倒産しそうな“ヤバいベンチャー企業”はどう見抜く? スタートアップ転職の注意点を、帝国データバンクの調査員に聞いてきた
上場企業と比べると経営状況が安定しておらず、5年後、10年後にどうなっているのか想像しづらいベンチャー企業。あらゆる可能性を秘めているところがベンチャー企業の面白さでもある一方で、実際に転職するとなると、近い未来に倒産!なんてことがないかどうか、慎重になってしまうもの。
そこで今回は、ベンチャー企業に転職したいと考える20代が、倒産しそうな“やばいベンチャー”を転職前に見極めるコツを、国内大手信用調査会社の帝国データバンクで企業の倒産要因調査などにあたっている丸山昌吾さんと、遠峰英利さんに聞いてみた。
ベンチャー企業が倒産すると、最悪「給与未払い」のケースもある
上場企業が経営難に陥った場合、減給や資本関係の変化による社風の変化、退職者の増加など、じわじわと影響が起こるということが分かった。その一方で、ベンチャー企業が経営難にさらされた場合には、若手社員であろうと経営層であろうと直接的な影響が起きがちだという。
ベンチャー企業は経営体力がないケースが多いため、資金繰りが厳しくなってくると、比較的はやい段階で「破産」となるケースが多くあります。ここが「何とか企業再生へと向かおうとする」上場企業との大きな違いですね。また、破産となると会社にお金がなくなるため、社員は退職金がもらえないケースも多い。破産の手続きには時間がかかるので、その間、給与が支払われない可能性もあります。
ベンチャー企業の経営は
“社長”を見てチェックせよ
ベンチャー企業に転職する前にチェックしておきたいポイントは、ずばり「社長」だという。
ベンチャー企業の場合は、代表の一言で経営が左右されることが多い。なので企業を知るためには、まずはその会社の社長のことを知ることが大事です。最近だと、メディア露出が多かったり、SNSで情報発信をしている方も多いですから、入社前には必ずチェックしましょう。
では、“やばいベンチャー”の予兆となる社長の特徴とは何なのか。具体的なチェックポイントを2人に解説してもらった。
【社長チェック1】企業の身の丈に合った行動をしているか
ベンチャー企業の社長の中には、その生活ぶりが豪快な人も多く、豪華な生活ぶりに憧れる若手も多い。しかし、その行動が本当に身の丈に合っているかの判断は慎重になるべきだという。
まだ経営基盤も固まっていないベンチャー企業なのに、オフィスの社長室だけ豪華だったり、プライベートが派手過ぎる生活を送っている社長がいる会社は要注意だと思います。
特に、「企業体力に見合ったオフィスかどうか」は私たちもチェックしているポイントです。外部によく見せるために、外見ばかりを繕っている会社の経営は怪しいですね。とはいえ、オフィスにお金をかけ過ぎていなくても、それが原因で社員が採用できないなどの問題もあるので、あくまで「身の丈に合っているか」が大事だと思います。
【社長チェック2】人情が熱過ぎて、人に流されるタイプではないか
いわゆる人情に“熱過ぎる”タイプの人は一見「良い人」に思えるが、企業の社長として見た際には注意が必要だという。
人情を重視し過ぎる社長は、「ただの良い人」で終わってしまうことも多いです。経営者は会社の経営が傾いたときなどに、物事を冷静に判断しないといけない立場です。周りの意見や情に流されやすかったり、付き合いで仕事を進めていくタイプの人の経営スキルはイマイチかも。合理的判断ができる人なのかどうかチェックするのは、大事だと思います。
【社長チェック3】数字の話ができるか
転職前に代表と話す機会があれば「経営に対する視点」を聞くことが大事だという。意外にも、ベンチャー企業では「経営に関する数字」に弱い社長は多いのだとか。
代表と話す機会があれば、ぜひ売上計画や利益率など数字面の質問をしてみてください。具体的な数字について話せるかどうかで、経営にしっかりと関わっているのかを判断できると思います。ざっくりの数字が分かっていても、中にはどんぶり勘定で経営をしている可能性もないとは言い切れませんから。
【社長チェック4】ビジョンが大き過ぎて、現実と乖離していないか
最後に、ベンチャー企業でありがちなのが「ビジョンは大きいが、そこまでのプロセスが具体的に描けていない」というケース。
代表がどういうビジョンを持って、そこに至るまでのプロセスをどう描いているのかを聞いてみましょう。その計画が現実的なのか、納得できるものなのかどうかという視点で判断するといいと思います。ゴールだけが大き過ぎる会社だと、理想通り成長していくかどうか怪しいものです。
良くも悪くも代表の一存で会社の方向性や、経営状況が変わってしまいがちなベンチャー企業。しかし少人数で会社が構成されているがゆえ、社長と社員一人一人の距離が近いのは魅力的な点である。ベンチャー企業に就職したいと考える20代は、ぜひ面接時に代表としっかり話をすることで、自身が納得できる転職先を決めてほしい。
取材・文/於ありさ
帝国データバンク情報部の新著『倒産の前兆』(SBクリエイティブ)
100年以上、企業倒産の現場を分析し続けて、わかったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には「公式」がある、ということだ――。
1900年創業の国内最大級の企業情報データベースを持つ最大手の信用調査会社、帝国データバンクだから導き出すことができた、経営者が陥りがちな「企業破綻の8つの公式」とは?
RELATED POSTSあわせて読みたい
【ZEALS清水正大】“日本ぶち上げ計画”を企てる27歳の本気度「商材もアイデアもないのに飛び込み営業しまくりました」
“最恐エゴイスト”だった社会起業家が20代で下した一大決心「早く行きたいなら一人でもいい。でも遠くに行きたいなら皆で行け」【安部敏樹】
“王道イケメン俳優”だった三浦春馬が、仕事の幅を広げられたワケ
“部屋にVRアートを飾る未来”に選ばれる作品をつくりたい。VRアーティスト・せきぐちあいみが目指すもの