万年筆、それは「知の道具」! 国内随一の筆記具ミュージアムへ【男の美学塾】
万年筆を訪ねて「PILOTペン・ステーション」へ
「男の美学塾」の記念すべき第1回目のアイテムは、筆記具の最高峰、持っているだけで男としてのレベルが1つも2つも上がりそうなアイテム「万年筆」。
今回、万年筆についてよく知るために、筆記具の老舗パイロット社が運営する中央区京橋にある「PILOTペン・ステーション」を訪ねた。1階がカフェで、2階が万年筆を中心とした筆記具のミュージアムとなっている。今回は特別にパイロット社の広報さんにガイドをお願いした。
さっそく2階へ上がると、そこはまるで万年筆の美術館。入り口には、パイロット社の名を世界に広めた「蒔絵万年筆」がずらりと展示されている。蒔絵とは正倉院にも収蔵されている漆塗りの伝統工芸技法である。その技術を万年筆の軸に施した蒔絵万年筆。美しい。
「コレクションのなかには、人間国宝が手がけたものや、パイロット社が初めて蒔絵万年筆を生み出した年である大正14年に作られた、おそらく現存する蒔絵万年筆では最も古い物などもあります」(広報さん)
コレクター垂涎の貴重な万年筆たちに、万年筆を所有することへのモチベーションを煽られつつさらに奥深い世界へと進んでいく。
世界を魅了したパイロット社の技術に感嘆
展示で万年筆の歴史を辿ると、1800年代初頭にペンの軸にインクが詰められる筆記具が誕生しているそう。
その後、1884年にウォーターマン社から発売されたのが、液体が細い管へと自然に吸い上げられる「毛細管現象」を利用した万年筆で、現在の万年筆も同じ原理で作られている。
ところで、万年筆の万年筆たる所以は、そのペン先にある。ペン先には金やステンレスが使われているが、パイロット社が作るペン先には、日本のモノづくりを感じさせる技術が盛り込まれていた。
「ペン先に使うのに24金では柔らかすぎるので、14金を使っているんです。この14金は、金属の配合の仕方など当社独自のレシピでつくられています」
また、ペン先にいくにしたがって厚みを増すことで、筆圧にうまく対応するように加工するなど技が光る。
比較的価格の安い万年筆にはステンレスが使われているが、やはり万年筆ならではのしなやかな書き心地は「金のほうが1枚も2枚も上手」なのだと言うが……
「ただ、ボールペンに慣れた現代人には、ステンレスも好まれるんですよ」
なるほど。
ペン先によって違う“書き味”。筆跡をその人の魅力に
万年筆の歴史や構造を学んだところで、いよいよお待ちかねの試し書き。出された万年筆は、ずらっとなんと15本。
「文字の太さや弾力別に、ペン先が15種類もあるという事実に、まず皆さん驚かれますね。日本で好まれるのは、細字のF(Fine)か、中字のM(ミディアム)です」
実際に試し書きをしようとするが、むむっ……。かすれてしまってうまく書けないではないかっ。
「ボールペンに慣れていると、ペンを立てて書いてしまうんです。万年筆はペン先のスリットからインクが伝って文字が書けるので、割れたペン先の両方が紙に接していないとインクが出ません。そのため、ペン先の面を左右にひねらずきちんと上を向くようにして、ボールペンよりもやや寝かせ気味にして書きます」
なるほど、ペンを40度くらいに寝かせて書くと、万年筆独特の濃淡のある文字がさらりと書けた。
筆圧が強くて硬い書き心地が好きな人はF、柔らかく滑らかなほうが好みの人はMを基準に、15種類のなかから自分にあったペン先を探す。
「万年筆を実際に使うようになったら、次のステップはインクの色ですね」
パイロットでは、香水の瓶のようなインク瓶に入った「色彩雫」というインクのシリーズがある。なんと全24色がラインナップされており、ブルー系でも「月夜」「深海」といったように、それぞれに微妙に違った色が表現される。
「ぜひご自分の色を見つけていただければと思います」
ペン先とインクで個性を発揮する万年筆。そこには己の美学を込めて、自分だけの1本を見つけてみたい。
今回の美学が見つかるのはここだ!
ペン・ステーション ミュージアム&カフェ
「書く文化」を次代へ伝えるというコンセプトを掲げる「ペン・ステーション」では、筆記具の歴史や美術的価値の高い万年筆などを展示(入館は無料)。また、1階は落ち着いた雰囲気のカフェとなっているので、自慢のエスプレッソを飲みながら、万年筆で書き物をするなんて美的な時間にも浸ることができる。
DATA
【閉店】PILOT『ペン・ステーション ミュージアム&カフェ』
住所:東京都中央区京橋2-6-21
TEL:03-3538-3840
営業時間:月〜金9:30〜17:00(cafe8:00〜19:00)、土11:00〜17:00
休館日:日祝日、年末年始、夏季休業期間
アクセス:東京メトロ銀座線「京橋駅」より徒歩1分、都営地下鉄浅草線「宝町駅」より徒歩3分
取材・文/questroom inc.、頓所直人 撮影/柴田ひろあき
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