昨年末にヤフーへ転職するまで、10年以上も制御系・組込み系ソフトの開発を行っていた花木裕和氏。前職ではプロジェクトリーダーも経験するなど、着実にステップアップしてきた。にもかかわらず、異業種であるWebエンジニアを志したのは、「手掛けたモノに対するユーザーからの評価をダイレクトに感じたい」という思いが募っていたからだ。
「組込みエンジニアとしてそれなりに自信もプライドもありましたが、プロジェクトが終われば製品を評価する間もなく次の製品を開発することの繰り返し。だから、ユーザーの声を参考に常に新しいサービスや機能を生み出していくWebビジネスがすごく魅力的に思えたんです」
それまでの職歴を通して、CやC++、アセンブラ開発などの高度なスキルを身につけてきた花木氏だが、それがWebやインターネット業界で通用するかどうかは未知数。そこで転職前に実践したのが、徹底した業界研究と企業研究だった。
まず、Web業界のめぼしい企業をいくつかピックアップし、それら企業のHPを趣味で作った自分用のポータルサイトに集約。その“お手製転職情報サイト”に新たな企業情報を追加したり、採用情報が更新されたらすぐにチェックできるように工夫することで、「情報収集とサイトづくりの勉強を同時に進めていた」というから驚きだ。
また、転職サイトや求人誌など複数の情報源から企業情報を集めることで、自分なりに業界の採用傾向を分析した。
「30代という年齢を考えると今後のキャリアチェンジは難しいと考えて、入念に準備しました。少しでも不安をなくした状態で転職したいと思っていましたから」
こうした入念な下調べの末、花木氏が転職先としてヤフーを選んだのは、圧倒的なユーザー数とビジネスの大きさが魅力だったから。それに、リサーチの結果ヤフーにはさまざまな業界のエンジニアが集まっていると知り、バックボーンの異なる人たちの経験談を聞きながら自分もイチから学んでいけると考えた。
「面接では、制御ソフト開発というバグが許されない世界でシステムテストを手がけてきた経験が、Webの運用でも役立つはずだとアピールしました」
これも、徹底した仕事研究を通じて、Web業界で自分の経験をどう活かすかを考え抜いた結果だという。「あとはもう、熱意ややりたいことを全面に打ち出して伝えるだけでしたね」と振り返るが、今回の内定はまさに戦略の勝利だった。
現在は、同社の地域サービス事業部で仕事をしている花木氏。既存サービスの運用や機能追加などを通じて、Web開発のイロハを学んでいるところだ。
「企画からサイトに反映されるまでが1カ月?3カ月という超短期間のプロジェクトもあって、そのスピーディーさは想定外。毎日が祭りみたいな感じです(笑)。ただ、この速さがWebビジネスの楽しさだし、ユーザーからリアルタイムで反応があるのはやっぱりうれしいですよ」
失いかけていたモチベーションを取り戻した花木氏が、当面の目標にしている自ら提案したサービスをサイトにアップする日も、そう遠くないだろう。
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