キャリア Vol.953

2代目バチェラー・小柳津林太郎が“ヘルシービビンバ”で勝負するワケ「20代は『本気』を見つけるための準備期間だった」

“イイ20代の過ごし方”って何だ?
30代を迎えるとき、かっこよく、自分らしく働いていられるかどうかは、20代の過ごし方次第。だから聞いてみたい。つい憧れてしまう、イキイキと働く先輩たちに。「イイ20代の過ごし方って、何ですか?」

話題の婚活サバイバル番組『バチェラー・ジャパン』シリーズ。多くの人が熱狂し、著名人にもファンが多い同番組で、2代目バチェラーを務めたのが小柳津林太郎さんだ。

小柳津さんは、大学卒業後、サイバーエージェントに入社し、入社3年目で子会社CyberXの代表に就任。2012年にはアメリカ子会社の立ち上げをリードするなど、華やかな経歴を持つ。

そんな小柳津さんに「イイ20代の過ごし方」をテーマにインタビュー。「20代の頃は、理想の30代なんて描いてなかったな」と笑って話す小柳津さんは、39歳になった今、自身の20代を振り返ってどんなことを思うのだろうか。

株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん

株式会社GHOST 代表取締役CEO
小柳津林太郎さん(@mcrin72

1981年生まれ、ニューヨーク育ち。2006年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社サイバーエージェント入社、広告代理部門を経て、モバイル系子会社を設立。代表取締役に就任。2014年、ゲーム事業統括本部部長就任。18年Amazon Primeで配信中の「バチェラー・ジャパンシーズン2」参画後、AmebaTVに異動しアナウンス室を立ち上げる。19年に退社後、株式会社GHOSTを創業し、代表取締役に就任。20年にトレンダーズ(株)の社外取締役就任

「先を決め過ぎない」のは正解だった

20代の頃は、とにかく目の前のことで精一杯でしたね。

26歳からサイバーエージェントの子会社CyberXの代表をやっていたので、将来のことを考えるよりも、今抱えている課題や、達成しなきゃいけない目標、マネージメントしなきゃいけないメンバーのことで頭がいっぱいでした。

その後、29歳で海外への事業展開としてニューヨーク行きが決まった時は、もう野望の塊(笑)。「ゲームを当てて、マンハッタンを制圧するぞ」って本気で思ってましたもん。

でも、人生は何があるか分かりませんね。もともと大学生の頃までは役者を目指していて、サイバーに入社した時も「3年働いてみて、違うなと思ったら、もう一度役者を目指そう」って思っていたのに。

いざ入社したら「周りからの期待に応えたい!」と役員になる気満々で、どんどん経営にのめり込んでいったんですから。もう「30代どうしよう」なんて考える間もなく働いていましたよ。

株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん

でもね、「先を決め過ぎない」で良かったと思ってるんです。だって、未来のことなんて誰も分からないじゃないですか。

よくある話で、就職活動をしていると「10年後どうなりたいですか?」って聞かれることがあると思うんですけど、面接官だって本当はそんなこと分かっていないはず。

だから、やりたいことがないことに引け目を感じる必要なんてなくて、いろんなことに興味を持っている状況を楽しめばいいんですよ。新しい魅力的な人に出会った時、知らない人に出会った時、世が変化するタイミングなど、ふとした瞬間に生まれる興味を追求し続けていったらいいんです。

そう思えたのは、変化の激しいインターネット業界にいたからでしょうね。ガラケーからスマートフォンが主流になるみたいな大きな変化もしょっちゅうあったので、直近の未来は読めても遠くの未来は予測不能でした。

だから、未来のことを決め過ぎるのは意味がないこと。それよりも、直近で来る変化に敏感になり、変化が来たらすぐに対応することが重要だなと思えたんです。

株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん

ターゲットは常に自分。オンリーワンな事業を展開する理由

そんな風に目の前のことに必死だった僕の価値観を大きく変えたのは、間違いなくバチェラーへの出演でしたね。

世間から認識されるようになったり、キャスティングする側からされる側になったりと、普通じゃできない経験をしたことで、組織のナンバーワンを目指すよりも誰にも体現できないオンリーワンを目指す方が、自分らしく過ごせることに気付いたんです。

正直、遅かれ早かれ「いつかは独立したい」と思っていたのですが、バチェラーに出たことでその時期が早まりました。

ただ、ナンバーワンよりもオンリーワンが心地良いって気付けたのは、組織人として10年以上、目の前のことを頑張った経験があるからだとは思うんですよ。

本気で役員を目指したり、目標を達成するために一生懸命だったからこそ、独立するという決心ができた。そして、世に対して独特のバリューを出せるオンリーワンな存在を目指したくなったんです。

そんな思いで立ち上げたのが、株式会社GHOSTです。今は『イテウォンボウルズ』というヘルシービビンバのお店をメインの事業にしています。飲食事業を手掛けることになったきっかけは、AbemaTVで働いていた時に、今一緒に働いている会社のパートナーに出会ったことです。

株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん

最初は、彼のビジョンに共感して出資しようと思ったのですが、話をしているうちに「一緒にやりたい」と言ってくれて、どうせやるからにはITの文脈を持たせたり、時代に合ったバリューを目指したいよねという話になっていった。

それで最初はアルゼンチンステーキハウスをやる予定で準備を進めていたのですが、コロナショックが起きて、「このタイミングで接客軸のお店を始めるのは違うのでは」とストップしました。

そこで「デリバリーに特化したお店を」と話し合いを重ねたのですが、どれもしっくりこない。自分がお客さんだったら利用するかと考えたら、自信を持ってうなずける案がなかったんです。

その時にカリフォルニアのヘルシーボウルの着想と、当時ハマっていた韓国ドラマからの影響を受けて、「ヘルシービビンバ」という商品が生まれました。

正直、健康のためとはいえ、サラダだけを食べるのは苦行だけど、一緒にご飯も食べられるならいいなって。

僕ね、何かを生み出すときのターゲットは、基本的に僕自身なんです。正直、ヘルシービビンバよりも大きなマーケットって、いくらでもあるとは思うんですけどね。でも、本気で取り組むには自分がターゲットであった方がいい。

これからもその思いを変えずに、ありそうでなかったものを世に出していきたいです。

株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん

20代のうちに、リスクをとってチャレンジする練習を

30代で自分が本気でやりたいと思える仕事をするためには、20代のうちに「リスクをとってチャレンジする」経験を増やすことが大事なんじゃないかな。

僕の20代は、まさに「仕事人間」。組織の中でもっと上へ、もっと上へ……という感じで、今よりも視野は狭かったかもしれないけれど、目の前の仕事にとにかく夢中になって取り組んでいました。

そのおかげで、「リスクをとってチャレンジする」という経験はたくさん積むことができた。仕事で失敗したからって死ぬことはないし、自分が「やろう」と思えばやれるんだ、と身をもって学ぶことができました。

だからこそ、30代になってからよりいっそう大きな挑戦ができるようになった感覚があります。

「リスクを取れ」なんて言うと仰々しく聞こえるかもしれないけれど、別に大それたことじゃなくていいんです。好きな子に告白するとか、違和感を持ったら転職するとか、日常で少し起こり得るリスクテイクを重ねることも、大きなチャレンジをするための練習になると思うんですよね。

もう一つ、自分が20代の頃にやっていて良かったと思うのは、「意識してお金を使う」ことです。

例えば、デートするにしても、相手が喜ぶ場所や、自分が行ったことのないところに行く、体験したことのないものを体験するとかね。何となくお金を浪費するのではなく、経験を増やすようなお金の使い方ができるといい。要は、人生の幅を広げるための投資ですね。いろいろな体験に投資していくうちに、本気でやりたいと思える仕事も見つかりやすくなるはずです。

また、もしもお金の使い道に迷うなら、自分とは違う属性や、違う価値観を持った人たちに出会うためにお金を使ってみるのはどうでしょうか。今だったら、オンラインサロンに試しに入ってみたり、クラブ活動をしてみたりすることもできますね。

でも、お金を使うときには、「投資と博打」の違いはしっかり持っておきましょう。これは昔、サイバーエージェント社長の藤田(晋)さんが言ってたんですけど、投資と博打には明確な違いがあるんです。

投資とは、自分の努力で期待値を上げられること。短期的には利益が生まれなくても、長期的なリターンが見込めるのであれば、それは投資です。一方、博打には何の期待値もありません。

株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん

ただ、リスクをとって何かに挑戦したり、自分に投資したり、そういうことすら面倒だと感じる人は、とりあえず運動習慣を付けておくといいですよ。

30代になってから、身をもって感じるんですけど、結局のところ体が資本なので「20代のうちにもっと運動しておけばよかったな~」って、痛感しています(笑)。健康でないと、やりたいことがいくらあっても何もできませんからね。

取材・文/於ありさ 撮影/赤松洋太 編集/川松敬規(編集部)


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