スキルアップ Vol.391

「指示待ち部下」「ゆとり世代」にはどう接する? “MC型授業”で知られるカリスマ教師が「新人マネジャーの5大苦悩」に回答【Vol.2】

業界問わず、全てのマネジャーが部下のマネジメントに対して、何かしら頭を悩ませているのではないだろうか。「チームに一体感が生まれない」、「部下のモチベーションが上がらない」、「今どきの若手社員は何を考えているのか分からない」etc.。そんなマネジャーたちの悩みに対して、「MC型授業」で名を知られるようになり、メディアでも話題の小学校教諭、沼田晶弘先生に一石を投じてもらおう。

扱いが難しいと言われる現代っ子たちのやる気を引き出し、数々の実績を残す“チーム”へと育て上げる彼は、まさに「現代版カリスマ教師」。そんな彼なら、企業で働くマネジャーたちの悩みにも一筋の光を差してくれるのではないだろうか……ということで、一般企業のマネジャーたちからアンケートで集めた生の悩みをぶつけてみた。

>>【vol.1】部下のやる気スイッチはどこにある? を読む
>>【vol.3】成果を挙げるチーム作りで大切なこと を読む

“MC型授業”で知られる、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生

“MC型授業”で知られる、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生

【Q2】あれこれ細かく指示をしないと動かない部下が多くて悩んでいます。そういう時はどうすればいいのでしょうか?

僕たちのクラスはいろんな賞を受賞することで注目されるようになりましたが、実はその10倍くらい落選もしています。50以上のコンクールに参加して、毎週落選通知が来ていますからね。それでも頑張れるのは、小さな成功体験があるからだと思います。

「やる気も自発性も、引き出すのではなく、自然と出てくるようにサポートしてあげることが大切です」

「やる気も自発性も、引き出すのではなく、自然と出てくるようにサポートしてあげることが大切です」

本当に小さくていいんです。今担任をしているクラスで最初に作った成功体験は、「時間内に掃除が終わった」とかでした。一つでも成功体験を作ってあげることができれば、その後、生徒は自主的に動いてくれるようになります。

例えば、僕たちのクラスはこの2年間、給食を残したことは一度もありません。まず蓋を開けた瞬間から、全員で食べ切れるように分担しています。これも、【課題】を最初に設定して、達成するたびに小さな成功体験として自覚してもらうというやり方。今では、僕が出張で学校にいない日も、「溢れるくらいのパンプキンスープ、飲み切ったよ!」などと生徒から報告が来るくらいになっています。

これは仕事でも同じで、部下が自発的に動かないというのは、マネジャーが部下に成功体験を積ませていないからだと思います。まずは「小さい成功体験」を一緒に作るところからスタートすればいいのではないでしょうか。

【Q3】いわゆる「ゆとり世代」と呼ばれる若手社員のマネジメントに悩んでいます。挫折経験がなく、競争意識も低くて……。どう接するのがよいのでしょうか?

そもそも、後輩を「○○世代」と一括りにして見ていること自体が間違いです。違う時代を生きてきた人を、自分と同じ尺度で測れるはずがないじゃないですか。

「挫折したことがないメンバー」と言いますけど、そもそも挫折っていいことなんでしょうか? 確かに、僕たちの世代は失敗しても失敗してもガムシャラに頑張る星飛雄馬みたいなキャラクターに憧れたりしましたが、今の時代はそんな子、ほとんどいませんよ。

また、少し前に流行った『ドラゴンボール』では、何だかんだ言ったって主人公の孫悟空が一番強いけれど、今流行っている『ONE PIECE』はチーム戦です。こうやって時代が変わってきているのに、自分の価値観を押し付けても意味がないんです。まずは、マネジャー自身が「自分が正しい」という考えを一度捨てる必要があります。

自分が積み上げてきたものを一旦捨てるのは、とても勇気がいることです。実際、それができる人ってほとんどいないのではないかと思います。ただ、革命を起こす経営者って、あっさりと自分のやってきたことを崩せる人だと思うんですね。ソフトバンクやユニクロが成功しているのも、経営者がこの「捨てる勇気」を持って時代に対応してきたからじゃないですかね。

それと、視点を変えてみるのも大切ですね。「ゆとり世代」なんて言って悪いところばかり見られがちですが、例えばゆとり世代のコンピュータスキルの高さは目を見張るものがありますよ。僕のクラスの子どもたちは、PowerPointを使って歴史の勉強資料を作っていますが、正直僕とはスキルのレベルが違います。生徒の方がはるかに上手いんです。

人間ってやっぱり、悪いところを直すより、褒めてあげないと耳を閉じるので、良いところを見てあげないとダメなんですよ。僕のクラスだって悪いところだらけだと思いますよ。そこにあんまり目を向けていないだけで(苦笑)。

もちろん、生徒を叱らなければならない時はありますが、悪いところの指摘の仕方も、強く言うと「聞きたくない」という思いが先行してしまうので、自分で気付くことができるような言い方をします。自ら気付くのをアシストしてあげるような感覚です。

普段の会話で、「お前は漢字が弱点だよなー。漢字さえできれば、すごいんだけどなー」なんてポロッと言うと、「漢字ができるようになれば、俺は完璧になれる!」とモチベーションが湧いてきますから。これは、面と向かって指摘すると弱点克服の押し付けになり、重荷になってしまうので、“ポロッと言う”のがミソですね。

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取材・文・撮影/光谷麻里(編集部)

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