更新日2018.05.31
プレゼンで通る企画作りとは?プロ直伝のテクニックとコツをご紹介!【動画付き】
組織の中で働いていると、企画を実現させるために、まずはプレゼンで社内の人たちを説得しなければいけない、という場面がありますよね。そういった際「通したい企画があるのに、いつもプレゼンが通らない……」といったモヤモヤを抱えているビジネスマンは多いのではないでしょうか。今回はそんな人たちのために、各種メディアの第一線を牽引してきた“企画を通すプロ”たちの鼎談からプレゼンで通る企画作りのコツを紐解いていきます。百戦錬磨にも見える彼らがいかにして企画を実現してきたのか、ぜひ参考にしてくださいね。
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【プロフィール】
株式会社アブリオ 代表取締役/C Channel株式会社 取締役
三枝孝臣1989年に日本テレビ放送網に入社し、プロデューサーとしてバラエティや情報番組など全てのジャンルで数々のヒットコンテンツを世に送り出した。2014年に『Hulu』制作部長、インターネット事業担当部次長を経て、独立。2015年、新たにメディアデザイン事業会社、株式会社アブリオを設立。同時にC Channel株式会社取締役に就任
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株式会社「編」代表取締役社長/『DRESS』エグゼクティブプロデューサー
山本由樹光文社で『女性自身』の編集者を16年担当。2005年には『STORY』の編集長を務め、その後2010年より『国民的美魔女コンテスト』を開催し美魔女ブームを仕掛ける。現在では株式会社giftを設立し、月刊誌『DRESS』を創刊
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株式会社ビームス ビームス創造研究所 シニアクリエイティブディレクター
南馬越一義1984年に株式会社ビームスに入社。メンズカジュアルのショップスタッフを経て、ウィメンズ店舗『レイビームス渋谷』の店長へ。その後、1989年には『レイビームス』レーベルのバイヤーとして数々の功績を挙げる。2004年、ウィメンズ全体のクリエイティブディレクターに就任。現在様々なバラエティ番組やコンテストでコメンテーターや審査員を務めている
「諦めない」というしぶとさが、自分の価値を高めていく
――前回は今の仕事をするようになったきっかけをお伺いしました。「この仕事がしたい!」という強い思いで目指してきたというよりも、流れに身を任せてきた結果……といった背景が共通していましたね。
三枝 僕らの場合、過ごしてきた人生時間が半世紀くらいありますからね。もちろんいろんなことがあったわけですが、たくさんチャンスもありましたし、成功することも失敗することもあった。結果として見ると、流れに身を任せてきて良かったな、と。
山本 若い方は、セルフブランディングを意識して早急に結果を残そうとしている印象ですが、僕自身は、結果を残そうという発想では働いていなかったような気がします。目の前のことをこなすだけで精一杯だったので。
南馬越 本当にその通りですね。
――ここで今回一つ目のテーマなのですが、みなさん、企画を実現するための「通し方」に関するテクニックなどはお持ちですか?
南馬越 僕は企画そのものがボツになることは少なかったんですが、クリエイターやアーティストへのオファーは断られまくりましたね。そんな時は、次の人にどんどんオファーする。もちろん、企画のコンセプトは変えませんが、その中に入れる要素は柔軟に変えていくようにしました。一つの物事に固執しないことですね。
山本 企画を通すことに秘訣やテクニックはないんですが、一つ言えるとしたら「諦めないこと」ですね。こちらが出した企画に対して、先方からノーが返ってきた。でも、その「ノー」の中にはヒントがあるはずなんです。「こうすれば通るかもしれない」というヒントが。もう一度提案して、戻されて、提案して……と繰り返していくうちに、最初に考えていた企画からかたちが変わっていくこともあります。ですが、諦めない限りは自分の企画として通る時がくるはずです。
――めげない、ということですね。
山本 そうですね。企画って、現状の中に潜む課題をどう解決するか、という解決法の提案なんですよ。なので「現状・課題・解決」というキーワードを常に頭の中に入れておく。すると、相手の話の中から現状に対する気付きが得られたり、課題を抽出するためのヒントがあったり、課題を解決するためのアイデアが浮かんだりしやすくなります。
三枝 ものすごく斬新でアイデアなんてものは、そう簡単には生まれないですよね。
山本 そうそうないですよね。
三枝 全員がスティーブ・ジョブズにはなれないですからね。僕は、企画を立てる時に3つ意識していることがあります。まずは、今あるものの中に何か一つでも新しいアイデアはないだろうか、と考えてみる。そして、それに触れた人の生活が少し良くなるようなアイデアかどうか。最後に、そのアイデアは人に共有したくなる楽しいものかどうか。この3つに当てはまると、企画が前に進むんですよね。
――そういった企画を、社内で押し進めていくための秘訣ってあるんでしょうか?
南馬越 先ほど言った通り、企画がボツになることは少なかったのですが、それは対社外の場合。社内への提案は苦手だったんですよね。根回しも上手くなくて。ただ、山本さんもおっしゃっていましたが、諦めなかったからこそ通った企画もありました。最後はもう、しぶとさですね。
山本 今でこそキャリアを重ねたことで企画が通りやすい環境ではあるのですが、かつて週刊誌を担当していた時は、毎週ものすごい数の記事を担当していたんですよ。そのためには、掲載される本数以上の企画を何本も提案しなくちゃいけない。10本提案すると、3本くらい通る。ということは、20本提案すれば6本通りますよね。どうせ大半は通らないのであれば、通らないことを前提にして人よりもたくさん企画を出す。はじめのうちは「数撃てば当たる」かなと思います。
三枝 僕も日本テレビに入社してすぐの頃は、毎週番組の企画書を書いて提案していました。当時そんなやつはあまりいなかったので、だんだん顔を覚えられて「そんなに言うなら一企画やってみるか」と言ってもらえるようになりました。粘り勝ちですね。 テクニックで言うなら、顔を売ること。若いうちはキャリアも実績もないので、相手の立場からすると「彼に投資して良いのか」と疑問を持ちますよね。なのでまずは信頼してもらえるように顔を売っていくことが大切かもしれません。
プロは「落ちる企画」も意図して作っている?
――みなさん、一回の提案でいくつくらいの企画を出すんですか?
南馬越 大枠となる企画は一つですね。その中に入れる商品だったりコンテンツになると、20?30は考えます。
山本 僕も同じですね。さっき言った「現状・課題・解決」でいうと、テーマとする課題はひとつ、先方ときちんと握る。その課題に対する解決策はたくさんあると思うので、10案くらい出しますね。
三枝 僕も量を考えるタイプなので、最初の段階では無数に考えますね。それを削っていって、提案する段階では10?20に絞ります。
山本 本命の企画を通すための、落とさせる前提企画みたいなものもありますよね。
三枝 ありますね。食事で例えるなら、いきなり「今日はラーメンです」とそれだけを出されると「別のものがいい」となってしまうけど、「ラーメンとカレー、どっちがいい?」と聞かれれば「ラーメンがいい」と選べる。選択肢を与えることで、最終的に本命の企画を選ばせることができる、というケースは少なくないですね。
企画書は課題解決法の提案
鼎談では3名のプロが、「通る企画書」についてそれぞれの見解を示していました。中でも「美魔女ブーム」の火付け役である山本氏は、「企画とは現状の中に潜む課題に対しての、解決法の提案である」と語っていた通り、その企画を通じてどんなことが改善・解決できるのかを、分かりやすく他の人に伝えることが「通る企画書」の必須条件とも言えます。
まずは潜在的な課題を見つけ出し、それをどういった方法で解決していくか、また解決したことでどう変化が起きるのかを企画書に落とし込むよう意識してみましょう。
普段からアイデアをストックする
アイデアマンとして知られる“ジェームス・ウェブ・ヤング”は、著書である『アイデアのつくり方』の中で、アイデアの定義を“既存の要素の新しい組み合わせである”としています。それでは、アイデアは具体的にはどのようにして生み出すのが良いのでしょうか。たくさんのアイデアを生み出し、ストックする方法を以下にまとめてみました。
参考:ジェームス W.ヤング『アイデアのつくり方』
【新製品から「新しい要素」を読み取り、自分の企画に置きかえてアイデアを貯める】
世の中には日々新製品がリリースされています。そういった製品について、「新しいポイントはどこなのか」「既存の製品とはどこが違うのか」を分析してみることで、新しい要素を発見することができます。そして、自分のテーマとは全く別分野の製品だったとしても、その発見した新しい要素を今自分の考えている企画に取り入れたとしたらどうなるのかを考えてみることで、新しいアイデアが生まれます。
【「面白い!」を口癖にして生まれたアイデアをストックする】
普段の会話の中で、直感的に面白いと感じたものについては「それ、面白いね!」と口に出すように心がけてみましょう。そうすることで、何が面白い部分なのかを自然と自分の中で深堀りできるのではないでしょうか。その面白いと感じた要素を自分のテーマに置き換えてみることで、新たなアイデアが生まれるかもしれません。日常の会話から生まれたアイデアを企画に活かすことで、アイデアをストックしていくことができます。
【貯めたアイデアを掛け合わせて、さらにアイデアを増やす】
アイデアが思いついたとき、ノートやパソコンに保存している人は多いのではないでしょうか。しかし、普段から思いついたアイデアを貯めていても、滅多に振り返ってみないのでは意味がありません。定期的にそれらのアイデアを見返してみるようにしましょう。その際、新たに改善を加えたり、別のアイデアと掛け合わせてみることで、新たなアイデアの発見にも繋がります。
プレゼンで通る企画アイデアの生み出し方
鼎談では、企画のプロたちであってもなかなか企画が通らないことがあると語られていました。そして通る企画の条件について、テレビのプロデューサーとして第一線を牽引し続けた三枝氏は「1.何かひとつでも新しいアイデアが盛り込まれているか、2.それに触れた人の生活が少しでも良くなるか、3.そのアイデアを人に共有したくなるか」の3点がそろっていることが大切だと語っています。
プレゼンで通るためのアイデアを出す方法について、他にはどのようなものがあるのでしょうか。有名なフレームワークを紹介していきます。
【 ブレインストーミング】
一緒に企画を考える仲間がいるのではれば、ブレインストーミング(ブレスト)を導入するのがオススメです。形式ばった会議ではなかなか発言しにくいような思いつきでも、発言できるのがブレインストーミングの特徴。リラックスしながら自由に意見を交換することで、普段は出ないようなアイデアが出てきます。
関連リンク:文部科学省「ブレインストーミングのやり方」
【KJ法】
何かのテーマについて思いついた意見を、付箋などに書いて蓄積し、それらをグルーピングしていく方法です。上記のブレインストーミングでは基本的に批判的な意見は発言しませんが、KJ法では、アイデアをより精査するために、批判的な要素も残しておくことが大切です。そうしてできたいくつかのグループを共通項でまとめたり、反対する要素を見つけることで、テーマにいての課題分析、新しい解決方法の発案が可能です。
関連リンク:Dropbox「KJ法とは|紙とペンだけでどんな問題も解決できる無限アイデア発想法」
【なぜなぜ分析】
ひとつのアイデアについて、「なぜ?」を繰り返す手法です。直感的に浮かんだアイデアだったとしても、多角的に「なぜ?」という疑問を投げかけ、それにきちんと回答できるようにアイデアをブラッシュアップしていくことで、理論的にも磨かれたアイデアとなります。
【マンダラート】
ひとつのテーマについて、課題解決のアイデアをひねり出すのに有効なのがマンダラート。まずは9×9のマスを用意し、中央にメインテーマを記入します。そしてその周囲8マスに、メインテーマから連想される語句を入れます。次に、8つの語句をそれぞれ中心にした9×9のマスを作り、同じように関連する語句を周囲8マスに記入します。そうすると、メインテーマに関連する81個の関連ワードが完成します。さらにその81個のワードから、類似しているものをピックアップしたり、一見関連性の低そうな関連ワードにフォーカスしてみることで、メインテーマについての新たなアイデアを発見できる手法です。
関連リンク:Dropbox「マンダラートとは?9つのマスで閃きが加速する一流のアイデア発想法」
世の中に求められている価値を見つける
プレゼンで企画を通すためには、きちんとターゲットを理解したうえで、効果的な課題解決方法を提案しなければいけません。そのためにはまず、ターゲットとするマーケットに対しての理解を深めることや、「その課題解決方法は、本当にターゲットのためになるのか?」などを検討する必要があります。そこで参考になるのがマーケティングの知識です。
マーケティングという言葉の定義について、日本マーケティング協会は「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」としています。そして、総合的活動のとしては「組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう」としています。
参照元:日本マーケティング協会「マーケティングの定義」
ここでは、マーケティングの業界で広く使われている課題の分析方法や解決方法を紹介していきますので、プレゼン作りの参考にしてみてください。
【3C分析】
3C分析とは、課題を顧客(Customer)、競合他社(Competitor)、自社(Company)の視点から考える課題抽出方法です。顧客は何を求めていて、自社ではどういったニーズ埋めることができるのか。また、自社と競合他社を比較して、どういったことが強みとして挙げられるかを考えることで情報が整理され、課題の抽出の手がかりとなります。
関連リンク:「実線する」Webマーケティング講座「3C分析とは?マーケティングの基礎を覚えて競合と市場を分析しよう」
【STP分析】
企画を練るに当たり、ターゲットをどこにするのかを決定するのに効果的なフレームワークがSTP分析です。STPとは、市場細分化(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)を示す言葉です。まずは市場にいる人たちを、共通するニーズを持った人たちで分類し、どこをターゲットにするのかを決定します。そして、そのターゲットに対して競合他社と比較しながら、自分はどのような立ち位置でいるのかを考えるという分析方法です。
関連リンク:LeadPlus「STP分析のコツとポイント。わかりやすい事例解説」
【4P分析】
物事をプロダクト(Product)、価格(Price)流通(Place)、プロモーション(Promotion)に分けて考える分析手法です。企画でやろうとしていることがターゲットに対してどのような価値を与えるものなのかを分析し、また、その価値に対しての価格を検討します。そして、流通では、企画が届けたい人に対してどのような形で届くのか、その経路を考えます。また、ターゲットに対して、その企画をどのように打ち出せば魅力的に映るかを分析していくのが4P分析といわれる手法です。
関連リンク:LISKUL「事例で解説!マーケティングミックス(4P)とは」」
プレゼンで通る企画の作り方のコツ
これまで見てきたことを、企画書の良い例と悪い例としてまとめたうえで、「通る企画書」とはどのようなものなのか、その作り方のコツを考えてみましょう。
【良い企画書】
- ・課題に対する解決策の提案になっている
- ・何度も練り直してブラッシュアップされている
- ・新しいアイデアが盛り込まれている
【悪い企画書】
- ・現状、課題、解決が明確に記されていない
- ・メリットを裏付けるデータが偏った視点のもの
- ・マーケティング的視点で分析されていない
改めて、「通る企画書」とはどのようなものなのか、そのポイントを下記にまとめてみました。
【メリットが伝わりやすい】
プレゼンを通じて、それを実現することでどのようなメリットがあるのかがしっかりと伝わることが、企画を通すための最低条件と言えるでしょう。
【多角的な視点での“なぜ?”に答えられること】
課題はなぜそこなのか、なぜそうしたアプローチをするのか、なぜその企画をやらなければならないのかなど、想定されるあらゆる“なぜ”について、答えられるように準備することが大切です。
【根拠はデータで見せる】
仮説の根拠を、データと一緒に説明することで、仮説が裏付けられ、企画の信憑性がぐっと増します。「おそらく??だと思うので」などの抽象的・主観的な表現を避け、誰が見てもその企画が最善のものであると判断できるようにするための情報を用意しておくことが重要です。
まとめ:企画を通すには諦めないことが大事
「通る企画の作り方」について、ここまでアイデアの発想方法や、マーケティング的な情報分析方法など、広い視点から、その作り方を学んできました。そしてそのコツは、「発見した課題に対して、多くの情報分析を根拠として用いながら、その解決策がベストであることを分かりやすく提示すること」だとまとめることができるでしょう。
しかし、完璧な企画書を作ったとしても、100%通るわけではないのが、組織の難しいところ。鼎談の中で3人のプロたちは、それでも企画が通らないこともあると発言しています。そしてそんな中でも大切にするべきことは「諦めずに企画を出し続けること」だと語っています。
ひとつの課題に対しての解決方法はいくらでもあります。ひとつの方法がダメだったからといって諦めないで、企画を出し続けることが、企画を通すための一番の近道なのかもしれません。
本記事に掲載されている鼎談は、そのやり取りを動画で観ることもできますので、是非チェックしてみてくださいね。
この記事の内容は、動画で詳しく見ることができます
※このコンテンツは、2016年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。
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