スキルアップ Vol.393

成果を挙げるチーム作りで大切なこと~ “MC型授業”で知られるカリスマ教師が「新人マネジャーの5大苦悩」に回答【Vol.3】

業界問わず、全てのマネジャーが部下のマネジメントに対して、何かしら頭を悩ませているのではないだろうか。「チームに一体感が生まれない」、「部下のモチベーションが上がらない」、「今どきの若手社員は何を考えているのか分からない」etc.。そんなマネジャーたちの悩みに対して、「MC型授業」で名を知られるようになり、メディアでも話題の小学校教諭、沼田晶弘先生に一石を投じてもらおう。

扱いが難しいと言われる現代っ子たちのやる気を引き出し、数々の実績を残す“チーム”へと育て上げる彼は、まさに「現代版カリスマ教師」。そんな彼なら、企業で働くマネジャーたちの悩みにも一筋の光を差してくれるのではないだろうか……ということで、一般企業のマネジャーたちからアンケートで集めた生の悩みをぶつけてみた。

>>【vol.1】部下のやる気スイッチはどこにある? を読む
>>【vol.2】「指示待ち部下」「ゆとり世代」にはどう接する? を読む

“MC型授業”で知られる、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生

“MC型授業”で知られる、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生

【Q4】メンバーに本音で接してもらえていない気がします。心を開いてもらうにはどうすればいいですか?

本音で接する関係を築くには、大前提として「信頼関係」が構築されている必要があります。信頼関係って言うと、マネジャーは「飲みに行く」って発想になる人が多いんですけど、そうじゃありません。

今話したような普段の会話だけでも、やり方とコミュニケーションの量で信頼関係を築くことはできます。わざわざ飲みに行かなくても、部下の机にコーヒーをポンと置いて、「この前どうだった?」なんていうちょっとしたコミュニケーションを自分から取るだけで、部下は話しやすくなると思いますよ。上司の席にコミュニケーションを取りに行くのって、実は結構ハードルが高いですから。

マネジャーなら自分の席に座ってないで、自分から話しかけに行くべきです。私も授業中、皆が問題を解いている時、教室を歩き回って「最近どうなの?」なんて声を掛けたりしています。「問題やってる時に雑談するな」なんて生徒に怒られることも多いんですが(笑)。

ちなみに私は、先生業の傍らで、企業向けに「信頼構築プログラム」というものも行っています。これは、職場でメンバー同士の信頼関係を深めたい、という企業から依頼が来て行うプログラムなのですが、大体2時間もやると皆フレンドリーになります。

プログラムの内容はシンプルで、いくつかのゲームをチームでやるというもの。例えば、「20本のストローとセロハンテープを用意するので、生卵を2メートルの高さから落としても割れないよう細工をしてください」といったテーマを与えます。

そうすると、皆「ああでもない、こうでもない」と言いながら始めるんですね。これって、リアルな職場だとなかなかできないことなんです。生卵が割れるかどうか、なんていう些細なテーマだから気兼ねせず意見が言えますが、仕事の現場だと「あの人は上司だから」とか、「他部署の人だから」と遠慮して意見が言えないのです。

こんな風に、他愛もない話をしたり、仕事の現場でも意見を交わす機会を増やしたりすることで、接する時間が増えると自然と信頼関係というのは築かれていくのだと思います。

【Q5】チームが「ただの仲良しグループ」になってしまいがちです。「成果を挙げるチーム」に変えるには、どうすればよいでしょうか?

最初の話にも通じてきますが、成果目標を意欲の湧く目標にしてどんどん上げていけば、仲良しグループでも成果を挙げられると思いますよ。

「人間関係の根底にあるのは『信頼』。全てはそこから始まります」

「人間関係の根底にあるのは『信頼』。全てはそこから始まります」

また、ビジネスの世界ではよく「チームマネジメント」の話が出てきますが、結局は個の力なんですよ。個の力が高まれば、チームの力も高まる。先ほど話した、企業向けの信頼構築プログラムでも、プログラム終了後に企業の担当者に「○○さんは自分で何でもやるタイプですね」、「△△さんはメンテナンスタイプですね」といった感じでフィードバックするんですね。理由は、それぞれの個性を活かせる配置をマネジャーができるかどうかで、チームの成果って変わってくると思うからです。

僕の担当するクラスでも、運動会のリレー競争の時などはこういう考え方で“マネジメント”をします。直近の運動会では1位を取ったんですが、ここにも個の力を引き出す秘密がありました。

リレーって、前を走ると後ろが気になってついつい振り返っちゃうじゃないですか。前に誰もいなければ、どんなに足の速い子でも気が抜けるし、スピードも落ちる。だったら前だけ見て走れるようにすればいい、ということで、「チームとして○○秒を切るタイムを出そう」というルールを作ったんです。

すると、足の速い子がレースで先頭に立っても、皆が一喜一憂しなくなるんです。1位でバトンを渡せても、「うわー!これで何秒経った!?」なんて言いながら戻ってきます。「自分は1位だった」ではなく、「チームのために自分の力を最大限出そう」という考えに変わるんです。

こうやって工夫しながら、マネジャーが個の力を見極めて引き出せれば、チームの成果は変わってきますよ。

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取材・文・撮影/光谷麻里(編集部)


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