キャリア Vol.585

MC・晋平太が世間体を気にする20代をdis!「手にした瞬間にどうでもよくなるようなものに縛られんな」

「親に反対されるから」「周りもやってるから」――多様な生き方の選択肢がある現代でも、周りの目を気にして、やりたいことを諦めてしまう人は多いだろう。そんな20’sたちに、この人からアドバイスをもらった。ラッパーの晋平太さんだ。

ミュージシャンとして音源制作の傍ら、多くのMCバトル大会で数々のタイトルを手にしてきた晋平太さん。人気番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)では、前人未到の完全制覇を達成した。しかし彼も、決して順風満帆なキャリアを歩んできたわけではない。

決して国内市場が大きくないヒップホップの世界で、郵便配達の仕事をしながらラッパーを目指した20代。晋平太さんのキャリアを振り返りながら、彼に勇気をもらってみよう。

晋平太(しんぺいた) さん

1983年東京都生まれ、埼玉県狭山市育ち。2004年にアルバム『SHOW ME LOVE』でデビュー。フリースタイル(即興)のMCバトルを得意とし、数多くの大会で優勝。05年『B-BOY PARK MC BATTLE』、10年、11年『ULTIMATE MC BATTLE(UMB)』で2連覇を果たし、さらに地上波唯一のラップバトル番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)では史上初の完全制覇を達成。現在は学習支援教室でのラップ講座や企業向けワークショップなど、ラップの新たな可能性を開拓中。
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ダメダメ郵便配達員だった20代。
それでも「ラップを捨てたら自分じゃなくなる」のが怖かった

俺がラップを好きになったのは、MTVでZeebraさんのパフォーマンスを見たことがきっかけです。

ラップってアメリカ文化のイメージがあったけど、日本人でもこんなにカッコいい人がいるのかと衝撃を受けて。そこからヒップホップの世界にドはまりして、18歳くらいからは本格的にラッパーになりたいと思いました。

21歳でCDデビューして、『B-BOY PARK』(日本最大規模のヒップホップイベント)のMCバトルで優勝もした。それでも、ヒップホップって国内市場が小さいから、その世界で生きていける程ではなかったんですよね。

その頃は生活のために、郵便配達の仕事もしていたんです。5~6年は続けたかな。もちろん僕はラッパーなので、誰かにメッセージを届けたくて郵便配達の仕事を…ってんなわけねえだろ(笑)。

給料が良くて、日中は一人で外を周る仕事だったので、音楽活動の傍ら生活費を稼いでいたって感じですね。ただ、俺は荷物の誤配率が支店内でトップクラスの、めっちゃダメダメな配達員でしたけど(笑)。当時の上司には本当に申し訳ないと思うけど、やっぱり好きなことじゃないと自分はうまくできないっていうのを学びましたよ。

晋平太

20代後半って、一般的に見れば「フラフラしてないで定職につけ」って年齢かもしれません。けど不思議なことに、自分の今後の人生や、音楽活動に関しては全く不安や焦りがなかったんです。

一方で、「自分が思ってる自分になれていない」ことへの葛藤はありました。本当にやりたいことがあるのに、郵便配達をしてる今の自分を受け入れてしまったらどうしようって。

でも俺の場合、自分で言い出したら曲げない性格だって、周りの人が理解してくれていた。妻も、「ラップを諦めろなんて言ったら、あなたが死ぬ間際に恨まれそうで嫌だ」っていっていました(笑)。

ラップを続けなかった後悔と、ラップばっかやっちゃったなぁっていう後悔は違うと思うんです。どうせ後悔するなら、ラップばっかやっちゃったけどあの時楽しかったなーって思って死にたいと思ったんですよね。

カッコいい人になりたいから、弱音は吐かない。

俺、こういうインタビューを受けるとよく「苦労されてますよね」って言われるんだけど、自分自身は全く思ってないんですよね。ハンパじゃなく前向きだから(笑)。もちろん嫌なことも、辛かったこともあったけど、それは絶対に言わないって決めてるんです。

俺がラップをやるのは「カッコいいから」っていう単純な理由なんですけど、同じようにどんな時でも「自分が思うカッコいい奴になりたい」っていうのが行動基準。前向きな奴、っていうのもその基準だと思ってるんです。だから辛い、嫌だ、とか思わないようにしてる。それで他の人が「晋平太を見てたら、なんだか前向きになるな」なんて思ってくれたら最高にカッコよくないですか?

晋平太

俺はこれからも、ラップに関わることを仕事にしていきたいって思っていて。今はラッパーの社会的地位も上げていきたいと思っています。

ラップってまだまだアンダーグラウンドなイメージも強いですし、例えば友達が「うちの旦那の職業はラッパーです」なんて言ってたら皆、直感的に「ヤバい」って思うでしょ? うちの妻にはそういう思いさせてるんだけどね(笑)。だからもっともっと、ラップの市場を広げてメジャーにしていきたいから、CDだけじゃなくていろいろな活動しているんですよ。

自分で音楽をつくる、イベントやMCバトルの司会をやる、最近では一般企業に出向いてラップ講座をやったりもしています。ラップって自分を自由に表現できるから、意外と普通の会社員の人でもノリノリでやってくれるんですよ。

晋平太

自分を自由に表現することって、本来ビジネスとかキャリアにおいても大事なことだと思うんですよね。それがラップという形でも表現できるということを伝えたいです。

どっちを選んだら後悔するか、自分の心に聞いてみろ

晋平太

夢を諦めなかった理由って言ったら聞こえがいいけど、何事も自問自答することは、今でもすごく大切にしています。どっちを選んだら俺は後悔するんだろう、って。

例えば周りからすごく圧力をかけられて、自分が折れなきゃいけないこともあるかもしれない。でもそれで折れて後悔する自分と、絶対受け入れられない自分を比べてみるんです。それがどっちが正しいとかもないし、その時点で答えは出ないんだけど、とにかく考える。選択を大事にしてるってことですかね。

その時、周りの雑音が気になる人も多いかもしれません。でも、周りの言うことって結局、本当は関係ないじゃないですか。悩んでいる人がいるなら、僕がリリックに書いたことを伝えたいと思います。

一番好きな人の頑張れ。
一番いやな奴のくたばれ。
歓声も罵声も少し黙れ。
自分に言い聞かせるふんばれ。

良いときも悪いときもあるし、人の噂なんて75日。どうせ皆忘れるし、覚えてるのなんてお前だけだから。気にしないで、自分をどう奮い立たせるかを考えた方がいいと思います。

悩んでる人には「お前の人生、自分以外に惑わされるのはバカらしい。関係ねえじゃん」って言いたいですね。

晋平太

例えば会社員で、「課長になりたい」って人がいるとします。でもそこに自分の意志がなかったら、結局世間体を気にしてるじゃないですか。きっとその人はいざ課長になっても、それだけじゃ満足できないと思うんですよね。世間が決めた肩書きとかって、ゲットした瞬間にどうでもよくなっちゃうものですから。

そういう世間体を守ったところで、何かご褒美でもあるんですかね? すごく極論ではありますけど。今の20代は、そういうことに気付き始めてる人も多いんじゃないかなと思いますよ。自分の人生は、自分で決めて進んでいくこと。シンプルですけど、それが後悔しない人生に繋がっていくんじゃないでしょうか。

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取材・文・撮影/大室倫子(編集部)


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