キャリア Vol.885

「“無名の同年代”を軽視しない方がいい」25歳で独立したベンチャーキャピタリストが気付いた、切磋琢磨の効果

叶えたい夢や、チャレンジしてみたい仕事はあるけど、なかなか自信は持てないし、タイミングだって分からない。そこで、20代のトップランナーたちが、どうやって“始めの一歩”を踏み出したのかを聞いてみた。今の活躍に到るまで、どんな不安や葛藤があったのか、そして踏み出した先には何があるのか−−。同年代の言葉に耳を傾けてみよう

企業に投資をしながら、同時に経営の成長支援も行うベンチャーキャピタリストという仕事。20代にとっては、あまりなじみがない職業かもしれない。

企業経営を支援するための知見や経験、資金を出してくれる投資家とのネットワークが求められる仕事であり、実際、若くしてベンチャーキャピタリストとして独立するのはハードルが高いだろう。

そんな中、25歳という若さでベンチャーキャピタル(VC、投資会社)を創業したのが、THE SEEDの代表、廣澤太紀さんだ。創業から2年が経った今、THE SEEDは5億円を運用するファンドとなっている。

ベンチャーキャピタリストとしてはスキルも経験も未熟、大きな不安を抱えたまま創業したという廣澤さん。そんな彼が25歳でVC創業に踏み出したことで見えるようになったものとは?

THESEEDCAPITAL1号投資事業有限責任組合 General Partner 廣澤太紀さん
THESEEDCAPITAL1号投資事業有限責任組合 General Partner 廣澤太紀さん
15年にEast Venturesにインターンとして参画後、16年新卒入社。17年からは投資先複数社にて新規事業・アプリマーケティング投資先資金調達を支援。18年5月までEast Ventures投資先にて、社外取締役としてファイナンス業務を担当。18年6月、THE SEEDを設立し、9月より投資開始。20代のエンジニアや研究者からの起業など10数社に投資している

いつまでも「有名企業の若手」でいいのか?

――大学時代からベンチャーキャピタリストを目指していたという廣澤さんですが、なぜVC(ベンチャーキャピタル)に興味を持ったのでしょうか?

祖父母が飲食店をやっていたので、幼少期から“経営”は身近な存在でした。でも僕が中学生になったばかりの頃に、祖父母の店の経営が傾いたんです。

年齢を重ねて経験豊富なはずの祖父母が事業に失敗している一方で、メディアを見ると、20代のIT社長たちが続々と大成功を収めている。この差は一体何なのだろうかと疑問が湧き、より一層経営に興味を持つようになりました。

そして大学生になったときに、国内大手のVCであるEast Venturesの代表・松山太河さんのインタビュー記事を読んで、起業家を出資という形で支える投資家の存在やVCの世界を知りました。

起業家を間近で支え、経営成功までの道を伴走するというVCの仕事に強烈に惹かれて、その頃から「ベンチャーキャピタリストになりたい」と考えるようになったんです。

特に、East Venturesのように駆け出しのスタートアップに投資する「シード投資」というスタイルがいいなと思いました。まだ芽が出ていない若い起業家と一緒に企業を大きくしていくなんて、考えただけでもワクワクしていましたね。

――その後、実際に松山さんが代表を務めるEast Venturesに入社されていますよね。

はい。東京で開催されたとあるイベントで、運良く松山さんにお会いできたんです。その時僕は、関西にある大学の3年生で。当時関西にはシード投資を行うVCがほとんどなかったので、身一つで東京に出てきたところでした。

「松山さんの下で働きたい、仕事が決まるまで関西に帰るつもりはない」と熱い思いをぶつけたところ、「じゃあ、とりあえず働いてみる?」とインターンのチャンスをもらえて。1年後、大学を卒業すると同時に新卒でEast Venturesに入社することができました。

East Venturesは、これまでGunosy、メルカリ、BASEなど、今国内で大きな存在感を持つベンチャー企業の創業時を支えている国内有数のシードVCです。1年目から投資先に出向して、将来有望な起業家の方々と経験を積ませてもらっていました。

――廣澤さんは前職を3年半で退社し、25歳でご自身のVC「THE SEED」を創業されました。なぜ、このタイミングでの起業だったのでしょう?

VCとスタートアップでは、日々の意思決定の数が決定的に違うと思います。そういった構造上の差がある中で、「このままでは同年代の起業家たちとの実力差が開く一方だ」と感じていました。

僕の周囲には、起業を目標に大阪から一緒に上京してきた友人、同年代で多くの人を雇って事業を急成長させている起業家たちがいます。彼らと一緒に仕事をしていくなら、僕自身も「East Venturesの若手」という看板を捨てて、自分で意思決定をする機会を増やさなければと思い、独立を考えるようになりました。

East Venturesの社員でいれば、僕自身に実績がなくても会社の看板がありますから、どこに行っても悪い扱いを受けることはありません。でもこのまま同じ仕事を続けていたら、10年後に起業家たちが、一緒に仕事をするパートナーとして選んでくれるような人間になれるのだろうかという焦燥感がありました。

顧客ゼロから始めても「応援してくれる人」がいることを実感

THESEEDCAPITAL1号投資事業有限責任組合 General Partner 廣澤太紀さん

――VCって、経験も人脈も豊富なベテランが活躍しているイメージがあります。25歳の若手がいきなりVCで起業するのには、苦労も多かったのでは?

そうですね。前職で過ごした3年半でめちゃくちゃ働いてはいたものの、25歳の時はまだまだ未熟で、ペーペーだったと思います。スキル面も足りなかったですし、目立った実績もほとんどない状態でした。

また、僕の仕事はスタートアップに投資をすることですが、投資をするためには先にファンドを設立する必要があります。そのために、出資してくれる投資家を募らなければなりません。でも、会社を辞めたときはまだ、お金を出してくれる投資家もいませんでした。

「独立したらこうしよう」というファンドの投資方針は用意していたものの、East Venturesの看板がなくなった僕に、出資してくれる人なんて本当にいるのだろうか、という不安もありました。

――顧客ゼロからの独立って、出だしからハードですね……。

そんな状態だったので、創業後わりとすぐに、借りてきたお金もなくなって苦しくなりました。でもそのとき、hey代表の佐藤裕介さんCAMPFIRE代表の家入一真さんなど、尊敬する先輩方に助けられました。

当時は投資する企業探しの意味も込めて、大阪で「スタートアップ関西」というイベントを実施していたんですけど、佐藤さんや家入さんがゲストとして大阪まで来て下さり、「イベントの協賛」という形でお金を支援してくれて。そのおかげで何とか生活ができました。

ファンドには、メルペイの元取締役CPOであり、現在は完全キャッシュレスのカフェ『KITASANDO COFFEE』などを展開するカンカク代表・松本龍祐さんに相談にいくと、その場ですぐに「出資するよ」と言っていただけました。

独立して最初の提案が松本さんだったこともあり、そのときはプレゼンもまともにできませんでした。それでも、満面の笑みで「金額が決まったら投資するから教えてよ」と言ってくださって。松本さんが、1番最初に、僕へ投資を決めてくださった方なんです。

――そうそうたる面子!

はい。「君なら絶対大丈夫」とか「何かあったら言ってね」と声を掛け、支援してくれた方々がいて、そのおかげで、不安も吹き飛びました。

VCの世界に来てからお世話になっていた先輩方から、沢山のご支援をいいただき、なんとかファンドを設立することが出来ました。

――思い切って独立したことで、会社ではなくご自身を応援してくれる人の存在を実感できたのですね。

はい。他にもVCの先輩方や多くの方に支えていただいて今があります。

独立したことで確実に見える世界が変わり、仕事への姿勢はより明確なものになったと思います。一層この仕事が好きになりましたし、自分に足りないところもクリアに見えてきたというか。

もちろん、毎日しんどいことも山ほどあり、独立ってこんなにしんどいのかって思うこともあります。投資家の方に出資相談をしても、断られる方がほとんどなのに、いちいちヘコみますし。一方で良い返答をもらえたら気分が一時的に急上昇したり(笑)

簡単に一喜一憂する日々ですが、それでも今投資させてもらったスタートアップや投資してくださった方々に恵まれ、独立を後悔したことは一瞬たりともありません

「まだ何者でもない同年代」を軽視してはいけない

THESEEDCAPITAL1号投資事業有限責任組合 General Partner 廣澤太紀さん

――2018年に創業してから、もうすぐ2年が経とうとしているところですが、仕事への向き合い方はどのように変わりましたか?

前職でも起業家の皆さんとは真剣勝負で向き合ってきたつもりですが、独立してからは「投資先の起業家たちと一緒に成功するぞ」という気持ちが、より強くなっていると感じます。

それは、投資先の方々が、無名でまだ実績のない自分を選び、投資を受けてくれたから。僕を選んでくれたことに対して報いたいなと、より強く思うようになりました。だからこそ、投資先の進捗や成功が自分ごととして嬉しいんです。

――自分を選んでくれた起業家や投資家の方たちに、廣澤さんはどんな価値を提供していきたいと思っていますか?

THE SEEDはまだまだ小さなVCだからこそ、僕が起業家の皆さんに提供できることは、「僕自身が何かしらの挑戦をし続ける人であること」だと思っています。起業家の方を支援する立場ではありますが、お互いを高め合う、ライバルのような存在になれることが、今の自分の存在価値でもありますから。

だから常に「少しハードルが高いこと」にチャレンジするようにしています。例えばこの数カ月では、「オンラインのミーティングだけで投資ができるのか?」を考え、まずオンライン会議の数を増やしました。その結果、どういった方にはオンライン面談だけでも投資判断ができるのか、自分なりのルールをつくることができ、継続して投資オファーを出しています。

小さくとも何かしらのチャレンジし続けることで、「負けてられないな」と思ってもらったり、「あいつ頑張ってるな」と感じてもらえたりするんじゃないかなと思っています。

――ご自身のキャリアを振り返って、改めて「チャレンジ」する上で大切だと思うことを教えてください。

特に20代は、「頑張っている同年代」を大事にすることだと思います。僕がこれまでチャレンジを重ねてこれたのは、たくさんの方の応援があったからですが、その中でも「若くしてチャレンジしている仲間たちの存在」がとても大きかったので。

僕が独立を決めたのも同年代の起業家の影響が大きいし、同じ時期に上京する友人がいなかったらあのタイミングで東京に出てこれなかったかもしれない。僕が独立するときには、1つ年上の起業家の方が投資家を紹介してくれ、その方からファンド出資をしてもらったりもしました。

その彼らは今でこそ有名になっていますが、出会った頃は無名の人たちでした。だから現時点で結果を出していないからといって、同年代を過小評価してはいけないなって強く思うんです。

20代だとまだ実績が出てないこともあり、年の近い人をつい過小評価してしまうこともあると思います。でも、今はまだ結果が出ていない同年代でも、これから10年、20年と成長し、活躍していくようになる。だからこそ、「切磋琢磨できる良い関係を築く」ことが自分を後押ししてくれるんだと改めて思います。

――同年代と切磋琢磨できる関係を大事にすることで、自分を鼓舞しているんですね。若い起業家を支えるVCの廣澤さんらしい答えだと思いました。

僕もまだまだ未熟ですから、彼らと一緒に成長していけたらいいなって思っています。今はVCとして、ようやくスタートラインに立てたかどうか、というくらいですから。これからはTHE SEEDの土台をより固め、もっと大きな将来に向けて新しい道を模索し続けていきたいです。

僕が20代でいるうちに、今一緒に成長できる仲間との機会を大切にして、共にトライアンドエラーがどれだけできるかが勝負だと思っています。

取材・文/小林香織 編集/大室倫子

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