「ジョブホップ」って本当によくないの? 20代で3回以上転職した3人の覆面座談会から探る
転職が当たり前のものになってきて、一昔前のように「同じ会社で3年はがんばれ」なんていう人も少なくなってきた。
終身雇用も崩壊しつつある今、「1社に長くいたからって、会社が個人を守ってはくれない。それなら転職してどんどんキャリアアップしていきたい」と考える20代もいるだろう。
とはいえ「短期間で転職を繰り返す“ジョブホッパー”はよくない」 という声が未だあることも事実だ。
はたして「ジョブホップ」は、本当によくないことなのか。そこで今回、20代で4社以上の経験を持つ3人に話を聞いてみた。
20代で4社経験。やっと「希望の仕事」に辿りついた
――まずは皆さんの経歴と、なぜ転職したのかを教えてください。
Aさん:私はこれまで4社経験していて、それぞれ業種も職種もバラバラです。大学時代から、編集者になりたいと思って就活をしていたんですけど、新卒向けの求人がほとんどなくって。1社目で夢を叶えるのは難しいと分かったので、それなら始めのうちは、編集者に必要な「人の気持ちを考える力」とか「業務の調整スキル」を身に付けようと思いました。
――なるほど。だからモバイル機器の法人営業からのスタートなんですね。
Aさん:はい。ただ、1社目の営業は思っていたよりルーティーン業務が多く、単純に感じてしまっていて。新卒で売上トップになってからは、もっと人に寄り添う仕事がしたいと思って、半年で転職。2社目でも準MVPを取るなど結果を出せました。
――2社目でも活躍していたのに、3社目ではガラッと仕事を変えていますよね。
Aさん:将来的に編集職へのキャリアを叶えるために、自分の中で「25歳までにはモノを書く仕事をする」という目標があったので、ライター募集をしていたベンチャー企業に飛び込みました。そこではライティングやWebマーケのスキルを学び、4社目でついにWebメディアの編集者として転職できたんです。
――なるほど。Aさんは「編集者になりたい」という明確な目標があって、そのために転職でさまざまなスキルを身に付けてきたということですね。Bさんはいかがですか?
Bさん:僕は新卒でシステムエンジニアになり、フリーランスを経て、営業職に転身しています。その後も2社転職し、今は外国人エンジニア向けの派遣コーディネーターをしています。
――システムエンジニアから営業って、大胆な転身ですね。
Bさん:就活で内定が最初に出たからエンジニアになっただけなので、仕事が全く楽しくなくって。人と話す方が好きだし、試しに営業職についてみようかなと。そしたら自分は仕事において「人の悩みを聞いて解決してあげること」に喜びを感じるタイプだってことが分かったんです。
――転職で「喜びを感じる仕事」に出会えたんですね。そしていま、海外の方を相手にされているのはなぜですか?
Bさん:はい。僕は帰国子女なのですが、英語を生かして働くとなると外資系金融とか商社のように、忙しそうな会社しかないんじゃないかと思っていて。でも転職活動でいろんな求人を見ているうちに、全くそんなことはないと分かりましたし、せっかくなら自分の武器を使った方がいいなと。おかげで年収もかなり上がって、正直、いまの仕事は自分の理想そのものです。
――Bさんは転職を繰り返すうちに、自分の理想を明確にしていったんですね。Cさんはいかがですか?
Cさん:私はWeb関連の仕事に就きたかったんですが、就活で全滅しちゃって……。卒業後の1年間は大学時代からアルバイトをしていた、社員数5名のWeb制作会社にお世話になっていました。肩書きはWebデザイナーでしたが、小さい会社なので誰に技術を教えてもらえるでもなく、全て独学で仕事を進めていましたね。
――Webの仕事はできていたけど、周りに指導してくれる先輩がいなかったんですね。
Cさん:そうなんです。それに同じ年の子たちは、会社で新卒研修を受けてちゃんと‟社会人”をやっているのに、私はこのままでいいのか……?と不安になって。そこで、第二新卒枠で受けた大手アパレル会社に販売員として転職しました。
――なぜアパレルの販売員に?
Cさん:「自分にはコミュニケーションスキルが欠けている」と思ったので、対人能力を磨くためにアパレルに入りました。いまのままでは、社会人としても、将来Web系の仕事に就きたくてもやっていけないなと。そこでアパレル販売員の仕事でコミュニケーション能力を磨きつつ、Webの知識は独学で勉強していました。
アパレルでは新店の店舗責任者を任されるくらいまでやり切って、3社目で派遣社員としてマークアップエンジニア、4社目で正社員としてWebディレクターになることができたんです。
――Cさんも将来的に「Web業界で働きたい」という目標があって、一度別の職種に就く決断をしたということですね。
ジョブホップは“修行”期間だった
――転職は珍しいことではなくなってきましたが、それでも短い期間で仕事を転々とすることに対して批判的な意見も目にします。皆さんの周りの反応はいかがでしたか?
Aさん:特に何も言われなかったですね。もともと親にも将来の目標は伝えていたので、夢に近付くことをむしろ応援してくれていた気がします。
Bさん:転職回数に関しては特につっこまれたことはないです。僕は20代前半でフリーランスを経験しているので、親からも「会社員として働けているならそれでいい」という感じでした。フリーも悪くはないですが、親世代は心配だったみたいで。
Cさん:私は親や親戚から「転職するのは仕事ができない奴」のように言われてつらかったです。そもそも自分が「就活で失敗した」という後ろめたい気持ちもあり、「人より遅れたんだからがんばらないとマズい」と焦っていましたね。
――心配する人は親世代に多いんですね。では、1~2年で転職を繰り返す「ジョブホップ」にメリットはあると思いますか?
Cさん:自分の視野が大きく広がることです。特に私は、2社目で3000人規模の大手企業を経験してたくさんの人に出会えたことで、それまでの自分がいかに視野狭く生きていたのかが分かりました。
それまでは「地元で働く」ことしか考えてなかった私が、東京に出てこれたのも、数社への転職に踏み出せたのも、視野が広がったおかげです。
Aさん:私も同意見です。あと、転職で毎回職種が変わったことで、スキルの幅を広げて「自分の手札を増やす」ことができたと感じています。編集者になったいまでも、営業時代に培った折衝能力を生かしたり、Webマーケター時代の分析スキルを応用したりすることができますから。
Bさん:僕の場合は「自分がなりたい姿」に近づけることがメリットだと思います。さまざまな仕事を経験することで「この仕事のココが自分に合っている/合っていない」が分かってくるので、転職するたびにチューニングして理想に近づける、ということです。
Cさん:Bさんに似ていますが、転職で「昔からやりたかった仕事」が叶えられる可能性があるのはメリットかもしれませんね。私の場合は就活でつまずいたけれど、いろんな会社でスキルを身に付けることで、最終的に希望していた仕事に就くことができたので。
――逆に、デメリットは何でしょうか?
Aさん:特にないですね。強いて言えば、未経験転職の場合は年収が下がる可能性があることくらいかな……。でも、その後成果を出せば年収は上がっていくので、短期間で評価されるようにがんばるまでですね。あとは、仕事のつながりしかなかった人とは疎遠になること、くらいかな。
Bさん:前職で仲が良かった人とはいまだに飲みに行ったりしますけど、つながりの薄かった人と会うことはないですよね。でも、もともと仲良いってわけじゃなかったし、別によくない?って思っています。
Aさん:私も同意見です(笑)。デメリットってほどではないですね。
Cさん:デメリットというか、私の場合は、やりたい仕事にいきつくまでが苦しかったです。就活に失敗して、「受験に失敗した浪人生」みたいな気持ちでいたので、1~2社目は予備校に通っているような感覚でした。いまは修行の時期だ……みたいな。
――つらい修行が実って、本当によかった……! 後半では、皆さんの経験をもとに「ジョブホップでキャリアアップに成功する人/失敗する人の違い」について考えていきたいと思います!
>>後半の記事:20代で3回以上転職した3人の体験談を、転職のプロが解説! 成功者に「ジョブホッパー」は多いけれど……?
取材・文/大室倫子(編集部)
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