20代で3回以上転職した3人の体験談を、転職のプロが解説! 成功者に「ジョブホッパー」は多いけれど……?
転職が当たり前になった今なお、「短期間で転職を繰り返す“ジョブホッパー”はよくない」という声は根強い。しかし、20代で3社以上の転職経験を持つ3人に話を聞いてみると、「転職を繰り返してキャリアップに成功」していることがわかった。
>>記事前半:「ジョブホップ」って本当によくないの? 20代で3回以上転職した3人の覆面座談会から探る
では「ジョブホップ」でキャリアアップに成功する人/失敗する人の違いは何なのか。
この記事では、引き続き3人の覆面座談会と、キャリアアドバイザーの植草武尊さんの解説を紹介しよう。
「不満で転職」しちゃうは、自分の能力不足かも?
――前半の話を聞いていると、3人とも、転職を繰り返したことでキャリアアップしている印象です。皆さんのようにジョブホップしてキャリアアップするためには、何が必要だと思いますか?
Aさん:所属している会社で結果を出してから転職すること、が大事だと思います。スキルも身に付いてないのに、次のステージに進むのはもったいないですから。そもそも、目の前の仕事でやるべきことやっていない人は、転職でも評価してもらえないと思うんですよ。
Bさん:僕も「半年しか働いてないけど、自分はこの会社でコレを身に付けました」って言えないなら、転職の意味はないと思います。まずは今の仕事がんばれよっていう。
Cさん:あとは「何のために」転職するのかも大事だと思います。私は本音をいうなら、ジョブホップせずにストレートでいまの仕事がしたかったけど、振り返ると「いろんな会社で身に付けてきたこと」がすごく生きている。それは「こういう風になりたい」と最終的なゴール、目的がはっきりしていたからかなと思っています。
――なるほど。逆に、ジョブホップしない方がいいのはどんな人でしょう?
Aさん:「人間関係が悪いから辞めたい」「忙しいし給与も低いから嫌だ」みたいに、今の状況から逃げ出したい人ですかね。どんな会社にも何かしらの問題はあるから、そういう人は転職しても満足はできないと思うし、同じような理由で悩むことになるんじゃないかなと……。
Bさん:僕も一時期そうなりかけたことがあるので、よく分かります……!それがきっかけになるのは構わないけど、転職の目的にしてはいけないというか。
Aさん:そうそう。人間関係が原因なら上司に異動をお願いすれば叶えてくれるかもしれないし、忙しいのは自分の仕事効率が悪いからかもしれない。給与だって交渉すれば上がるかも。
でもそれができていないってことは、単に自分の能力不足の可能性もあります。繰り返しになりますが「やるべきことをやってるかどうか」ってすごく大事だと思います。
Cさん:私は転職する際に「自分に一貫した軸があるかどうか」は見極めた方がいいと思います。自分は何がやりたいのか、その目的を達成するために、転職という手段が最適かどうかを考えるんです。逆にいうと「何がやりたいのか分からない」状態なら、無理して転職しない方がいいんじゃないかなって。
Bさん:転職活動って結構しんどいから、ムダに体力つかうだけになっちゃうかもしれないですしね。
Cさん:そうだと思います。1社で長く働けば、その会社独自の仕事ができるようになったり、社内事情に明るくなったり、いろんなメリットもありますから。結局、1社に長くいようとジョブホップしようと、自分が何をやりたいのかが大事なんだと思います。
――自分が最終的にどんなことをしたいのか、そのために目の前の仕事で何を身に付けるべきか。ジョブホップはあくまで手段で、目的を忘れてはいけないということですね。
typeキャリアアドバイザーの見解
3人は「転職を繰り返してキャリアアップできた」と話すが、誰もが3人のように「ジョブホップ成功組」になれるわけではないはず。いま採用企業側は「ジョブホッパー」についてどう考えているのか。type転職エージェントのキャリアアドバイザー・植草武尊さんに見解を聞いた。
type転職エージェント キャリアアドバイザー 植草武尊さん ホテルコンシェルジュの経験を経てウェディングプランナーへ異動。以降プランナーとして240組のプランニングを行う。経験を生かしつつ、より人生において重大な意思決定のサポートが出来るキャリアアドバイザー職に惹かれ、type転職エージェントへ入社。現在は営業職の転職者を中心に転職サポートを行っている
短期間で転職を繰り返す「ジョブホッパー」の方に対して、企業側は「せっかく採用してもまた短期で辞めてしまうのではないか」「どこの会社でも、人間関係の不和を起こしてしまっているのではないか」と不安を抱えていることが多いです。
実際に、職歴上で「短期間で転職回数の多い20代」は、書類選考・面接選考通過率ともに低くなる傾向もあります。
「20代で何社までなら転職してもいいのか」は、その人のキャリアやスキルにもよるので明確な定義はできませんが、私の感覚値でいうと20代で「2社以上経験(現在3社目)はそれほど問題はない」「3社以上経験していると面接官の見る目はかなり厳しくなる」でしょう。
この違いは「3年間、1社に勤めているかどうか」です。20代で3社以上の経験だと、一般的な四大卒の場合「どこの会社でも3年間勤め上げることができない人」と思われる可能性が高いですから。
もちろん、1社に3年間勤めることが絶対に大事なわけではないですし、「石の上にも三年なんて古い」という意見は多いと思います。しかしそこをボーダーラインにしている会社はまだまだ多いもの。
「3年勤めていなくてもOK」の会社だとしても、「3回転職していて、他は85点のAさん」と「転職経験がない、他は80点のBさん」だとしたら、大多数の会社がBさんを通過させるというのが現状です。
企業側もコストをかけて採用を行っていますから、「すぐ辞めてしまう人は採りたくない」が本音。
とはいえ、「ちゃんとスキルがあって優秀である人なら、採用したい」という気持ちもあります。
今回お話を聞いた方は3人とも、「スキルを身に付けてから転職」「将来やりたいことが明確」な方たちでしたよね。この2つがあるかどうかは、ジョブホッパーの方の転職成功においてはかなり大事な要素になってきます。
スキルがあることはそれだけで市場価値が高いですし、「将来自分がなりたいビジョンが、その会社で叶う可能性がある」ということがアピールできれば、企業側としても長期終業のイメージができる。だからこそ、3人とも希望の仕事にいきつくことができたのでしょう。
思い込みの「スキルが身に付いた」に要注意!
ただし、この記事のようなジョブホッパー成功談を見て、「自分的にはスキルも身に付いたし、目標もあるから、ジョブホップして行こう」と思う方には、それが自分の「思い込み」ではないか、今一度確認していただきたいと思います。
転職を繰り返している人がただ「私にはこのスキルがあります」と言っても企業には通用しないでしょう。実績を定量的に語り、第三者から見ても分かるような根拠を持って「私にはこのスキルがある」と語れない人は、「スキルが身に付いていない」と同等だと思った方がいい。その上で、「その会社で実現したいビジョン」を説明する必要があります。
いわゆるメディアに取り上げられているような成功者の方は、意外とジョブホッパーが多いもの。「自分も同じようにキャリアを積もう」と考える人もいるかもしれません。
ただし、そのような人たちは「前職で結果を残して」「明確なビジョンを持って」転職している方だということを忘れないでいただければと思います。
取材・文/大室倫子(編集部)
RELATED POSTSあわせて読みたい
「3日連続で同じ店に行け」「ご機嫌伺いしたら負けだと思え」酒席のカリスマに学ぶコミュニケーション術
“鉄の女”と呼ばれた私が、33歳で管理職をやめて「現場営業」に戻ることにした理由【営業のNEXTキャリア図鑑:ジブラルタ生命 名方朋世さん】
“仕事の引き合いが絶えない人”は何が違うのか/キープレーヤーズ高野秀敏氏
“リーマン・ショック世代”の先輩はなぜ怖い? 2008&2009年入社の人を集めて理由を探ってみた
“最恐エゴイスト”だった社会起業家が20代で下した一大決心「早く行きたいなら一人でもいい。でも遠くに行きたいなら皆で行け」【安部敏樹】