【帝国データバンク監修】“倒産しそうな会社”に共通する6つのチェックポイント
誰もが知っている大企業でも、突如として経営難に陥ってしまう昨今。いよいよ明日のことは誰にも分からない、不安定な時代が到来している。
しかし、もし自分の会社が危機的な状況に陥っていても、経営層の動きを把握しきれない若手社員は、そのサインに気付けないことも多い。そこで今回は、国内大手信用調査会社の帝国データバンクで企業の倒産要因調査などにあたっている丸山昌吾さんと、遠峰英利さんに、20代の若手社員でもチェックできる「倒産しそうな危ない会社に共通してみられる6つのポイント」を聞いた。
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代表が「倒産だ」と言わない限りは、倒産ではない!?
「会社が潰れる」という言葉はよく耳にする。しかし、その定義を説明しろと言われてすぐ答えられる人は意外と少ないかもしれない。そもそも、会社が「倒産する」とは一体どのような状態なのだろうか?
倒産というと「次の日には全従業員が解雇され、会社が消滅する」といったイメージがあるかもしれません。ですが実は、民事再生など再建型の倒産もあるのです。一般的には企業がお金や経営に行き詰って、「支払うべきお金が払えない」状態のことを倒産とすることがほとんどです。
その中でも、帝国データバンクでは、次の6つのケースのいずれかに該当する場合を「倒産状態にある」と定めている。
1.銀行取引停止処分を受ける※1
2.内整理する(代表が倒産を認めた時)
3.裁判所に会社更生手続開始を申請する※2
4.裁判所に民事再生手続開始を申請する※2
5.裁判所に破産手続開始を申請する※2
6.裁判所に特別清算開始を申請する※2
※1 手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けた場合
※2 第三者(債権者)による申し立ての場合、手続き開始決定を受けた時点で倒産となる
6つのケースのうち、1や2は裁判所を介さない任意整理といわれる。対して、3~6は、裁判所が入って、法的な手続きにより会社を整理する、もしくは再建させる状態のことを指す。いずれのケースも「倒産」ではあるものの、「民事再生法」や「会社更生法」は再建型の倒産であり、事業を継続し、雇用もある程度守られる中で経営を立て直すための手法なのだ。
つまり取引先への支払いや給与の支払いがされなくなったり、遅延したとしても、銀行取引停止や裁判所を介する法的手続きをとっていない段階では、代表が『倒産状態にある』と言わない限り倒産とは言えないんです。
「危ない会社」を見極めるために、20代がチェックすべき6つのポイント
取引先への支払いや給与に影響が出ても、全てのケースで「倒産」とは言い切れないとなると、若手社員が自分の会社の黄色信号を見抜くことは、ますます難しい。そこで、二人に「自分の会社が倒産する予兆をどのように判断したらいいか」を聞いてみると、倒産する会社に共通する6つのポイントを教えてくれた。
【ポイント1】トップの人たちが相次いで退職する
退職者が相次ぐと、新しく入社してくる次世代の育成に行き詰まり、継続的に成長する企業になりにくくなってしまう。また、人が辞めたことによりクライアントが離れてしまい、売上げが落ちていくリスクなども考えられる。
そのため「退職者が頻繁に出る」というのは企業が倒産に向かっている変化の一つであるという。その中でも、「ある人たちの退職には敏感になった方が良い」と丸山さん。
特に経理部門のトップクラスの人が辞めるときは、要注意です。会社のお金の動きを一番知っている人が辞めるということは、経営が傾いているという見方もできますから。あとは創業以来、会社を支えてきた重役が辞めていくとなると、よほどの理由があるんじゃないかと疑っていいと思います。
【ポイント2】過度な経費削減が言い渡される
企業で働く以上、経理部門の担当としては経費を削減したいというのは当然のこと。しかし、その動きがどんどん厳しくなっていったり、昨日まで良しとされていたことが急に廃止されたりしたときには注意すべきだ。
これまで会社で支給されていた文房具を「自費で買って」と言われたりしたら、危険ですね。一つ100円程度のものですら惜しむ状況ですから、会社の経営が相当厳しくなっている可能性があります。あとは、昨日まで設置されていた無料のコーヒーサーバーが急に撤去されてしまったり、社員向けに安く売られていた自動販売機が通常価格になったり……。もちろん利用者が少ないから止めた、という理由もあるかもしれませんが、小さな額を突然惜しむようになったら危ない状況かもしれません。
【ポイント3】上司が頻繁に離席している
上司が、会議や打ち合わせを理由に頻繁に離席している場合は、「会社として大きな変化が起きる予兆が考えられる」と二人は口をそろえる
上司の会議が増えているときは、会社があまり良い状態ではない可能性があります。「このままじゃ販売計画がうまくいかない」とか、「経費の使い方を見直さなくてはいけない」といった会議を繰り返している可能性が考えられます。若手の営業社員が直属の上司に呼び出される時って、だいたい成績が伸び悩んでいる時ですよね。それと同じ事態が、社長と上司の間で起きていると想像してもらえたら分かりやすいかと思います。
外出が多い部署だと、なかなか判断が難しいと思うのですが、本来離席が少ないような経理部門の人などがずっと経営陣に呼ばれているとなると、お金の面で問題が起こっている可能性があります。
【ポイント4】同業他社の間で悪いウワサが広がっている
いつもと同じように会社に出勤しようと準備をしていたところ、自分の会社が倒産状態にあるということをニュースで知る場合もあるという。ただ、そのような状況に直面した社員の中には、「思い返してみれば、同業他社で働く人たちから、自分たちでは知りえないウワサを聞いていた」というケースが多いそう。
例えば営業職の人であれば、社内では聞いたこともないようなウワサを外部から耳にすることが多いようです。もちろん中には根も葉もないウワサもあるとは思うのですが、「あなたの会社、普段参加しないような小さな額の入札に参加して、無理にでも仕事を取ろうとしてたよ」とか、「下請業者に対してかなり厳しいコストダウンを強要していたよ」なんて話であれば、同業他社の人の方が詳しかったりする。そういう場合は資金繰りが厳しくなっていることが懸念されますね。
【ポイント5】不審な人物の出入りが増える
倒産状態の予兆として、会社に出入りしている人もチェックすべきポイントだそう。
「不審な人物の出入りがある」というのは変質者という意味ではなくて、要は「怪しい企業コンサルタント」みたいな人のこと。そういう人が社長室に出入りしていたり、見掛けない人がやたら頻繁に出入りするようになったりしたら要注意ですね。
突然、素性の分からない人が役員になったりすると危ないかもしれません。役員を始め、重役の人事異動について発表があったときには、その人がどういう人物で、どこから来た人なのかということまで、きちんと確認した方が良いでしょう。
【ポイント6】社長が居留守を使っている
電話応対や、来社してきた方の対応が多い若手は、上司や社長が社外の人に対して、どのような対応をしているかということに目を向けやすい。実際、倒産寸前ともなると、「社長が居留守を使う場合が増える」と二人は話す。
社長が居留守を使うケースは、末期的な状態。特に、銀行や支払先からの問い合わせに居留守を使うというのは、督促が入っている場合が多いので、注意が必要です。社長の立場上、単に忙しいという場合もあるかもしれないですけど、それが何度も続くようであれば、やっぱり「何かある」んじゃないかと思います。
電話を掛けてくる相手が銀行や、信用金庫であれば、まだいいんですけどね。名前を全く聞いたことのない貸金業者、いわゆる“街金”と呼ばれるところから督促の電話がかかってきたら、いよいよ危ないと思った方がいいですね……。
「その情報は正しいかどうか」を見極めることが大切
若手社員が会社の危機的状況に気付くためのポイントは、意外にも身近なところにあった。だが、企業経営は複雑なもの。ありとあらゆる変化を恐れていては、日々の業務にも支障が出てしまう。
普段から倒産していく企業の調査、統計などを行なっている二人は、倒産の予兆とどのように向き合っているのだろう。
一つの事柄を多方向から見ることを大切にしています。大企業だと、数年に一回、部署が吸収されてしまって、実質解体になってしまうことがある。そのときに「あ、うちの会社危ないですかね」なんて現場の声を聞くことがあるんですけど、あくまでもケースバイケースなんですよ。会社が成長するために、戦略的に組織体制を変えるケースもあるでしょうし、経費の合理化のために削減するといった場合もありますから。一つの現象をどういう背景があるのかと併せて捉えて、複数の要素で判断することが重要です。
先ほど話したような「同業他社のウワサ」とかも、1社から聞く分には、そこまで過剰になる必要はないと思います。ただ、同じような内容で2社、3社と多方向から聞くようになったら、信憑性は一気に高まる。一つの情報を鵜呑みにせず、その時の状況と併せて、あくまでも自分の目で判断することを心掛けていますね。
一つでもチェックポイントに当てはまったからといって、会社に見切りをつけるには早すぎるということだ。もし「うちの会社ってヤバいのかも……!?」と思ったら、チェックポイントを参考にして情報を集めながら、自分の目で会社を判断してみることを意識してほしい。
>>合わせて読みたい:【潰れる会社の特徴】転職先に選んではいけない上場企業の見極め方を、“倒産要因究明のプロ”に聞いてみた【帝国データバンク監修】
取材・文/於ありさ
帝国データバンク情報部の新著『倒産の前兆』(SBクリエイティブ)
100年以上、企業倒産の現場を分析し続けて、わかったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には「公式」がある、ということだ――。
1900年創業の国内最大級の企業情報データベースを持つ最大手の信用調査会社、帝国データバンクだから導き出すことができた、経営者が陥りがちな「企業破綻の8つの公式」とは?
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