転職 Vol.665

“とりあえず大手”に新卒入社した25歳が、3年目でベンチャー企業の営業職に転職して分かったこと

教えて、等身大のキャリアヒストリー
初めての転職には不安がつきもの。そこで、転職を通じて自分が望むキャリアを掴み取ってきた20代会社員の姿をキャッチアップ! 皆、転職する上でどんな不安や悩みを乗り越えてきたのか……? 転職活動を始める前に、等身大のロールモデルを探してみよう!

“働く”というイメージがいまいち湧いていなかった学生時代。「とりあえず大手で、安定している会社に」と就職活動を進めていた人も多いのでは? 今回、インタビューしたSansan株式会社の長谷川嵩さんもその一人。新卒では希望通り、大手楽器メーカーの総合職として入社した。

しかし彼は入社3年目の時に「ビジネスマンとして、自分の力を高めたい」と転職を決意した。新しく選んだ舞台は、当時わずか社員数100名ほどのベンチャー企業。しかも、未経験の営業職だったという。

長谷川さんが「理想だったはずの会社」を辞め、Sansanへの未経験転職を決めた先に待っていたものとは?

Sansan長谷川さん
Sansan株式会社 長谷川嵩さん

就活では100社の選考を受け、念願の“皆が知ってる企業”に入社

大手有名企業を中心に就職活動をしていた長谷川さんは、2012年に社会人人生をスタートさせた。

「目立ちたがり屋な性格だったこともあって、とにかく『誰が聞いても分かる企業』に内定をもらうために100社の選考を受けました。最終的に音楽が好きだからという理由で楽器メーカーに入社を決めましたが、正直、特に強く志望していたわけでも、何かやり遂げたいことがあったわけでもありません」

入社後は3カ月間の手厚い研修を経て、IT系の子会社に出向することになった。そこでは、広告出稿やWebサイトの改善業務などを担当。周りの先輩たちにも恵まれ、安定した給与、働きやすい環境に感謝する一方で、「自分はこのままで良いのだろうか」と考えることが日に日に増えていったという。

Sansan長谷川さん

そんな焦燥感を募らせていた3年目の夏。学生時代の先輩の紹介で出会った、ベンチャー企業で働く同年代の姿を見て、その焦りはさらに加速していく。

「彼の仕事に対する価値観を聞いて、衝撃を受けました。ベンチャー企業で働いていた彼は、入社1年目にも関わらずトップ営業で、新卒採用担当も兼任し、社長直下で経営に近い業務をこなしていました。彼は前職で出会った誰よりも情熱的でしたし、人生を心から楽しんでいるように見えました。年収や安定性は僕の会社の方が勝っていましたが、そんなことよりも、”たった一度きりの人生の中、なぜ仕事をするのか”という意味を追求し、全力疾走している姿がとにかく輝いて見えたんです。

ちょうど僕は『20代は仕事に全ての熱量をぶつけたい!』と思っていたのですが、会社の先輩たちは安定性やワークライフバランスを求める人が多く、僕だけが終電まで仕事するような状態が続いていました。周りとの温度差を感じてモヤモヤしていたんです。そんなタイミングだったので、“熱量高く仕事に取り組めて、成長できるベンチャー企業”にとてつもない魅力を感じました」

「たとえ年収が下がったとしても、大手からベンチャーへ行きたい」。そんな気持ちを抱くようになった長谷川さんだったが、周りにはなかなか賛同されなかったという。

「転職することに対して家族や当時の恋人には猛反対されました。でも学生時代の先輩一人だけは『現状に対するネガティブな悩みより、チャレンジすることで生まれるポジティブな悩みの方が100倍いい。明日辞表だせ!』と背中を押してくれたんです。転職を考え始めてから1カ月くらい悩んで動けなかったんですけど、『今のままじゃだめだ』と確信して。お金や働きやすい環境より、人生の充実感を求めていたんだと思います」

いくつ内定をもらっても、“本質”を考えられなければ不満は解消されない

Sansan長谷川さん

そうしてベンチャー企業への転職を決断した長谷川さん。在職中に、スタートアップ企業を中心に15社程度の選考を受けた。学生時代に100社の選考を受けた経験から、一般的な面接テクニックは分かっていた。結果的には“面白いほど”に選考を通過していく一方で、「ここだ!」という決定的な1社には巡り合えなかった。

腹落ち感はなかったが、転職はこんなものなのかもしれない。ベンチャー企業でスピード感を持って仕事ができれば、どこでも良い。そんな考えで受けた会社の一つが、Sansanだった。「転職活動を終わらせることに対して自分を納得させるために面接を受けただけで、受かるつもりも入社するつもりもなかった」と、業務内容もよく理解しないまま面接に臨んだ長谷川さんだったが、これまで何社も内定を得ていたいつものテクニックは、驚くほど通用しなかった。

「面接官の人事部長に『お前が転職したい理由がよく分からない。それが本心なのか?』と何度も言われたんです。僕はそれらしい言葉を並べているはずなのに、この人には通用しない。テクニックで面接しているのが見透かされてるんです。どう考えても上手く答えられなくて、『すいません、正直自分でもよく分かっていませんでした』と答えました」

「ここの会社には落ちた」と悟ったが、「分からないことを分からないと素直に言う姿勢」と「仕事にコミットする姿勢」が評価され選考は通過。次までに「転職したい理由を改めて突き詰めること」との条件付きで二次面接に進むことになった。

「きっと僕は、ウケの良い答えを用意して、それを自分の正解にしていたんでしょうね。もしあの時面接官が、自分の“本質をえぐる”ような質問をしてこなければ、僕は新卒のときと同じ失敗を繰り返していたと思います。何事も“うまいことやる自分”に嫌気が差しました。でも、物事の本質をしっかり見ようとするSansanでなら、上辺だけじゃなく人生をかけて仕事に向き合うことができるんじゃないか。そう思って、入社を決めたんです」

「Sansanに就職した意味」を繰り返し内省し、乗り越えた未経験の壁

Sansan長谷川さん

こうしてSansanに入社し、配属されたのは営業の部署だった。未経験の営業職を志望したのは、長谷川さん本人だ。

「僕、根本的に人とのコミュニケーションが苦手だったんですよ。きっかけや共通の話題がないのに話しかけることができない。だから今までは、サークル長だったり何か役割のあるポジションを志願することが多かったんです。そうすれば『今度のイベント、どうする?』とか、周りとの話題がつくりやすいですから。

でも、本当はそんな自分がすごく薄っぺらいと分かってて、ずっとコンプレックスだったんです。一方で、今後どんなキャリアを積むとしても、このコンプレックスから逃げ続ける限り成長はないとも感じていました。そこで人との摩擦を数多く経験して本質的なコミュニケーションができるようになりたいと思い、営業職を志望しました」

営業職として、最初に経験したのはテレアポ。そもそも客先に電話をかける経験も乏しかった長谷川さんは、思ったように営業トークをすることができなかった。自分よりも社会人歴の浅い社員が、当たり前のようにアポを獲得していく中で、何もできない自分がもどかしかった。

「自分が周りの社員と比べて劣っていると、当時はひどく落ち込みました。でもその度に上司に相談させてもらったり、僕がなぜSansanに入社したのかを繰り返し自分で振り返っていたんです。せっかく転職したのだから、負けてられないという気持ちもありましたね」

何度も内省しながら、自分がどうすれば成果を出せるようになるのか、試行錯誤を続けた。

「内省を繰り返しているうちに、Sansanで働く理由がクリアになっていったんです。前職では『このサービス、誰が使うんだろう? 意味あるのかな?』と思うような仕事もありました。でも、Sansanは、名刺管理を入り口に世の中の出会いのあり方を変えることができるサービスです。自分が営業として仕事にコミットすることで、今あるビジネスの当たり前を変えることができる。そして、仕事へのコミットを通じて、自分自身も成長できる。それが”今自分がSansanで働く理由”として明確にピン留めされたんです。」

働く理由を明確にし、ひたすら数字にこだわって行動していく。そんな日々を過ごしていると、落ち込んで立ち止まっている暇はなくなったと当時を振り返る。

「目の前の仕事に全力で取り組む中で、自分なりの営業スタイルができてきました。売ろうとするのではなく、相手の立場に立ち、理解した上で、自分やサービスがどう役に立てるのか考えることができるようになるにつれて、営業実績は上がっていきました」

稼ぐためではなく、なりたい自分を実現するために仕事をする

Sansan長谷川さん

右も左も分からない営業職に転身してから約4年が経った。その間に、長谷川さん自身の仕事に対するスタンスにも変化があったという。

「前職では『仕事は稼ぐためにする』ものだと割り切っていたんです。でも、本質的に物事を判断するこの環境で内省を繰り返したことによって、自分にとって仕事とは”なりたい自分を実現する手段”だと捉えるようになりました。Sansanで働くことを通して、”サービスの価値を届けて世界を変えることと、自分自身の成長を重ねる”という働く理由が研ぎ澄まされただけでなく、人生において自分が何に喜びを感じるのか、何を実現したいのか、ということが明確になったんです。」

長谷川さんは、2019年1月に営業部のマネジャーに就任した。かつての何事も無難にこなしていた、「薄っぺらい自分」はもういない。これからの未来を見据える姿は、自信に満ち溢れている。

「僕は、誰かの人生にとって特別であり、ポジティブな存在であれたときに喜びを感じます。これからはマネジャーとして、自分が上司にしてもらったように、メンバーの人生に深く関わりながら、メンバー自身が仕事に本質的な意味付けができるよう手助けしていきたいですね。自分と関わることで、メンバーが少しでも『自分の人生は最高だ』と思えることが増えたら、僕も最高に嬉しいです」

<長谷川さんの転職File>

転職時期:新卒入社3年目(25歳)
活動期間:3カ月
応募企業数:15社
内定社数:3社(選考途中で10社程度辞退)

取材・文/於ありさ 企画・編集/大室倫子

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