SEの「高望み転職」

夏のボーナスが支給され、ほっとひと息つくこの時期。普段は忙しさにかまけて忘れていた、仕事への「あと一歩の望み」が頭をもたげてくるころだろう。そこで今回は、その「望み」を叶える転職を実現する方法に迫る。


いざ転職しようと思っても、なにかと不安はつきまとうもの。ここでは、エンジニアtype読者から寄せられた転職に関する要望のなかから特に目立ったものをピックアップし、人材コンサルタントに意見を聞いた。





会社自体が2次請け・3次請け専門で、ここで出世しても上流工程を担当できない

必死にプログラミングを学んだら、プログラムのエキスパート扱いされて身動きがとれない

実力はあるつもりだけど、会社から評価されず、上流の仕事を任せてもらえない

せっかくプライムベンダーにいるのに、年功序列でいつまでも上流工程を担当できない


エンジニアtype読者が抱える転職への要望でもっとも強かったのが、「上流工程に携りたい」というもの。

現在の勤務先が下請け企業でそもそも上流工程の仕事をする機会がなかったり、プライムベンダーに就職していても年功序列などに阻まれてなかなか上流工程に携わる機会に恵まれず、フラストレーションを感じているという読者も少なくなかった。

こうしたジレンマを解消する処方箋は以下のとおりだ。

下請け企業で働く技術者がプライムベンダーと呼ばれる元請け企業へ転職するのは、難しいことでも珍しいことでもありません。すでに中途採用の実績がある企業では、下請け企業出身の技術者が優秀な働きをするケースがあるということを知っているからです。とはいえアピールポイントがなければ転職できないのも事実。そこでぜひ心がけてほしいのは、「自分の担当する業務の上流工程担当者から仕事を盗むつもりで日々の業務に臨む」姿勢です。こまめに話したり、渡された設計図を熟読するなどして、“上流工程マインド”を吸収するのです。その「意識の変革」が、転職活動で実を結ぶ日が来るでしょう。(リーベル・小塚康司氏)
まず、下流工程から上流工程に移るということは、まったく別の職種に転身するのに近いものがあるということを自覚してください。特に、上流工程の担当者は社内外で折衝する場面が多いため、高いコミュニケーション能力が求められます。ご自身がそうした能力をどれだけ発揮できるかどうかをもう一度、冷静に自己分析していただきたいと思います。その点に注意すれば、下流工程で身につけた技術知識は、上流工程で設計やコスト見積もりを担当する際にも説得力につながり、大きな武器となります。自分の培ったシステムの基礎力に自信を持って転職に臨んでください。(インテリジェンス・佐久間高広氏)

人事から
TIS
完璧でなくてもいい、自分の強みを確立してほしい
金融など特定のシステム開発経験がないこと自体は、不利にはなりません。むしろ、状況の変化に対応できる柔軟性が重要です。

当社では技術者の能力を「業務知識・職務遂行能力・IT技術」の3つに大別して評価しますが、すべてを完璧に満たす必要はないと思っています。当社では、技術開発に特化したチームもあればお客様との折衝をメインにする部署など、さまざまな能力を活かした働き方が可能です。力を発揮するフィールドは無数にあるということです。だからこそ、自分の得意分野を“強み”としてアピールしていただきたいですね。





ITのことを何も知らずに新卒で入社した会社で、たまたま配属された部署が汎用系だった

汎用系の仕事に不満はないけれど、将来シゴトがなくなるって噂を聞いて不安になった

どうせなら新しい技術を使って働いたほうが、エンジニアとしてカッコいいと思う

COBOLしか使えないエンジニアであることは、技術者として恥ずかしいような気がする


続いて多かったのが担当分野への不満。Javaをはじめとするオープン系のシステム開発が隆盛を極めるなか、汎用機やCOBOL言語など、「時代遅れ」なイメージのある技術しか習得できていないことに感じる焦りは深刻なようだ。転職しようにも他の技術スキルや業務経験があるわけでもなく、独学で新技術を学ぼうにも業務多忙で余裕がない。  

その板挟みから脱却する方法には、どんなものがあるのだろうか。

汎用機やCOBOL言語が時代遅れだという考えは偏っていますね。現に、IBMをはじめとする大手企業でも、COBOL言語の有用性や発展性、Javaや新型ハードウエアとの連携の可能性に注目する潮流が見られます。ですから、やみくもに転職を急がずに、むしろ今の職場を「幸運」と捉え、金融(外為、預金etc……)、保険などの業務知識を知り尽くしたアプリケーションのスペシャリストになってみてはいかがでしょうか。思わぬところでそのスキルが活きて、転身のきっかけになるかもしれません。そもそも、OSや言語の違いはいわば「枝葉」の問題。幹となるのは、「システム自体への理解」なのですから。
(佐久間氏)

もしもあなたが20代なら、今すぐ転職活動を開始することをおすすめします。若ければ若いほど、人事担当者は経歴よりもポテンシャルを重視するからです。こうした、携わりたい技術分野とのギャップから転職を考える方は多いのですが、一番あぶないのは「自分は未熟だから、転職は実力をつけてから」と考えて転職を先延ばしにすること。年をとるほどポテンシャル重視の転職は難しくなりますし、実績を積んでしまったら今度は「汎用系のエキスパート」とみなされて路線変更がきかなくなります。中途採用はタイミングが勝負。動くが勝ちという側面があることをお忘れなく。(小塚氏)

人事から
グロウ
「育てる」そして「任せる」土壌があります
汎用系システム開発からスタートした当社は、現在でも汎用機・COBOL言語の開発案件を継続して受注する一方、Javaなどオープン系の開発案件にも積極的に取り組んでいます。そのため当社の技術者には、汎用系の開発案件を担当しつつ並行して研修でJavaを学び、次の案件ではオープン系を担当するといったマルチな活躍が求められます。要は本人のやる気次第。研修費用の補助や資格試験の合格報奨金など、スキルアップへのバックアップは惜しみません。そして新たな技術を修得した方がリーダーとして、我が社を牽引してくれたら幸いですね。



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