「社会貢献事業」に向いているのはどんな人? フローレンス・GoodMorning・TABLE FOR TWOに聞いてみた
開発途上国の子どもたちに学校給食をプレゼントできるプログラムを提供するTABLE FOR TWO、社会課題を解決するプロジェクトに特化したクラウドファンディング事業を行なうGoodMorning、訪問型の病児保育事業を中心にさまざまな課題の解決に取り組むフローレンス。
いわゆる「社会貢献事業」のど真ん中で活躍する3名の転職経験について語ってもらった前半の記事。
「利権が絡まないからさまざまな分野の人たちと関われる」、「最終受益者とつながっているという圧倒的な当事者意識を持てる」など、社会貢献事業に関わるメリットややりがいが多く挙げられていた。
後半の本記事では、実際に「社会貢献事業に関わってみたい」と考える20代読者に向けて、3人が考える「この分野に向いている人・向いていない人」について教えてもらった。
>>前半記事:社会貢献事業に転職って、ぶっちゃけどうだった? 中の人3名に聞いてみた【フローレンス・GoodMorning・TABLE FOR TWO】
この1~2年、社会貢献に対する“世間の目”が変わりつつある
――社会貢献事業だからこそ、苦労することや大変なことはありますか?
張:私がTFTに入ったのは6年前ですが、当時は「NPOに対する社会的信用はまだまだ低い」と感じることがよくありました。企業に新しい事業を提案しに行っても、疑いの目で見られたり、相手にしてもらえなかったり。そういった苦労は実際にありましたね。
二河:ただ、社会貢献事業に対する社会の目はかなり変わりましたよね? 新しく事業を始めたいなら、それこそGoodMorningさんのようなクラウドファンディングで資金や支援者を集めることもできる。自分たちの志に共感してくれる人と出会えるプラットフォームがあること自体、大きな進化ですよ。
張:本当にその通りですね。先週もアメリカで社会課題を解決する事業に特化したファンドが創設され、投資家から約1400億円集めたと報じられていました。こうしたSDGsの達成に向けた取り組みが日常的にニュースで流れるようになって、世の中全体で「社会貢献のために自分たちも行動しなければいけない」という意識が強まっていると実感しています。
――なるほど。たしかに、今の20代は社会課題への感度が高いとも言われていますよね。
張:そうだと思います。SDGsが分かりやすいメッセージとして発信されたことや、気候変動の影響で日本でも災害が頻発していることなどもあり、誰にとっても他人事ではないとみんなが思い始めたんじゃないでしょうか。
二河:フローレンスは新卒採用を行なっていますが、私たちから「NPOにぜひ来てください」とお願いする前に、「話を聞きたい」という学生たちが来てくれるようになった。それを見ると、NPOへの就職はイレギュラーではなくなって、うちで働くことも民間企業と同じ選択肢の一つとして見てくれているんだなと思いますね。
張:企業や個人の間に「NPOの知見を得たい」という動きも生まれています。私たちもこれまでは自分から提案や紹介に出向いていたのが、最近は逆に「TFTについて教えてください」という問い合わせも多いんですよ。私たちと一緒に取り組みたいと思ってくださる人が増えたということは、それだけNPOに対する信用度も高まったということ。特にここ1〜2年はその変化を強く感じています。
社会貢献事業に向いている人・向いていない人の違いは?
――興味のある人なら誰にでも社会貢献事業をおすすめできますか? どんなタイプが向いているのでしょうか?
張:誰にでもというわけではないですが、その団体や企業のミッション・ビジョンにどれだけ強く共感できるかはとても重要です。そこが一致せずにブレていると、本人も「私、何のためにやっているんだっけ?」と迷い出してしまいます。
小さい組織だからこそ、一人がそうなるとみんなの向いている方向がバラバラになってしまう。それは組織にとってもリスクなので、私たちも採用時はミッション・ビジョンへの共感度を見極めるようにしています。
先山:社会貢献事業を手掛ける団体や企業は小規模なところが多いので、その場合は「何でもチャレンジしたい」というタイプが合うでしょうね。小さな組織では私のようにいろいろな仕事を任されるので、経験の幅を広げられる反面、「専門性を高めていきたい」という人にはフィットしない可能性があります。
ただフローレンスさんのように規模が大きくなれば、仕事も分業化されて専門性を高めていくこともできるでしょうから、その組織の成長フェーズをよく見極めて、自分の志向性とマッチするかを考えればいいと思います。
二河:私も、チャレンジする気持ちが大事だと思います。できれば「何かやってみたいな」とぼやっと思っているよりは、少しでいいからチャレンジに対して明確なものがあるといい。「自分にはこんな経験があるから、この課題にアプローチしたい」という思いがあるだけで、目指すビジョンがはっきりします。
社会貢献事業を仕事にする人たちは「自分はこれをやりたい!」という熱量の高い人が多いので、それがまったくないと周囲との温度差に悩んでしまうかもしれません。
――逆に「こんな人は向いていない」と思うことはありますか?
張:「他人にあまり興味がない」とか「自分のことだけ淡々とやっていればいい」という人は難しいでしょうね。社会課題を解決するには、できるだけ多くの人にその課題を知ってもらい、参画してもらうことが必要なので。周囲を巻き込みながら当事者意識を持って事業を遂行できる人の方が仕事を楽しめます。
二河:「誰かが変えてくれる」ではなく、「自分が変える」という当事者意識は重要ですね。まだ解決されていない社会課題があったら、解決策となる事業を自分たちで新たに生み出すしかありません。でも前例がないので、どうやって事業をつくればいいか分からない。
だからみんなが試行錯誤し、結果を検討して、必要なら修正してまたトライするというPDCAを日々回さなくていけないんです。たとえ入社1年目のメンバーであっても、「自分はオペレーションだけやればいいだろう」と他人事で済ませるのではなく、プロジェクトのリーダーやマネジャーの立場で自分事として関わっていくことが求められます。
価値観が“変化しまくり”! プライベートにも大きな影響が
――皆さんは今の仕事を始めてから、自分の成長や価値観の変化を実感したことはありますか?
張:私の場合は、人に頼ることを恥ずかしく思わなくなったことですね。今は小さい組織だから何でも自分でやらなくてはいけませんが、とはいえ自分一人でやれることは限られる。だったら専門性や得意分野を持ったプロフェッショナルや私たちを応援してくれるサポーターの力を借りて、一緒につくっていけばいい。そう思えるようになりました。
――商社時代はそうではなかった?
張:そうですね。自分と同期を比べて競争意識を持ったり、「自分のことは自分でやるべき」と考えたりしていました。実は人を頼った方が、周囲をどんどん巻き込んで輪を広げていけるので、結果的に物事もうまく進むんですよ。だから今では仕事はもちろん、友達にも「よかったらこれ、手伝ってくれる?」と素直に頼るようになりました。
最初は勇気が要りましたが、やってみるとプライベートでも人とのつながりが広がって、「なんだ、これでいいんじゃん」と思えるようになりましたね。
――先山さんは、いかがですか?
先山:私は「自分からボールを取りに行こう」という気持ちが強くなりました。私は新卒で入社したのが何千人もいる大きな組織で、次の会社も100人を超えるスタッフがいたので、「自分に与えられた役割だけやればいい」という意識がどこかにあったのかもしれません。
あとは、普段ニュースを見ている時も、以前なら何となく聞き流していたことを、少しずつですが自分事として捉えるようになりました。まだ転職して半年ですが、それでも自分の意識は確実に変わったと思います。
――二河さんは、自分の価値観に変化はありましたか?
二河:もう変化しまくりです! 特に「課題を見逃さなくなった」ことは大きいですね。例えば今、子どもが小学生になって「小学校に潜む社会課題」にすぐ目が行くようになったんです。するとどうしても解決したくなって、口を出さずにはいられない(笑)。一般には敬遠されがちな父母会の役員やPTAの活動も「ぜひやらせてください!」くらいの勢いです。
前職の頃は何かに気付いたとしても、「ああ、そうなんだ」と流していたのが、今はぐいっと踏み込んで、「私でできることはありますか」とか「一緒にやりましょう」と言えるようになった。プライベートでも周囲に潜む課題を見逃さなくなったことは、自分にとってものすごく大きな変化であり成長です。
――最後に、社会貢献事業に興味があるものの、自分は仕事としてやっていけるのだろうかと迷っている人たちへメッセージをお願いします。
張:人生は一度きりなので、思い立ったら後悔しないように動いてほしいです。貴重な人生の時間をこれから何に費やすのかと考えたとき、私にとってはそれが社会貢献事業でした。6年前に動くと決断してよかったと、今では心の底から思います。特に20代は多感でたくさんのことを吸収できる時期なので、直感が働いたら思い切って行動してもらいたいですね。
先山:「本当に普通の会社で働くのと変わらないよ」と伝えたいです。単に一つの業種として社会貢献事業があるだけで、働くという意味では民間企業と変わらないし、自分とは違う世界のことだと思ってほしくない。
もし不安があるなら、私のように副業でもいいしボランティアでもいいので、まずは実際に関わってみて自分に合うかを見極めればいいんじゃないでしょうか。社会貢献事業をやっている団体は常に協力者を求めているので、「何か手伝います」と言えば、喜んで「どうぞ!」と迎えてくれると思いますよ。
二河:「何かくすぶっているんだったら、動いてみなよ」かな。不安はあるかもしれませんが、あなたが心配しているほどの環境ではないので、安心してチャレンジしに飛び込んでおいでと伝えたいです。もともと同じ悩みを抱えていて、それでも勇気を持って踏み出した先輩スタッフがたくさんいるので、仕事や生活でどんな工夫をすればいいかもどんどん聞いてください。私たちは社会貢献事業をやってみたいという思いを応援しています。
取材・文/塚田有香 撮影/赤松洋太
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