キャリア Vol.771

「AIチャット」は“人手不足”が深刻化する日本を救うか――28歳文系出身・AIベンチャー社長の挑戦

あらゆる企業がいま、“若手AI人材”の採用に乗り出している。「AI人材」というと、研究者やエンジニアなどの理系職種をイメージする人も多いかもしれないが、実はそれだけではない。

AI技術を活用したビジネスコンサルティングを行う「AIコンサルタント」や、AIを使ったサービス・商品の企画などを行う「AIプランナー」のニーズも同じく高まっており、今後こうした職種で働く人がますます増えていく見込みだ。

サイバーエージェントグループの、株式会社AI Shiftで代表取締役を務める米山結人さん(28)も、AIプランナー職の一人。28歳という若さでAIベンチャーの社長となった彼は、どのようにAIの知識を身に付け、ステップアップしてきたのだろうか。いまの仕事のやりがいとあわせて聞いた。

株式会社AI Shift 代表取締役 米山結人さん(28歳)
1991年生まれ。学習院大学経済学部経営学科卒業後、2016年4月にサイバーエージェントグループに入社。同年12月に、同グループ子会社の株式会社AIメッセンジャーの取締役に就任。2019年8月より株式会社AI Shiftの代表取締役に就任。

営業、コンサルタント……
多くの人が「AIプランナー」になる日は近い

――今、AI人材に注目が集まっています。その中でも、「AIプランナー」はどのような仕事をしているのでしょうか?

AIプランナーの定義は広いと思いますが、私の場合は、自然言語処理や画像認識技術など、AI技術を使ったプロダクトやソリューションを用いて、お客さまの経営課題を解決してきました。

AI技術の活用はもう既にありとあらゆる業界に広がっていますから、いま営業やコンサルティングなどを仕事をしている方であれば、「AIプランナー職」になることを求められる日は近いですよね。きっと、自社の商品にAIが搭載されたり、コンサルティング内容にAI技術の活用が含まれるようになったと感じている方は多いのではないでしょうか。

企業ごとに呼び方の違いはあると思いますが、AIプランナー職と呼べる方は、ますます増えていますね。

――なるほど。AIプランナーにはどの程度、AI技術の知識が求められるのでしょう? 文系出身でも問題ないのでしょうか?

求められる知識レベルは、企業ごとに異なると思います。ただ、ビッグデータの分析はデータサイエンティストが行うし、開発はエンジニアが担当するというように、ある程度は棲み分けがなされていると思います。

その場合、AIプランナー職に求められるのは、「AI技術の基礎・基本」を理解しているかどうかということだと思います。それがなければ、自社の製品やサービスを改善するにあたって「何ができるのか」がそもそも浮かんでこないでしょうし、企画も生まれにくくなってしまいます。

また、お客さまから現場でいただいた要望をエンジニアにフィードバックし、プロダクト改善に反映してもらうのもAIプランナーの仕事。その場合にも、AI技術の基礎知識があった方が、コミュニケーションが円滑に進むと思います。今、「AIの知識が何もない」という方であれば、やはり勉強は必須ですね。

「AIチャット」は社会を
激変させる可能性を秘めている

――米山さんはなぜ、AIを使ったビジネスを展開する企業の代表へとステップアップできたのでしょうか?

内定者の時から、AIを使った新しいビジネスをやりたいということは、アピールしていたんです。AIを使ったビジネス領域には、大きな可能性があると思っていたので、早く新事業の立ち上げに挑戦したいという気持ちが強かったのです。

まず、入社してから半年間は、AIとは関係ないメディア関連のポジションで経験を積みました。そこでビジネスマンとしての基礎を鍛えながら、与えてもらった機会を絶対ものにするためにもそこで成果を上げるよう努力しました。

――そこで実績をあげられたんですね。

周りの方のサポートもあり、社内でMVPとして表彰していただきました。そのような実績も見ていただけて、AIをメイン事業とする新会社が立ち上がるタイミングで役員に抜擢してもらえたんです。

――ご自身の「やりたい」気持ちと「実績」と、両方が揃ったと。

そのタイミングだったと思います!

――では、米山さんが代表を務めるAI Shiftでは、どんな事業を手掛けているのでしょう?

AI チャットボットツール『AI Messenger』の開発です。そして、このプロダクトを企業さまに導入いただくためのコンサルティング事業なども並行して行なっています。

運送会社を例に説明しますね。例えば、「予約日時の変更」や、「受け取り場所の再指定」などをしたい場合、これまでですと、運送会社のカスタマーサポートの方と電話をして、再設定していたと思います。でも、そのような煩雑なやりとりを無くし、Web上でAIとチャットすることで済ませられるツールが『AI Messenger』です。

ただ、すべての質問にAIが回答できるまでには技術的に至っていないため、その場合はオペレーターがチャットで回答するような仕組みもつくっています。

――最近、企業のWebサイトでも問い合わせが「AIチャット」ということが増えてきましたよね。

まさにそれです。今、人材不足がいろいろな業界で叫ばれていますけど、コールセンターもまさにそうで。離職率は常に高いし、なかなかそこで働きたがる人もいないという状況。ユーザーにとって手軽で便利なサービスを提供するという目的だけでなく、職場の業務効率を上げながら、人材不足もカバーするという狙いが『AI Messenger』にはあるんです。

――米山さんご自身は今、どんな業務に注力していますか?

経営者として会社のビジョンや目標を設計し、営業戦略などを考えるのが主な仕事ですね。あと、大学や研究機関との産学連携にも力を入れ、AI分野の研究の発展にも役立ちたいと思っていて。東北大学の乾 健太郎先生や、首都大学東京の小町守先生に協力を仰ぎ、自然言語処理の分野で共同研究を行っています。

――最先端技術について、専門家の方々とディスカッションするのは難しいですよね?

そうですね。僕はエンジニアではないので、苦労は多いです(笑)。でも、そこは、日々の勉強で何とかカバーしています。

――どのように勉強しているのですか?

まずは書籍やインターネットで基礎的な情報を徹底的にインプットしました。僕の場合は、奥村学先生の書かれた『自然言語処理の基礎』や、乾先生、小町先生の書かれた自然言語処理に関する書籍、松尾豊先生のディープラーニングに関する書籍などは読みましたね。また、こうした先生方がカンファレンスで登壇した際のスライドや動画もチェックするようにしています。

また、社内に優秀なAIエンジニアやソフトウェアエンジニアが多数在籍しているので、彼らが注目している論文を教えてもらって目を通すようにしたり、勉強会を開いてもらってそこで知識を増やすようにしたり。時には、エンジニアのミーティングにひっそりと参加して、ひたすら会話を聞いていることもあります。

――今の仕事の醍醐味は、どういうところにありますか?

社会をダイナミックに変えていけるところです。日々の業務や意思決定が、ゆくゆくは社会を変えていく重要な一手になると思うと、すごくワクワクします。

おかげさまで引き合いも多く、デモンストレーションやセミナーを開催すると多くのお客さまにご来場いただくことができています。『AI Messenger』を導入したお客さまから、「問い合わせ対応にかかる時間が削減できた」、「これまで膨大な量の問い合わせメールをさばいていたのに半分以下に減った」などの声を直接いただくことも。

ユーザーさんからも、「チャットボットは、対応が早くて助かります」とメッセージをいただいたこともあり、そういう感想をいただけたときはうれしいですね。

「自分の興味×AI」が学びを深めるコツ

――営業、コンサルなど、多くの人が今後「AIプランナー」へとシフトしていく必要があるのではないかというお話が出ました。改めて、AIプランナーに必要なスキルとは何だと思われますか?

まずはどんなAI領域でもいいので、自分が興味を持てる分野からAIの基礎知識を付けていくのは必須だと思います。一言でAIや機械学習といってもすごく対象となる領域が広いので、全体像から把握しようとするのは難しいと思います。

「何からやればいいのか分からない」状態が続くとモチベーションダウンにつながるので、まずは「自分の興味×AI」を出発点に学び始め、特定の分野で「AIに何ができるのか」や「何ができそうなのか」を調べていくと面白さに気付けると思います。

――なるほど。学びの対象を絞ることが大事ということですね。

そう思います。あとは、過去に培ってきた営業やコンサルティングスキルと「AIの知識」を掛け合わせて、自分なりに企画を考えてみるといいと思います。「AIプランナー」と言っても、企画力や営業力がなければAIの知識をビジネスで役立てられませんから、これまでの経験も一切無駄にはならないはずです。

――ご自身は今後、どんなことにチャレンジしたいですか?

8月に株式会社AI Shiftという新会社の代表取締役に就任しました。この新会社ではチャットボットと音声認識・合成技術を用いた新しいソリューションの開発に取り組む予定です。

例えば、従来の自然言語処理を用いたチャットボットによるコンサルテーションに加えて、音声認識・合成技術を活用してコールセンターやカスタマーサポートにおける電話のやり取りの自動化などにも挑戦していきたいです。

僕たちが掲げるミッションは、「テクノロジーで人の創造力を開放すること」。大きな課題を抱えるさまざまな業界の困りごとを、AIの力で解決していきたいです。

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