スキルアップ Vol.679

「3年前まで普通の記憶力」だった“記憶力現役日本チャンプ”が伝授する、商品スペックの覚え方

4月は新しい出会いや仕事を経験する人も多く、何かと覚えることが増える時期。暗記が苦手な人にとっては苦しい時期だが、記憶力を競う競技「メモリースポーツ」の第一人者である平田直也さんは「記憶は先天的な能力ではなく、誰でも簡単に習得できるテクニックだ」と話す。

前編:「記憶力」日本一が教える、他人の“顔と名前”の覚え方「訓練すれば1分間で30人覚えられます」

後半の本記事では、型番や機能、特徴、価格など、複数の要素が含まれる「商品やサービスのスペックを覚えるコツ」を教えてもらおう。このワザを習得できたら、きっと自社の製品やサービスをスマートに説明できるようになるはずだ!

平田直也さん

平田直也さん

1997年東京生まれ。現在商学部に通う大学3年生。大学入学の直前の春休みに、記憶力を競うメモリースポーツ(記憶力競技)の世界に足を踏み入れ、トレーニング開始からわずか2年で日本一に。以来、国内外で開催される競技会の上位入賞者に度々名を連ねるようになる。現在は、メモリースポーツの現役世界ランカーであり、選手を育成する塾「Brain Sports Academy」で講師も務める。2019年2月『世界最強記憶術 場所法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓した

「私、記憶力が悪くて……」は、覚え方が悪いだけ!?

平田さんは、今でこそランダムに並んだ数字を5分間で200桁以上覚えることができるような、記憶術の達人。しかし「メモリースポーツ」に出会うまでは、記憶力はごく普通の学生と大差ないレベルだったという。どうしてそんな人がわずか2年で日本一になることができたのか。そこには、これから記憶力アップを目指すビジネスパーソンにも役立つヒントが隠されていた。

「記憶術の習得を通じて、“覚え方”と“思い出し方”を身に付けられたのが大きいです。学生時代を思い返しても、学校で先生に『これを覚えなさい』と言われたことはあっても、覚え方や思い出し方を習ったことはありませんでした。だからほとんどの人と同じように、暗記はあまり得意ではなかったんです」

しかし、メモリースポーツに出会い、競技に必要な記憶力は先天的な才能ではなく、正しいメソッドを覚えてトレーニングすれば誰でも鍛えられることを知り、俄然やる気が出たと笑う。

「これまで効率的な覚え方を知らなかったのですから、苦手意識を持って当たり前でした。よく『私は記憶力が悪くて……』という人がいますが、そういう方でも記憶の仕方をちゃんと学ぶことで、自分の知られざる能力を発見できるのではないかと思います」

そこで今回は、特に苦手意識のある人も多そうな「商品やサービスのスペック」を覚えるコツを聞いた。型番や機能、特徴、価格など、複数の要素を覚えなければいけない場合、果たして“普通のビジネスパーソン”にも応用できる覚え方はあるのだろうか?

複雑なものほど、一度覚えたら心に残りやすい

詩歩さん

「前回、人の名前と顔を一致させるには、自分なりに意味付けしたり、記憶を呼び起こすフックを多くした方がいいと言いましたが、これについては商品やサービスも同じです」

とはいえ、型番や機能、特徴、価格をバラバラに覚えるのでは効率が悪そうだし、関連性を見つけるのも一苦労だ。その場合は、どこから手をつければいいのだろうか。

「記憶術の1つに『場所法』というメソッドがあります。無機質な数字や記号を一気に覚えるのに有効な方法なのですが、初心者が挑戦するにはちょっとハードルが高いので、もう少し簡単な方法をご紹介します」

【ポイント1】開発ストーリーを調べ、記憶のフックをつくる

「前回、人間の脳は意味があることの方が覚えやすいという話をしました。それと同じように、人の脳は、面白いストーリーや思い入れが深いモノ、好きになったモノを自然と覚えてしまうという特徴があります。商品開発には、大なり小なりドラマがつきもの。可能であれば開発した当事者に話を聞いたり、関連するプレスリリースやインタビュー記事などがあればそれらを読んだりして、商品の背後にあるストーリーを知る努力をしてみましょう。そこで得た情報自体が記憶のフックになりますし、覚えたことは顧客などに商品を説明する際にも役立つはずです」

この商品は、従来のモデルを使ってくれていたユーザーさんから『子どもにも使いやすいものにしてほしい』という要望が多かったため、作られました。だから従来のモデルと比べてボタンが少なく、値段も5000円ほど安くなっています

【ポイント2】商品群を価格やスペックなどの特徴で分け、構造化する

「覚えたい商品やサービスを、カテゴリーやジャンルごとに記憶していくと、単品ごとに覚えるよりも、知識が構造化されやすくなり、記憶の関連性が強く意識されます。カテゴリーは大分類、中分類、小分類と分けるのもいいですし、ハイクラス、ミドルクラス、エコノミークラスと分けても構いません。そうして自分で分類する作業をすることで、記憶が定着しやすくなる効果もあります」

クラス別に分けるなら商品AとBはエコノミークラス、商品CとDはハイクラス。ユーザー別に分けるならAとCは20代向け、BとDは40代向けのグループだ

「また、型番や価格、性能、素材は、カテゴリーやジャンルと深く結びついているもの。『このカテゴリーは〇〇という頭文字がついた型番のシリーズだ』とか、『この商品は新商品よりも1万円安いから、価格は●円だ』というように、頭の中に構造化されたイメージがあると、関連した記憶を無理なく引き出せるようになるはずです」

商品Cは20代向けのグループの中で最も新しい商品で、価格はハイクラスだから1万円。ただ同じ20代向けのグループの商品には、エコノミークラスの3000円のものもあるから、お客さまの予算を考えるとそっちの方がいいかもしれないな

記憶術は「“思い出し方”術」でもある

このように「その商品に関わるエピソード」と「商品がどのグループに属するのか」を同時に覚えることで、それぞれの関係が見えやすくなる。覚える数が増えれば増えるほど、記憶が強固になる効果があるそうだ。

ただし、「思い出せなければ記憶する意味はない。どうしても覚え方にばかりに気をとられがちだが、記憶術の根幹は『“思い出し方”術』でもある」と平田さんはいう。

「今回僕が紹介した方法を1回やってみるだけでは、短期的な記憶としてしか残らないかもしれません。それを長期的な記憶として定着するためには、繰り返して復習すること、つまり思い出すことが必要不可欠です。商談が終わったら必ず帰りの電車で反すうする、商品を見たときに価格や特徴を思い出すように意識する、その程度で構わないので、それを習慣にしてみてください。少しの時間でも『思い出す』ことが日々の習慣になれば、記憶力を高め続けることもできるはずですよ」

記憶力に自信を付ければ、新しい環境でも「期待の新人」として注目されるかも? 平田さんのアドバイスをもとに、“記憶と復習”を習慣付けることを心掛けていきたい。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 企画・撮影/大室倫子(編集部)

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平田 直也さんの新著『<a href='https://www.amazon.co.jp/dp/B07NDW68MK/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1' target='_blank' rel='nofollow noopener noreferrer'>世界最強記憶術 場所法</a>』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)好評発売中!
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