先輩起業家に聞く20代の過ごし方~崇高な理想よりも、有益な情報よりも大切なこと
いつかは起業も視野に入れているけど、今は目の前の仕事で精一杯……。自身の今後のキャリアについてなかなかじっくり深く考える機会がない若手ビジネスマンは多いだろう。
そこで20’s typeの姉妹媒体『typeメンバーズパーク』が新イベント『キャリアサークル』にて、「これからの時代を戦う!平成生まれのキャリアとは!?」と題したイベントを開催した。
登壇したのは、会社員を経て起業を選択した、マネジメントソリューションズ高橋信也氏、manebi田島智也氏、UZUZ今村邦之氏の3人。企業の経営者3人が自身のキャリアやターニングポイントとなった出来事などを中心に、どんな経験が自身のキャリアに役立つのかを語ったトークセッションの模様をレポートしよう。
起業を考えるなら「自分自身のキャリアの先」を見据えよ
登壇した3人が若くして起業しようと思ったターニングポイントは何だったのか。3人に共通していたのは、起業したのは単に市場のニーズを分析してビジネスチャンスに飛びついたのではなく、自身の歩んできたそれまでのキャリアに紐づいた、内的な動機に基づくものだったということだ。
マネジメントソリューションズの高橋氏は新卒でアンダーセンコンサルティングに入社。その後も一貫してコンサル畑を歩んできたが「コンサルタントとして一流になるには、クライアント側も一度経験しておく必要がある」と考え、大手メーカー系のシステム開発会社へと転職した。ここでの経験からPMOビジネスの持つ可能性にいち早く気付き、30代半ばで独立し、PMOのアウトソーシングサービスを提供する会社を立ち上げることになった。
UZUZの今村氏が第二新卒向けの転職サービスを手がけているのも、自身の経験からくるものだという。今村氏は新卒で商社に入社したが、心身を持ち崩してあっという間に退社を余儀なくされる。第二新卒として拾われた2社目もすぐに潰れたため、転職先が全く見つからないという状況に陥った。こうした苦境に置かれた今村氏が、借金をして潰れた会社を買い取り、なんとか立て直したのがUZUZ。つまり、サービスのユーザーはかつての自分ということだ。
manebiの田島氏は、勉強してこなかった自身の学生時代にコンプレックスを感じていた。生きる意味を見失いかけていたところで前向きになれたのは、就活中に出会った何人かの起業家や、女手一つで自分たち兄弟を育てた母親という、「かっこいい大人」の存在だったという。最初は普通に就職し、退社して一度は仲間とデザイン会社を立ち上げたが、その後自身の原点に立ち返るようにして「先人たちを真似ることで学ぶオンライン学習サービス」という現在の会社を興すに至っている。
起業が内的動機に基づいたものだということに加え、一方ではそうした「答え」らしきものに一直線にたどり着いたわけではないというのも、3人に共通した点と言えるだろう。やりたいことややるべきことというのは最初から見えているわけではなく、試行錯誤を重ねる中で徐々に見えてくるものだというのは、今回のセッション全体を通じて最も強調されていたポイントだった。
恐れず飛び込むことが、成長のトリガーになる
では、実際に起業したり、興した会社を経営したりしていく上で、20代で身に付けたどのような能力が役立っているのだろうか。この質問に対しても、3人の答えは非常に近しいものだった。
高橋氏の言葉を借りれば、最も重要なのは「失敗にめげないメンタリティー」ということになる。「起業や経営には失敗がつきもの。それをいちいち気にしているようではやっていられない」(高橋氏)。
高橋氏の場合は、それを学生時代のアルバイトやイベント主催経験から身に付けた。800人規模のダンスイベントを主催した際には大赤字に終わるなど、若いうちからいくつもの失敗を経験したが、そのことにより失敗への耐性がついていったという。
今村氏は高橋氏とは異なり、大学卒業時点ではそうした能力が足りなかったと自覚している。「新卒で入った会社で体を悪くしたのは、今にして思えば忍耐力が足りなかったから」(今村氏)。それが明確に身に付いたと思えたのは、むしろ起業した後だ。「起業すると、雇われて働いていた時とは比べ物にならないくらいの責任感を背負うことになる。そうした環境に身を置くことで忍耐力がついたし、頭の回転も自然と速くなっていった」(同)
ただし今村氏は起業する以前にも、学生時代に身一つで米アラバマ州の大学に留学するなど、失敗を過度に恐れることなく、まず飛び込んでみるという姿勢を持っていた。留学先ではいろいろ苦しい経験もしたというが、リスクを考えて挑戦しないままでは、成長のチャンスをつかむことはできないということ。この点は田島氏の話にも共通している。田島氏はあえて「居心地の悪いところに身を置く」ことを意識的に繰り返してきたという。
「大学生になるまで女性と話すのが苦手だったが、109の女性しかいない環境でアルバイトをしていたら、気付いた頃には全く苦手ではなくなっていた」(田島氏)。起業しようと思って飛び込んだ起業塾でも、周りにいるのは自分より優秀な人たちばかりで、当初は打ちのめされたような気持ちになったという。しかしそのことが刺激になって、新たな学びの意欲を喚起する。こうした学びのサイクルが、コンプレックスの塊だった田島氏を現在の場所まで引き上げているのだという。
天職は簡単には見つからないもの。心配せず、目の前の仕事に全力をだせ
セッションの最後では、20代のうちに持っておくべき視点について、3人がそれぞれアドバイスを送った。そこで強調されていたのは、崇高な理想を掲げたり、情報に振り回されたり、失敗を恐れて考え込んだりするよりも、「まずは目の前のことにがむしゃらに取り組むこと」の重要性だ。
「今は情報はいくらでも手に入る時代だが、若い世代はそれに触れすぎている。自分なりの価値観や考えを作るのは実体験だ」と高橋氏が話せば、今村氏も「幅広くやっているだけでは全てが浅いから武器にならない。目の前のことに一生懸命になることが自分なりの武器を作るし、やりたいことも次第に見えてくる」と同調。さらに田島氏が「チャンスは思わぬ形でやってくるが、その時反応ができるのは準備ができている人だけ。一瞬一瞬を頑張ることが、その準備になる」と続けた。
モデレーターを務めた慶應義塾大学大学院特任教授の高橋俊介氏も3人の話に深く頷きつつ、「キャリアは川下りから山登りになると言われる。最初は次々現れる目の前の岩に向き合うだけだが、ある時ふと見上げると自分が登りたい山が聳えていることに気付くという意味だ。自分の登るべき山が見えてくるまで、20代は失敗を恐れずに目一杯試行錯誤をして欲しい」と総括。やりたいことは簡単には見つからないものなのだから、焦る必要はないと背中を押していた。
※本記事は2017年3月に『typeメンバーズパーク』にて掲載されたものを一部編集して公開しています。
▼編集部オススメの求人特集
■年収600万以上が見込める未経験OKの仕事一覧を見る
■『年間休日120日以上』または『完全週休2日制』の正社員求人を見る
■転勤がない営業求人を見る
RELATED POSTSあわせて読みたい
「そのうち辞めるから」で本当にいいの? “両立不安な営業女子”がキャリアチェンジに成功した理由/Retty株式会社 小山由香理さん
“華麗なる転身”を遂げた男たちが語る、キャリアチェンジ成功に必要な覚悟/元電通・芦名勇舗×元Jリーガー・嵜本晋輔
「交わした何千何万の名刺の中に、人生を変える出会いがある」ビール業界の革命児が語る営業職のオイシさ
「お客さまは神様なんかじゃない」サイボウズ青野慶久氏が提言する、営業職の働き方改革