2018.03.17
アニメ・モンスト、からくりTV誕生の裏話【動画付き】
爆発的にヒットした「モンスターストライク」の人気の更なる火付け役となったアニメシリーズ。かつて誰もが夢中になったバラエティ番組「さんまのスーパーからくりTV」。ひとつの時代を象徴するといっても過言ではないヒットコンテンツを生み出してきたクリエイターの対談!
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【プロフィール】
ゲームクリエイター、原作・脚本、映画監督
イシイジロウチュンソフト(2000年入社)、レベルファイブ(2010年入社)において、主にアドベンチャーゲームのシナリオ・監督・プロデュース、ディレクションを務めた後、2015年に株式会社ストーリーテリングを設立。アニメシリーズ「モンスターストライク」のストーリー・プロジェクト構成を担当した他、映画監督や舞台原作など、活躍の場を広げている
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バラエティプロデューサー
角田陽一郎1994年、TBSテレビに入社。TVプロデューサー、ディレクターとして「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」など、主にバラエティ番組を制作。2009年にはネット動画配信会社goomoを設立し、2016年にTBSを退職。現在もバラエティプロデューサーとして活躍中
人気コンテンツ誕生の背景にあった課題とは?
――ヒット企画の裏エピソードを教えていただければと思うのですが、まずはイシイさんにお伺いします。アニメ『モンスターストライク』がファンの心を強く掴んだ要因は何だったと思いますか?
イシイ スマホゲームの『モンスターストライク(以下モンスト)』には、ストーリーがほぼないんですよね。モンスターというキャラクターが魅力のゲームなので。これをアニメにするにはどうすれば良いか、と考えた時に、特定のキャラクターをメインにしまうと、そのキャラクターだけの物語になってしまう。なので、主人公となる人物を据えて、彼が様々なモンスターと一緒に戦っていくという構成にしました。とはいえ、この主人公を人気者にしたいわけではない。あくまでもモンスターの人気を引き出すことで、ゲームの世界観にあったアニメを実現しました。
もう一つのポイントは、放送したのがテレビではなくYouTubeだったということです。もちろん無料ですし、宣伝も入れていないのでアニメが視聴されるだけでは収益になりません。なぜYouTubeだったかというと、視聴者となる子どもや若者たちは、携帯ゲーム機やスマホでYouTubeを視聴しているんですよね。アニメを見ていて「このモンスターいいな」と思ったら、すぐにゲームを起動できるというメリットがあるのです。
――続いて角田さん。角田さんは元TBSのプロデューサーとして、かつては『さんまのスーパーからくりTV』なども手掛けていらっしゃったんですよね?
角田 そうですね。「ご長寿早押しクイズ」のコーナーとか。
――最近、タレントさんではない素人の方にフォーカスした番組が増えてきたように思うのですが、『さんまのスーパーからくりTV』はそういった番組の先駆けでしたよね? 一体どうやって番組の企画が生まれたんですか?
角田 『さんまのスーパーからくりTV』では、皆がコンプレックスに感じている部分をいかにして企画にするかをポイントにしていました。例えば、故郷の親戚からビデオレターを届ける内容の『からくりビデオレター』というコーナーは、“田舎者”というコンプレックスを持っている人たちが生きる企画です。特徴がプラスでもマイナスでも、その振り幅が大きい人ほど人生が面白くなると思うんですよ。持っている特徴がマイナスだったとしても、ちょっと見方を変えればプラス10に転じる。私はそれを「価値の反転」と呼んでいます。
イシイ どんな人が見ていて、何を求めているのかを理解することが大切ですよね。ユーザーの気持ちを捉えられた瞬間に、企画は上手くいくんだと思います。
人気番組を世に送り出したプロデューサーが語る「代表作はない」の真意
――ご自身で代表作だと思う作品はありますか?
イシイ ヒットしたという意味では『428?封鎖された渋谷で?』という作品ですね。カルト的な人気のあった『街?運命の交差点?』というゲームの続編として作られたんです。ですが、カルト的というのは、裏を返せば市場的には多くの人に届けきれなかったというマイナス要因でもありました。『428』では、そのマイナスをカバーすることに挑戦したんです。結果的に評価をいただけたのですが、中でも嬉しかったのは、アンケートで前作をプレイした人の満足度としなかった人の満足度を比べた時、前作をプレイした人の満足度の方が高かったことです。昔からのファンの満足度が高かったというのは、良かった点ですね。
――角田さんはいかがですか?
角田 私は、代表作はないですね。映画だと自分の作品だと思える気がするんですけど、テレビではそういう感覚があまり生まれないのかもしれません。
――どこでその感覚の違いが生まれるのでしょうか?
角田 どこまで自分で背負うのか、という部分かと思います。責任というとビジネス的な話になってしまうので、もっとソウル的な意味で。仮に『さんまのからくりTV』で面白くない企画を放送してしまったとしますよね。すると、それを観た視聴者さんは「さんまさん面白くないことをしている」と感じてしまう。そう考えると、最終的にあの番組は「僕の番組」というよりも「さんまさんの番組」なんじゃないかな、という気がするんです。面白くないなんてことにならないように、私たちは良い企画を作るんですけどね。
――とはいえ様々な番組を手掛けられてきたと思うのですが、その中で身につけた「自分の企画を通す方法」はありますか?
角田 普通だったら予算が最初から決められていて、その中で企画を考えると思うですけど、僕の場合、予算を作るところから始めるんですよ。経営層により近い立場の人に対して「この企画は利益になるからやりましょう」と伝えて、予算を確保する。言ってしまえば、営業と製作をどちらもやっていたんです。本当のプロデューサーってそういうことだと思うんですよね。
――なるほど。イシイさんはいかがですか?
イシイ 以前会社に勤めていた時に、ゲームクリエイター自身が企画書を作って全社員にプレゼンをする機会があったんですね。その時私は「このゲームが発表されたらファミ通にはこんな記事が載ります」というイメージを作ったんです。その記事で「このゲームはお客さまにこんな伝わり方になりますよ」ということを伝えたのです。ダントツで評価してもらいました。詳細の企画は、後からいくらで伝えられる。フォーマットにこだわるのではなく、お客さまからどう見えるかを伝えることを意識しました。ビジネスの場では、ジャッジする人も様々です。その誰もに伝わりやすくすることがとても重要ですね。
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※このコンテンツは、2017年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。
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