。
業務を細分化するとつらいことは多くても、大きく見て営業の仕事自体は好きだったと笑顔を見せる。
毎日いろいろな業界のお客さまに会って、今日はこんな話をして、明日はこういう話をしよう……と考えるのが楽しかったんです。
また、営業職って「自分の力で売った」実感を得られる仕事なので、手ごたえがあるんですよね。
もともと、バイネームで「山本さんだからお願い」と言ってもらえる仕事がしたくて、無名のベンチャー企業に入社したので、会社名や商品名ではなく「私」を求めてもらえることが増えてくると、どんどん営業が楽しくなっていきました。
自分の力で勝負することにやりがいを感じていたので、この仕事が向いていないと思ったことはありません。
同期の中でも最速の出世をし、現在は部長職として部下のマネジメントを担っている山本さん。
多くの部下たちを見てきて、「向いている人には共通点がある」と明かす。
やっぱり、現時点で成果が出ている・出ていないに関わらず、営業の仕事自体を楽しめる人は向いているなと感じます。
営業職を楽しみながら成果を出せる人って、私のように「バイネームで認められること」でモチベーションが上がる人が多いんですよね。
自分の売り上げ目標を達成することで承認欲求が満たされるタイプもいれば、お客さまの役に立つことで満たされるタイプもいますが、相手が社内か社外かというだけで、根元は共通します。
自分のモチベーションがどこにあるのかに着目すると、向いているか向いていないかを判断するヒントになるかもしれません。
不動産営業→旅行企画営業「どちらも工夫するほど結果が変わるのが面白い」
中山裕子さん(仮名)不動産の賃貸営業に3年ほど従事した後、旅行会社に転職。1年たった現在は、主任としてツアーの企画・販売営業を手掛ける
不動産の賃貸営業を手掛けていた中山さんは、結婚したタイミングでワークライフバランスを整えるために旅行会社の営業職に転職。
現在は、土日休み・リモートワークのワークスタイルになり、ベストなバランスで働けているという。
中山さんが転職後も営業を続けようと思ったのは、なぜだったのだろうか。
目標や目的なく働くのが嫌なんですよね。営業は明確な目標が定められている職種なのでモチベーションを保ち続けられます。
あとはやっぱり営業の仕事が楽しいのは大きいですね。私が仕事の中で面白いと感じるのは、プロセスの部分。
どうしたら売り上げ目標を達成できるかを考えて、自分なりにやり方を工夫することで結果が変わってくるので手ごたえがあります。
中山さんが現在手掛けているのは、タイアップ先の企業を開拓し、顧客企業と一緒にツアーを企画提案する仕事だ。
不動産営業職と異なり、提案する「モノ」がない分、企画力・提案力がより求められるようになったというが、前職の経験を生かせていることも多いという。
営業の種類は変わりましたが、売り上げ目標など数字に対する向き合い方は共通しています。前職で数字を追うことにこだわった経験は今の仕事でも生きていると思います。
また、不動産営業は一日に何十人ものお客さまの対応をするため、相手のタイプを見極めて動機付けの仕方を変えたり、相手が求めていることを察知して先回りした提案を行ったりする必要があります。
このスキルもまた、今の仕事で武器になっていますね。
不動産業界から旅行業界へと業種が変わっても、営業の向き不向きには共通するものがあると、中山さんは明かす。
明確な目標に向かって、「いかにプロセスを工夫して成果を出していくか」という工程を楽しめる人は向いていると思います。
「数字を追うのが嫌だから営業は向いていない」という人も多いですが、営業職でなくても、何かしら目標を追うことにはなると思うんですよね。営業はその目標が明確な分、走る方向も明確なので楽です。
とはいえ、結果が伴わなきゃ価値を出せていないと考えるとしんどくなるのは確か。
相手はどう考えているんだろう? どうアプローチすると響くんだろう? とプロセスに目を向けると営業って楽しいなと思います。
人材営業→編集職「売れても、仕事が苦になるなら営業は向いていない」
小森真紀さん(仮名)人材業界で約5年の営業経験をへて、メディアの編集職へとキャリアチェンジ。現在はフリーランスで編集職に従事
もともとクリエーティブ職に就きたいと考えていた小森さんだが、新卒で入社した企業で配属になったのは、希望には反する新規開拓営業職だった。
希望していた職種ではなかったものの、最初はすごく調子が良かったんです。
新人MVPを取るほど成果が出ていたのですが、1年半くらいたつと営業成績は急落。
多分、ギリギリのモチベーションで営業していたので、踏ん張りが利かなかったんだと思います。今思うと、私は営業は向いていなかったですね。
そう語る小森さんだが、同期の中でもトップの営業成績をたたき出していたのは事実。やりたい仕事ではなかったとしても、「向いていた」とは考えられないだろうか。
できる方ではあったのかもしれないけれど、しんどかったんです。売り上げ目標も、新規開拓も。たとえ売れても、営業活動そのものを楽しめなくて。
そういう状態だったから、結果的に長続きしないんですよね。
同期入社した仲間の中には、長く営業職で実績を出し続けている人たちもいるという。彼女たちとの一番の違いは、「営業を楽しめているかどうか」だったと小森さんは分析する。
長く営業を続けている同期と話していた時に、「お客さまのニーズに合わせて提案するだけなんだから、営業なんて簡単じゃん」と言われたことがあって。
私があんなに苦しんでいた仕事を「簡単」と言ってのけたことに衝撃を受けました(笑)
責任感が強かった小森さんは、やりたい仕事ではなかったけれど、成果が出たことで上司や同僚から期待され、それに応えなきゃと頑張り過ぎてしまうサイクルに入り、次第に息苦しくなってしまった。
私はお客さまと話をするのは嫌いじゃなかったけれど、お客さまのビジネス課題を解決することよりも、お客さま自身に興味があったんですよね。
だから多くの人に取材をして記事に起こしていくメディアの編集職は、すごく向いているなと感じています。
旅行企画営業を手掛ける中山さんの話の中で「どの仕事でも何らかの目標を追う」という話があったが、編集職に転職した小森さんはどう感じているのだろうか。
編集職でも、どれだけ記事が読まれたかなど数字を追う側面はありますが、直接的な目的は「自分が作ったコンテンツで人の心を動かすこと」であり、数字はその先にあります。
営業職も同じように数字が目的ではないけれど、そこへの強いこだわりや達成意欲が求められるなと。
今の仕事でも、もちろん自分が手掛けた記事は多くの人に読んでほしいけど、10万人に読まれるより、たった5人にしか読まれなくても、その5人の気持ちや行動に強い影響を与えられることの方が私はずっとうれしいんです。
売り上げ目標を達成することや、周囲から認められることにモチベーションを感じるタイプではなかったと、改めて振り返る小森さん。
結果的に5年ほど営業を経験した後に編集職へとキャリアチェンジをしているが、現在営業を経験していて良かったと感じることはあるのだろうか。
間違いなく、営業を経験して良かったと思います。
取材相手もビジネスパーソンなので、取材対象者が手掛けるビジネスの流れをイメージしやすいのは営業をやっていたからこそのアドバンテージだと思いますし、編集記事を作る際はターゲットをリアルにイメージしなければいけないので、いろいろな人たちと会って生の声を聞いてきた経験も生きています。
また、今はフリーランスなので、価格の交渉をシビアにできるのも営業職の経験があってこそかなと。
営業職で培えるスキルって汎用性があるので、他職種でも生かせる場面は多いと思います。
今だからこそ、自分に営業は向いていなかったと気付いた小森さんだが、向き不向きを判断するには一定期間は続けることが大切だと話す。
続けるべきか迷ったら、まずはいったん「ここまでは頑張ろう」と自分で期限を決めるといいと思います。
やり切ったと思えるまでやらないと「逃げた」「挫折した」経験になってしまい、それが次のキャリアでの負い目になったり、成果を出せないことへの言い訳になったりと、新しい道でマイナスに作用してしまうこともあるかもしれません。
結果的に別の道を歩むことになるとしても、「私は営業をやり切った」と思えることが、次のキャリアを良い方向へと導いてくれるはずです。
「売れる=向いている」と思いがちな営業職。
しかし、営業を続けている人、辞めた人の話を聞くと、成果よりも「仕事自体を楽しめるか、楽しめないか」が向き不向きに直結するようだ。
営業を楽しめるかどうかを見極めるには、自分は何に関心があって、何をしているときにモチベーションが高まるのか、まずは目の前の業務に対する自分の素直な気持ちを知るのが第一歩。
そんな意識で日々の仕事と向き合い、自分で決めた「ここまでは頑張る」をやり切ったときに、きっと自分の適性は見えてくるのだろう。
取材・文/光谷麻里
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